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困った陳が屋敷中をうろうろしているうちに、向こうから来た侍女と出会ってしまいました。
「どうして、ここにはいれたのですか」
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陳は丁寧に一礼して
「道に迷った者です。どうかお助けください」
「この辺で赤い絹のハンカチを見掛けませんでしたか」
「それは確かに私が拾いました。でも、汚してしまいました。どうしたものでしょう」
陳が詩を書いたハンカチを渡すと、侍女は眼をむいて驚きました。
「これは公主様のお気に入りの品です。こんなに墨だらけにしてしまって…」
青ざめた陳が助命を願うと、
「この御殿を覗いただけでも重罪です。あなたは知識人のようですから、何とか助けてあげたいと思っていたのに、これでは…… みずから蒔いた種というものですね」
女は慌てて行ってしまいましたから、陳は「もはやこれまでの命か」と、空を飛ぶ羽のないのを悔やんで、悄然とたたずんでいました。
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