聊斎志異より 「嬌娜」 5/9

「私のいとこにあたる人ですが……」
がっくりきた孔は壁に向かって
「かつて滄海(そうかい)を経て水となしがたく 巫山(ふざん)を除けばこれ雲ならず」と、唐代の詩の一節を歌ったのでした。
すばらしいものを見てしまったら、それ以外に興味はないというわけですが、公子もその意味をさとって、
「父もあなたを尊敬して、何とか縁組みをしたいと考えておりますが、娘は私の妹ひとりで、まだあの通りの子供です。阿松(あしょう)さんという いとこが今年十八なのですが……」

ともかく実物を見たらという公子のすすめで、のぞき見することにしました。
翌朝嬌娜と連れだって庭を散歩するところを見ればいずれがアヤメ、カキツバタと、まったく甲乙付けがたい美人ですから、
「いい、いい、あっちでいい。あれにする」と、もう大変な喜びようです。
すぐに婚約がととのい、盛大に挙式が行われたのでした。
 
その後まもなく、持ち主の単(ぜん)氏の要請で公子たちが屋敷をあけわたすことになったと聞かされました。
孔は、遠方に移るという公子たちと別れたくなかったのですが、公子は
「長く留守にされているので、ひとまず郷里に帰られたらいいでしょう」とすすめるのでした。