聊斎志異より 「西湖主」 4/14

塀ぎわを谷川が流れ、半分開いた朱塗りの門が見えますから、橋を渡って覗いてみると高楼に雲が掛かって、その広大なことは皇帝の庭園か貴族の別荘かと思われるくらいです。
ためらいながらはいって行くと、巨大な藤の蔓が道を横切り、花の香りはむせるばかりです。
幾つかの建物を廻る廊に沿って歩くうちにまた別の中庭に出ました。
枝垂れ柳の列が建物の軒をはらって揺れ、野鳥の声とともに花びらが飛び、ニレの種子が微風に乗って舞い落ちる様は天上の世界を想わせます。
小さなあずまやの近くに鞦韆(しゅうせん/ぶらんこ)がありましたが、人影はなく、長い綱が静まりかえって垂れています。
鞦韆は女性の遊びとなっていましたから、「これは奥御殿に近づいているな」と思った陳はそこで立ち止まりました。