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宮沢賢治幻燈館 「銀河鉄道の夜」 57/81 |
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ジョバンニが見てゐる間その人はしきりに赤い旗をふってゐましたが俄に赤旗をおろしてうしろにかくすやうにし青い旗を高く高くあげてまるでオーケストラの指揮者のやうに烈しく振りました。すると空中にざあっと雨のやうな音がして何かまっくらなものがいくかたまりもいくかたまりも鉄砲丸(てっぱうだま)のやうに川の向ふの方へ飛んで行くのでした。ジョバンニは思はず窓からからだを半分出してそっちを見あげました。美しい美しい桔梗(ききゃう)いろのがらんとした空の下を実に何万といふ小さな鳥どもが幾組も幾組もめいめいせはしくせはしく鳴いて通って行くのでした。 |