|
「おれは森へ行つて遊んでくるぞ」と云ひながら、よろよろ家を出て行きましたが、まつくらになつても帰つて来ませんでした。二人がお母さんにお父さんはどうしたらうときいても、お母さんはだまつて二人の顔を見てゐるばかりでした。
次の日の晩方になつて、森がもう黒く見えるころ、お母さんは俄かに立つて、炉に榾(ほだ)をたくさんくべて家ぢゆうすつかり明るくしました。それから、わたしはお父さんをさがしに行くから、お前たちはうちに居てあの戸棚にある粉を二人ですこしづつたべなさいと云つて、やつぱりよろよろ家を出て行きました。二人が泣いてあとから追つて行きますと、お母さんはふり向いて、
「何たらいふことをきかないこどもらだ。」と叱(しか)るやうに云ひました。そしてまるで足早に、つまづきながら森へ入つてしまひました。
二人は何べんも行つたり来たりして、そこらを泣いて廻りました。たうとうこらへ切れなくなつて、まつくらな森の中へ入つて、いつかのホツプの門のあたりや、湧水(わきみづ)のあるあたりをあちこちうろうろ歩きながら、お母さんを一晩呼びました。
|