聊斎志異より 「画壁」 3/6

これは無理な注文というべきですが、極楽は環境がよいせいか、さいわいクシャミも出なくてすんだのでした。
少女は夜になると部屋に戻ってくるのです。


こんなふうに二日ほど過ごしたのでしたが、そのうち少女の同僚たちが秘密に感づいたらしく、大勢でおしかけて来て、朱は見つかってしまいました。
「こんなに大きな赤ちゃんがいるのに、いつまでもお下げ髪にしておくって、どういうこと?」
それで、みんなで少女の髪を高く結い上げました。
そのうちに、ひとりが
「ねえ、みなさん、いつまでもこうしていると、わたしたちじゃまにされるかもしれませんよ」
と言うと、みんなできゃっきゃと笑いながら出ていってしまいました。
朱があらためて少女を見ると、結い上げられた髪に鳳凰の飾りかんざしが揺れ、美しさは一段と匂い立つばかりです。
蘭麝(らんじゃ)の香りに興奮した朱が、さあこれから!……という時、突然そとが騒がしくなってきました。
じゃらじゃらと鎖を引きずる音、高い靴音がして、なにやら怒鳴っているようです。