「どうしてそんなに泣いて居るの。おなかでも痛いのかい。朝早くから鳥のガラスの前に来てそんなにひどく泣くもんでない。」
けれども私はどうしてもまだ泣きやむことができませんでした。おぢいさんは又云ひました。
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「そんなに高く泣いちゃいけない。
まだ入口を開けるに一時間半も間があるのにおまへだけそっと入れてやったのだ。
それにそんなに高く泣いて表の方へ聞えたらみんな私に故障を云って来るんでないか。そんなに泣いていけないよ。どうしてそんなに泣いてんだ。」
私はやっと云ひました。
「だって蜂雀がもう私に話さないんだもの。」
するとぢいさんは高く笑ひました。
「ああ、蜂雀が又おまへに何か話したね。そして俄かに黙り込んだね。そいつはいけない。この蜂雀はよくその術をやって人をからかふんだ。よろしい。私が叱ってやらう。」
番人のおぢいさんはガラスの前に進みました。
「おい。蜂雀。今日で何度目だと思ふ。手帳へつけるよ。つけるよ。あんまりいけなけあ仕方ないから館長様へ申し上げてアイスランドへ送っちまふよ。
えゝおい。さあ坊ちゃん。きっとこいつは談(はな)します。早く涙をおふきなさい。まるで顔中ぐぢゃぐぢゃだ。そらえゝあゝすっかりさっぱりした。
お話がすんだら早く学校へ入らっしゃい。
あんまり長くなって厭きっちまふとこいつは又いろいろいやなことを云ひますから。ではようがすか。」
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