Web 絵草紙
「蛇性の婬」 9/24

「本当に、買ったのではなく、訳あって人に貰ったのを兄が見とがめて買ったと言うのです」
「何の手柄があってそんな宝物を貰ったというのだ。いい加減なことばかり言いおって、その訳を話してみろ」と、父親が言えば、
「その訳は、ここでは言いにくいのです。誰かを介して申し上げたいのですが」
「親兄弟に話せぬ事を誰に話すと言うのだ」
父親が声を荒げて言うのを、そばにいた兄嫁が
「このことは、愚か者ですが私がうかがいましょう。おいでなさい」となだめれば、豊雄も立って別室にはいりました。
「初めからこっそり姉さんに相談しようと思っていたのですが、実は──といった訳で後見をしてくれと頼まれたのです」
話を聞いた姉は微笑んで
「男の独り寝を前から気にかけていたのですが、それはめでたいことですね。このことは何とかうまく言ってあげましょう」

その夜、夫に訳を話せば、太郎は眉をひそめ

「おかしい。この国の庁の役人に県(あがた)の何とかいう名前を聞いたことがない。我が家はこの辺りの長なのだから、そういう人のお亡くなりになった事を聞かないはずがない。ともかくその太刀を持ってこい」
妻の持ってきた刀を調べて、ため息をつきながら言うには