聊斎志異より 「彭海秋」 4/6

「お会いになりたかったら、娟娘(けんじょう)と言ってたずねてごらんなさい。このあたりで知らない者はいませんから」
客は彭(ほう)のハンカチを受け取ると、それを娟娘に渡して言いました。
「私が代わって、君たちが三年後に会う約束をしておこう」
それから女を手のひらにのせて、隣の舟の窓から中に入れるのでした。
小さい窓なのですが、女は窮屈そうな様子もなく、蛇のようにはいっていってしまいました。
隣の舟で「娟娘が目を覚ましたぞ」という声がしたところをみると、女は今まで酔って寝込んでいた様子です。
隣の舟は船着き場にこぎ寄せ、皆が岸に上がって見えなくなってしまいました。
彭も舟を岸に付けてもらい、そこらを見物しておりますと、客の彭が一頭の馬を引いてきました。
「あと二頭持ってきますので、ここで待っていてください」


ところが、客はそのまま戻ってこず、一緒に来た丘(きゅう)も、どこに行ったのか姿が見えません。
ぼんやり待っているうちに、とうとう夜が明けてしまいました。
明るくなってから見ると、馬の首に金のはいった革袋が結んであります。
船着き場に行ってみると、あの舟も見えず、二人の連れもおりません。
娟娘の名前を尋ねてみましたが、誰も知る者がいません。
しかたなく、袋の金を旅費に、馬で家に帰ることにしました。