聊斎志異より 「彭海秋」 3/6

客が手を上げて呼ぶと、それに答えて一そうの舟がゆらゆらと空から下りてくるのでした。
まわりを取り巻く雲を踏むようにして四人が舟に乗り込むと、船頭は羽をたばねたホウキのような櫂をふるい、舟はまた空高くに舞い上がりました。

舟は南に向かって矢のように空を駆け、やがて高度を下げて着水したようです。
管弦の音や歌う声がするので、窓を開けてみれば、周囲は街の家並みのように月見の舟が並んでいて、舟はすでに西湖の湖上にあるのでした。
客の彭(ほう)は酒と料理を取りだし、月見の宴が始まりました。
しばらくすると、別の舟が近づいて彭たちの舟と並び、中から碁を打ちながら話す声が聞こえてきます。
「ごくろうだったね。それでは、これを飲んでお別れとしよう。」
客は杯を女にわたし、酒をつぎました。
彭は別れが惜しくて、テーブルの下で女の靴を踏みつけました。
女は彭をにらみましたが、その目つきに情のこもっているのを見て、ぜひまた会う約束をしてくれるようにたのみました。