「ね、蜂雀、そのペムペルとネリちゃんとがそれから一体どうなったの、どうしたって云ふの、ね、蜂雀、話してお呉れ。」
けれども蜂雀はやっぱりじっとその細いくちばしを尖らしたまゝ向ふの四十雀(しじふから)の方を見たっきり二度と私に答へようともしませんでした。
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「ね、蜂雀、談(はな)してお呉れ。だめだい半分ぐらゐ云っておいていけないったら蜂雀
ね。談してお呉れ。そら、さっきの続きをさ。どうして話して呉れないの。」
ガラスは私の息ですっかり曇りました。
四羽の美しい蜂雀さへまるでぼんやり見えたのです。私はたうとう泣きだしました。
なぜって第一あの美しい蜂雀がたった今まできれいな銀の糸のやうな声で私と話をしてゐたのに俄かに硬く死んだやうになってその眼もすっかり黒い硝子玉(がらすだま)か何かになってしまひいつまでたっても四十雀ばかり見てゐるのです。おまけに一体それさへほんたうに見てゐるのかたゞ眼がそっちへ向いてるやうに見えるのか少しもわからないのでせう。それにまたあんなかあいらしい日に焼けたペムペルとネリの兄妹が何か大へんかあいさうな目になったといふのですものどうして泣かないでゐられませう。もう私はその為ならば一週間でも泣けたのです。
すると俄かに私の右の肩が重くなりました。そして何だか暖いのです。びっくりして振りかへって見ましたらあの番人のおぢいさんが心配さうに白い眉を寄せて私の肩に手を置いて立ってゐるのです。その番人のおぢいさんが云ひました。
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