Web 絵草紙
「蛇性の婬」 21/24

わけを話せば、この法師は鼻を高くして、
「そういった憑き物を捕らえるのはわけもないことぢゃ。安心しなさい」
と気軽に言うので、みな落ち着いたのでした。
法師は硫黄を取り寄せて薬を作り、小がめに入れると、逃げ隠れる家人たちをあざ笑って
「逃げなくてもよい。老人も子供もそこにいなさい。おろちは今すぐに捕らえて見せましょう」
と、寝室に向かいます。

寝室の扉を開ければ、待っていたように、かの大蛇が首を出しました。
その頭のどれほどの物であったことか。
頭は戸口をふさぐほどで、雪よりも白く輝き、目は鏡の如く、角は枯れ木の如く、三尺の口を開き、くれないの舌をはいて、ただ一呑みという勢いです。
「あなや!」と叫んで、法師はかめも放り出し、腰が抜けて、這ったり転がったりして何とか逃げてきて、人々に向かい

「恐ろしい! あれは祟りをなす神ではありませんか。何で坊主の祈祷が効きましょう。この手足がなかったら命はないところでした」と言いながら気絶してしまいました。
助け起こそうとしましたが、顔や体は赤や黒に焼けただれたようで、たき火に手をかざすように熱いのです。