さうしてみると、いままで峠や林のなかで、荷物をおろしてなにかひどく考へ込んでゐたやうな支那人は、みんなこんなことを誰かに云はれたのだなと考へました。山男はもうすつかりかあいさうになつて、いまのはうそだよと云は
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うとしてゐましたら、外の支那人があはれなしはがれた声で言ひました。
「それ、あまり同情ない。わたし商売たたない。わたしおまんまたべない。わたし往生する、それ、あまり同情ない。」山男はもう支那人が、あんまり気の毒になつてしまつて、おれのからだなどは、支那人が六十銭まうけて宿屋に行つて、鰯の頭や菜つ葉汁をたべるかはりにくれてやらうとおもひながら答へました。
「支那人さん、もういゝよ。そんなに泣かなくてもいゝよ。おれは町にはひつたら、あまり声を出さないやうにしよう。安心しな。」すると外の支那人は、やつと胸をなでおろしたらしく、ほおといふ息の声も、ぽんぽんと足を叩いてゐる音も聞えました。それから支那人は、荷物をしよつたらしく、薬の紙箱は、互にがたがたぶつつかりました。
「おい、誰だい。さつきおれにものを云ひかけたのは。」
山男が斯(か)う云ひましたら、すぐとなりから返事がきました。
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