聊斎志異より 「西湖主」10/14

と、思いもかけず、妃は立ち上がると、ひれ伏す陳の手を取って、みずから引き起こし、
「あなたがいなければ、私の命はなかったのです。知らなかったとはいえ、恩人をこんなふうにお迎えして、お詫びのしようもありません」

すぐに酒宴が設けられ、陳があっけにとられていると、妃が言うには
「ご恩に報いることができないのを残念に思っておりましたが、娘のハンカチに詩を頂いたのは天の定めたご縁と存じます。今宵さっそく、おそばにお仕えさせましょう」
夜になって、侍女が公主の支度の整ったことを告げ、陳を式場に案内すると、たちまち管弦の響きが起こり、麝香の香りは辺りに満ち、宮殿は灯火に輝きました。
公主は腰元たちにかしづかれて拝礼を交わし、ふたりはとばりの内にはいって、雲雨の交わりを結んだのでした。
 
「私は行きずりの者で、これまで拝謁をたまわったこともありません。お手ふきを汚して命は無いものと思っておりましたが、許されたばかりかご縁組みまでして頂くとは、まったく訳がわかりません」