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みんなは天幕の中にはひつて心配さうにしてゐましたが、ペンネン技師は、時計を見ながら、
「ブドリ君、うまく行つた。危険はもう全くない。市の方へは灰をすこし降らせるだけだらう。」と云ひました。こいしはだんだん灰にかはりました。それもまもなく薄くなつてみんなはまた天幕の外へ飛び出しました。野原はまるで一めん鼠いろになつて、灰は一寸(ちよつと)ばかり積り、百合の花はみんな折れて灰に埋まり、空は変に緑いろでした。そしてサンムトリの裾には小さな瘤(こぶ)ができて、そこから灰いろの煙が、まだどんどん登つて居りました。
その夕方みんなは、灰やこいしを踏んで、もう一度山へのぼつて、新らしい観測の器械を据ゑ着けて帰りました。
七、雲の海
それから四年の間に、クーボー大博士の計画通り、潮汐(てうせき)発電所は、イーハトーブの海岸に沿つて、二百も配置されました。イーハトーブをめぐる火山には、観測小屋といつしよに、白く塗られた鉄の櫓(やぐら)が順々に建ちました。
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