Web 絵草紙
「幡磨の国 印南野にして 野猪を殺したる語」 3/4

見ていると、その墓の上が動くようです。
気のせいかと思って、さらによく見れば、たしかに動いています。
『恐ろしいことだ。どうして動くのだろう』と思って見ているうちに、そこから何か出てくるものがあります。
それは体から火が燃え上がる裸の人で、墓を抜け出すと、その火を払いながら、男のうずくまっている小屋めがけて駆け寄ってきます。
暗いので誰かはわかりませんが、とてつもなく大きな者です。
『葬送の所には必ず鬼が居るという。その鬼が私を食おうと襲いかかって来たのだ。どうあがいても、私の命はこれまでだ』
『同じ死ぬのなら、この小屋で身動きできずに殺されるより、外に出て鬼に一太刀あびせよう!』
そう決心すると、男は小屋を飛び出し、鬼に立ち向かって斬りつけると、鬼は切られて、のけぞって倒れました。
男はあとも見ずに、村とおぼしき方向に向かって走りに走りました。