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しかし、陳は心配のあまり寝るどころではなく、一晩中庭園をうろつきまわっていました。
朝になると、また侍女が食事を運ばせて来ました。
そして、また日が西に傾く頃、待ちくたびれた陳の所に、侍女が駆け込んできました。
「大変! おせっかいな侍女が、お妃さまにハンカチの事を話したのです。お妃さまはハンカチを床に叩きつけて『きちがい!』と叫ばれたそうです。すぐに人が来ますよ」
その侍女は走り去り、別の侍女が捕卒を連れて現れました。
その侍女はしばらく陳の顔を見ていましたが、
「あなたは陳さまではありませんか」と驚き、捕卒たちを止めると、駆け戻っていきました。
すぐに戻ってくると、
「陳さまにお通り頂くようにと、お妃さまが申されました」
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陳は震えおののきながら、侍女のあとについて何十もの門を抜け、宮殿のひとつにはいったのでした。
「遠方から参りました寄る辺なきしもべに、何とぞ憐れみをおかけください」
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