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「ごらん、そら、インドラの網を。」
私は空を見ました。いまはすっかり青ぞらに変
ったその天頂から四方の青白い天末までいちめん
はられたインドラのスペクトル製の網、その繊維
く も ち みつ
は蜘蛛のより細く、その組織は菌糸より緻密に、
ふる
透明清澄で黄金で又青く幾億互に交錯し光って顫
へて燃えました。
「ごらん、そら、風の太鼓。」も一人がぶっつか
に か
ってあわてて遁げながら斯う云ひました。ほんた
うに空のところどころマイナスの太陽ともいふや
あゐ お
うに暗く藍や黄金や緑や灰いろに光り空から陥ち
たた
こんだやうになり誰も敲かないのにちからいっぱ
い鳴ってゐる、百千のその天の太鼓は鳴ってゐな
がらそれで少しも鳴ってゐなかったのです。私は
くら
それをあんまり永く見て眼も眩くなりよろよろし
ました。
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