聊斎志異より 「侠女」 6/7

娘はその後また見かけなくなりましたが、二三日後の夜、顧の書斎の扉をたたいてはいってきました。
「成すべき事が終わりましたので、お別れにまいりました」
と、いつになく上機嫌で微笑みながら言うのです。
「母へのご恩はいつも忘れたことはございません。
ベッドをご一緒にしなかったのは、そんなことでご恩をお返ししようとは思わなかったからです。
ただ、あなたはご結婚ができずにいらっしゃるから、跡継ぎを残すことでご恩返しをと考えました。

二度お会いしたのは、一度で妊娠しなかったからなのです」
重そうな革袋を下げておりますから、尋ねると、それを開けて見せましたが、中には、髪の毛やらヒゲやらが血でまとわりついた男の首がはいっていたのです。
「いままでは隠しておりましたが、今は事も終わったのでお話します。
わたくしは浙江(せっこう)省の者で、父は地方の長官をしておりましたが、悪いライバルの策謀で殺され、家も取りつぶされてしまいました。
わたくしは母を背負って逃げ、ここに身を隠して三年になります。
すぐに復讐できなかったのは年老いた母がいたからで、母が亡くなってからは子供ができて、また伸びてしまいました。
先に留守にいたしましたのは、し損じないように仇の屋敷の様子を探りに行っていたのです」