聊斎志異より 「寒月芙きょ」 3/5

ホームレスの道人がどんな宴会を開くのか、みな興味シンシンで、水面亭という会場に集まりました。
水面亭は湖畔のあずまやのようなものですから、屋根や壁があるきりでテーブルも椅子もありません。
「私は下僕をもっておりませんので、みなさまのお供の方をお借りして、したくをしたいのですが」
皆が承知すると、道人は壁に扉の絵を描いて、それをノックしました。

すると中で誰かが返事をして、絵の扉が開いたのです。
中には家具がそろっていて、何人かが働いており、料理のいい匂いもしてくるではありませんか。
中にはいったり、中の者と会話してはいけないと道人が言うので、両側の者はうなづいたり笑いあったりして家具や料理を受け渡したのでした。
「こんなすばらしい宴会に蓮の花が咲いていないのは残念だね」
招待客のひとりが、そう言いました。
水面亭の外は大明湖という湖で、夏の頃は一面の蓮の花にうずまるのですが、今は冬のことで枯れ蓮のくきが見えるばかりなのです。