聊斎志異より 「尸変」 4/5

境内に大きな白楊(ハコヤナギ)の木がありましたから、その幹を盾にして女と向き合い、相手と逆にぐるぐる回って、はた目にはまるで遊んでいるようなありさまですが、当事者はそれどころではありません。
男は心臓が今にも飛び出しそう、いよいよもうだめかという時、おかしな話ですが、死人の方もくたびれたとみえて動きが止まってしまいました。
と、突然、女の腕が抱きつくように幹の両側から伸びて、ハッシと男につかみかかったのです。
ところが精根尽き果てた男は、ちょうど後にばったり倒れるところでしたから、女の腕は空を切ってガキッと爪が幹に食い込み、そのまま両者とも動かなくなってしまったのです。
物音がやんだので坊さんがこわごわのぞいてみると、死装束の女が木に抱きついており、その前で、男が泡を吹いて目を回しておりますから、いや、驚いたの何のって……。