聊斎志異より 「侠女」 5/7

そののち娘の母親が亡くなり、顧は精いっぱいの葬式をだしてやりました。
その一方では娘がひとりきりになったのを幸いと、しきりに向かいの家に忍び込んでは娘の部屋の窓をたたいて誘うのですが、家の中は真っ暗で、娘はどこかに出かけた様子です。
娘の自分に対する態度を思い返すと、どうもほかに男がいるのではないかとも思えます。
やがて戻ってきた娘は物陰に顧を呼んで言うのでした。
「わたくしは妊娠して八か月になります。もうすぐあなたの子供が生まれるでしょう。でも、事情があって育ててあげることはできませんので、今のうちに乳母をさがしておいてください。お母様とご相談されて、養子をもらったことにされたらいいと思います」


それを聞いた顧の母は、嫁にもらいたいと言っても承知しないのに陰で子供をつくるなんて……と、あきれながらも大喜びで、さっそく乳母の手配をして待ち受けたものでした。
期日の頃、娘が来なくなったので顧の母が様子を見に行くと、娘は人手を借りずにひとりきりで出産していました。
生まれたのは福相とされた ひたいやあごの広い男の子で、人目を避けて夜になってから引き取ったのでした。