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ある日、顧は門の前で娘に出会ったことがありましたが、娘はめずらしく、やさしくほほえみかけたのです。
娘に出会ってから笑顔を見るのは初めてですから、顧はとろけるようになって後について娘の部屋にはいり、思いのたけをつくしたのでした。
事が終わってのち、
「これきりですよ。もう二度といたしません」
と娘に言われたものの理由がわからず、翌日もそでを引いて誘ってみると、娘はこわい顔をして手を払いのけて立ち去ってしまいました。
ある時、娘が顧を呼び止め
「いつもお宅に出入りしている若い方はどういう人なのですか? 何かと無礼なことを言うのですが、命が惜しければ口を慎むようにとおっしゃっていただけませんか」と言うのです。
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少年に、娘に手を出してはならないと言うと
「そんなら、あなたは何で手出しをしたのですか。あ、手じゃなくって別のところでしたね」
それからひと月ほどのちの夜、顧が書斎に坐っていると、不意に娘がはいってきて顧に笑いかけるのでした。
「思いがけなく、ご縁がまだつながっておりました」
顧は大喜びで娘を抱き寄せました。
と、外に足音がして、ふたりがあわてて離れると同時に扉が開き、少年が部屋をのぞき込みました。
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