聊斎志異より 「掌篇集」 6/7
蒲 松 齢(ほ しょうれい)
 聊斎志異
(りょうさいしい)より
  (くよく)

人の言葉をうまく話す九官鳥を飼っていた人の話です。
とてもよくなれていて、旅に出るときも鳥を一緒に連れてゆくほどで、たいへんにかわいがっていました。
その人が旅先で旅費がなくなってしまいました。
困って九官鳥に相談すると、鳥が言うには
「私を王様に売ったら、高い値段で売れるでしょう」
王様というのは、領地をもらった皇族といった人のようです。
男が「売るなんて、そんなことはできない」と言うと、
「大丈夫です。代金をもらったら町はずれの大きな木の下で待っていてくだされば、また会えますよ」

ということですから、王様の屋敷の前で鳥を相手に会話をしていると、見物の中にいた侍従が、すぐに王様に知らせました。
男を召し寄せた王様は鳥が気に入り、売るように言われたのでした。
「これは私の宝物で、売るつもりはございません」
すると王様が鳥に向かって言うには
「おまえはここにいたいとは思わないか。リッチな暮らしができるぞ」
「おそばに いとうございます」
鳥はさらに
「代金は十両もやれば充分です」
と言いますから、王様は大喜びです。
男は十両もらって、くやしそうに引き上げたのでした。
王様は鳥と会話を楽しまれると、ごちそうを食べさせました。
食べ終わった鳥が、
「わたくしは水浴びが しとうございます」
と言うので、金のたらいに水を張り、鳥をかごから出させました。
水浴びを終わった鳥は羽をふるって水を切り、翼が乾くと、
「では、これにて失礼いたします」と一礼して、窓から飛んでいってしまいました。
これは、著者のブレインにあたる人が、九官鳥の飼い主と同郷の王さんから聞いた話ということです。