聊斎志異より 「労山道士」 4/5

「やはり、がまんが出来なかったな」道士は笑って帰りの旅費をくれ、
「明日、起つがよい」と言うのでした。
「私はここに来てから二か月、毎日の労働に努めて参りました。せめて何かひとつ簡単な術でも教えていただければ、郷里に帰っても恥をかかずに済むのですが」
王生員は何とか食い下がりました。
「どんな術が希望なのだ」
「老師はお出かけのとき、壁でも塀でもそのまま抜けて行かれますが、あの術で結構です」

道士はあっさり応じて、呪文を教えてくれましたから、それを唱えると、
「はいってみなさい」といわれました。
うまくいかなくて壁にぶつかったら痛いだろうと決心が付かずにいると、
「ためらってはいかぬ。思い切って頭から飛び込むのぢゃ」
そこで王生員は少しさがって勢いを付け、やっ!とばかりに壁に飛び込みました。
ところがエアカーテンでも抜けるように何の抵抗もなく、壁を抜けて外に立っていたのでした。