聊斎志異より 「画壁」 2/6

だれかに着物のすそを引かれたような気がしてふり返って見ると、それはあの花を持った壁画の少女なのでした。
少女は朱にほほえみかけると、ふりむいて去ってゆきます。
引かれるようにそのあとについて行くと、少女は広壮な建物の回廊を何度か曲がって小さな部屋にはいろうとします。
朱はさすがに立ち止まって見ていますと、振り向いた少女は、手にした花をまねくようにゆらしてはいって行くのでした。
開いている扉からのぞきこむと、少女のほか誰もいないようです。
そこで、朱は部屋にはいりこんで、少女を抱いてみますと、かたちばかりの抵抗をしたきりで、こんな場合になるような具合になったのでした。

少女は朱をベッドに隠して、
「声を立てないようにね、クシャミなんかしたらいけませんよ」
と言うと、どこかに出ていってしまいました。