アルカイ

自由なる意思を持ちし者、アルカイ。
アルカェウスに使えし者、アルカイ。
原罪を作りし者、アルカイ。

彼らは地上を整えた。
彼らの世界を整えた。
整理のために、無を覗き見た。

自由であるが故、飽きたのだ。
自由であるが故、逆らったのだ。
自由であるが故の発想だったのだ。

闇は鎖へと変化を遂げる。
罪人を繋ぐ鎖へと変化を遂げる。
全ての者は、力を失い、
全ての者は、地に堕ちた。

口をきく者達の、祖先の話。
裏切りと言う名の、忠義の話。


 アルカェウスが、アーに仕えるのと同様に、アルカイはアルカェウスに仕えている者達である。 アーがアルカイを創造した意図の大半は不明であるが、一つだけはっきりしている事がある。

 アーが光の主であるのと同様に、アーはアルカイに地上の主にさせようとしたのである。 なぜ、地上を作り、その管理を自分ではなく、アルカイに行わせた理由は不明である。 不明ではあるが、一つの仮説はある。

 始めの詩を覚えているだろうか。その中で、「アーは何時からか其処にいた」と書いた。 そう、アーが「何故」無の中に存在できたのかも不明なのである。だが、もしアーもまた誰かに創造されたとしたら…?  アーがそれを知ろうとして、アルカイに地上と言う新たな世界の管理を任せたとしたら?  アーは、アルカイ達の行動から、自分自身を作り上げた存在を知ろうとしているのだとしたら?

 全ては、アーの願いのまま進んでいるのである。アルカイに自由意志を与え、アルカイが闇に手を出す事に対して、 抵抗感を持たないようにしたのである。結果として、アルカイは闇の鎖に縛られ、地上に生きる全ての「口をきく者の祖先」となった。 さて、彼らアルカイの行動は果たして罪であろうか? 半分は仕組まれた事である。半分は、彼らが忠実に裏切った事の結果である。

 闇は無の影響によって鎖へと変化した。地上へと罪人を縛る為その形をとったのではない。 地上に生きる者の力を奪ったのは、他ならぬアーである。 アルカイを地上に堕としたのは、他ならぬアーである。 罪とは。罰とは。全て口実である。鎖は初めから用意されていた。いや、運命は初めから用意されていた。

 アーが力を奪った理由。それは、アーにより与えた力ではなく、地上に生きる者が自力で作り上げた技術によって、 新たなる創造を行う瞬間を見たかったからである。

 自由なる意思とは、すなわちアーに近い事を表す。その力が、ではない。その考え方が、である。 アー程自由な存在がいるであろうか。アー程無責任な存在がいるであろうか。 アー程力のある存在がいるであろうか。 アーにより創造された物は、何かしらアーに似た側面を持つ。 数ある側面のうち、自由意志を与えられた者がアルカイである。

 アルカイは地上を整える命令を与えられている。そして、その命令を忠実にこなしている。 現在も、である。世界は、アルカイのみによって、その末裔によって運営、管理されている。 大いなるアーの命令を、意識レベルで覚えている者は少ない。だが、アルカイしかいない世界、 アルカイによってのみ管理運営される世界。それゆえ、自力で強くなるしかない現状。 自力で世界を整えなければならない現状。無ですらも、光ですらも取り込む事ができたのは、 自由な意思を持つが故である。アーの思考を持つが故である。全てはアーの望みのままに。 だが、アーの望みはいまだ達成されてはいない…