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宮沢賢治幻燈館 「銀河鉄道の夜」 59/81 |
![]() (どうして僕はこんなにかなしいのだらう。僕はもっとこゝろもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向ふにまるでけむりのやうな小さな青い火が見える。あれはほんたうにしづかでつめたい。僕はあれをよく見てこゝろもちをしづめるんだ。) |
ジョバンニは熱(ほて)って痛いあたまを両手で押へるやうにしてそっちの方を見ました。(あゝほんたうにどこまでもどこまでも僕といっしょに行くひとはないだらうか。カムパネルラだってあんな女の子とおもしろさうに談(はな)してゐるし僕はほんたうにつらいなあ。)ジョバンニの眼はまた泪(なみだ)でいっぱいになり天の川もまるで遠くへ行ったやうにぼんやり白く見えるだけでした。 |