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男は変なまりのやうなものをブドリに渡しました。ブドリは仕方なくそれをもつて はしご にとりついて登つて行きましたが、 はしご の段々がまるで細くて手や足に喰ひこんでちぎれてしまひさうでした。
「もつと登るんだ。もつと。もつとさ。そしたらさつきの まり を投げてごらん。栗の木を越すやうにさ。そいつを空へ投げるんだよ。何だい。ふるへてるのかい。意気地なしだなあ。投げるんだよ。投げるんだよ。そら、投げるんだよ。」
ブドリは仕方なく力一杯にそれを青空に投げたと思ひましたら俄(にはか)にお日さまがまつ黒に見えて逆(さかさ)まに下へ落ちました。そしていつか、その男に受けとめられてゐたのでした。男はブドリを地面におろしながらぷりぷり憤(おこ)り出しました。
「お前もいくぢのないやつだ。何といふふにやふにやだ。俺(おれ)が受け止めてやらなかつたらお前は今ごろは頭がはじけてゐたらう。おれはお前の命の恩人だぞ。これからは、失礼なことを云つてはならん。ところで、さあ、こんどはあつちの木へ登れ。も少したつたら ごはんも たべさせてやるよ。」男はまたブドリへ新しいまりを渡しました。ブドリははしごをもつて次の樹へ行つてまりを投げました。
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