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「飼へるのさ。うるさいこどもだな。おい。縁起でもないぞ。てぐすも飼へないところにどうして工場なんか建てるんだ。飼へるともさ。現におれはじめ沢山のものが、それでくらしを立ててゐるんだ。」
ブドリはかすれた声で、やつと、「さうですか。」と云ひました。
「それにこの森は、すつかりおれが買つてあるんだから、こゝで手伝ふならいゝが、さうでもなければどこかへ行つて貰ひたいな。もつともお前はどこへ行つたつて食ふものもなからうぜ。」
ブドリは泣き出しさうになりましたが、やつとこらへて云ひました。
「そんなら手伝ふよ。けれどもどうして網をかけるの?」
「それは勿論(もちろん)教へてやる。こいつをね。」男は手にもつた針金の籠(かご)のやうなものを両手で引き伸ばしました。「いゝか。かういふ工合(ぐあい)にやるとはしごになるんだ。」
男は大股に右手の栗の木に歩いて行つて、下の枝に引つ掛けました。
「さあ、今度はおまへが、この網をもつて上へのぼつて行くんだ。さあ、のぼつてごらん。」
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