聊斎志異より 「労山道士」 3/5


すると月の中から女が現れ、初めは手のひらに乗るばかりだったのが、床に降りると普通の人の大きさになっていたのです。
細い腰、白いうなじの美女で、袖をひるがえして天女の舞を踊り、
「神仙よ神仙、月の宮にかえれ……」と歌うのでした。
その声は簫(しょう)という笛のように響きました。
終わると、ひらっとテーブルの上に舞い上がり、弟子たちが驚いて見ているうちにもとの箸に戻っていたのです。
道士たちはどっと笑いました。
「今日は愉快に飲んだ。 嫦娥(こうが)も待つことだし、この続きは月の宮で、ということにしようではありませんか」
三人は連れだって壁の月の中へ入って行きました。 三人が月の中で談笑する様子は、鏡に映るようにくっきりと見えたのです。
しばらくすると月の光がしだいに暗くなったので、弟子のひとりが灯りを持ってくると、部屋には道士がひとりで座っているばかり、月はもとの紙にかえっていました。
王生員はすっかり感服してしまい、また修行に励もうと思ったのでした。
しかし、それもつかの間、また一月もたつうちに豆だらけの手を見るにつけ、いよいよ仙人を断念するに至ったのです。