ペムペルとネリとは、黒人はほんたうに恐かったけれど又面白かった。四角なものも恐かったけれど、めづらしかった。そこでみんなが過ぎてから、二人は顔を見合せた。そして
『ついて行かうか。』
|
『えゝ、行きませう。』と、まるでかすれた声で云ったのだ。そして二人はよほど遠くからついて行った。 黒人たちは、時々何かわからないことを叫んだり、空を見ながら跳ねたりした。四本の脚はゆっくりゆっくり、上がったり下がったりしてゐたし、時々ふう、ふうといふ呼吸の音も聞えた。
二人はいよいよ堅く手を握ってついて行った。
そのうちお日さまは、変に赤くどんよりなって、西の方の山に入ってしまひ、残りの空は黄いろに光り、草はだんだん青から黒く見えて来た。
さっきからの音がいよいよ近くなり、すぐ向ふの丘のかげでは、さっきのらしい馬のひんひん啼くのも鼻をぶるるっと鳴らすのも聞こえたんだ。
四角な家の生き物が、脚を百ぺん上げたり下げたりしたら、ペムペルとネリとはびっくりして眼を擦(こす)った。向ふは大きな町なんだ。灯が一杯についてゐる。それからすぐ眼の前は平らな草地になってゐて、大きな天幕(テント)がかけてある。天幕は丸太で組んである。まだ少しあかるいのに、青いアセチレンや、油煙を長く引くカンテラがたくさんともって、その二階には奇麗な絵看板がたくさんかけてあったのだ。その看板のうしろから、さっきからのいゝ音が起ってゐたのだ。
|