聊斎志異より 「掌篇集」 5/7
蒲 松 齢(ほ しょうれい)
 聊斎志異
(りょうさいしい)より
薬 僧(やくそう)

山東省済寧(せいねい)の何とかいう人が寺を見物していると、ひなたぼっこをしている坊さんを見かけました。
薬を売って旅をしている僧らしいので、たわむれに強精剤はあるかと聞いてみました。
「ありますとも。強精だけではなく、小さな物をたちどころに大きくする効果はすばらしいものですぢゃ」

ということですから、これを買って飲んでみると、わずかの間に下の方がむずむずとしてきました。
ズボンの中に手を入れてみると、確実に30%は大きくなっております。
それで帰ればよかったのですが、もう少しという欲が出て、坊さんが用事に立つのを待って駆け寄り、荷物の中から探し出したさっきの丸薬を一度に三粒ほど飲み込んでしまいました。
と、突然からだの心棒が引き抜かれるような感じがして、首が肩にめり込んでしまい、前の方がにょきにょきと際限もなく生長してくるではありませんか。
あせっているところに戻ってきた坊さんが
「薬を盗みなさったな」と、あきれかえって別の薬を飲ませてくれた時にはもう足と変わらない大きさになっていたのです。
膨張は止まったものの結局もとには戻らず、三本足で家に帰ったのですが、その歩きにくいことといったら……。
変わり果てた姿に、戻った家でも誰も本人とは気付かなかったということです。
その後、この人は廃人になってしまい、街の中でごろごろしているのをよく見かけたということです。