|
家に戻ると風呂や食事のしたくがととのっておりましたから、それらを済ませ女とふたり床に着いたのでした。
男はその女をいとおしく、離れがたく思っておりましたから、盗賊に加わったことを厭う気持ちはありませんでした。
そのうちに、そんな仕事が七、八度にもなりました。
ある時は太刀をふるって屋敷に押し入り、ある時は周囲の屋敷の門に配置されて弓矢で防戦しましたが、いずれのときでも男は賢く勇敢に戦いました。
そんな頃、女はひとつの鍵を男に渡して言うのでした。
「六角の北、しかじかという所に行くと、そこに倉がいくつかあります。そのうちの、こういう倉を開け、目に付いた物を荷造りして、近くに荷物を運ぶ業者が多くありますから、それを頼んで運ばせてください」
男が出向いて教えられた倉を開ければ、欲しい物は何でもはいっていますから、「不思議なことだ」と思いながらも荷車に積ませて持ち帰り、好きなようにそれを使って暮らしました。
そんなふうに暮らすうちに二年ほどがたちました。
その頃から、女が泣いているのをよく目にするようになりました。
いつもはこんなことは無かったのに、どうしたことだろうと、男は思って
「どうして泣くのですか」と聞けば、
|

「思いがけず、分かれることになりはしないかと思うと、それが悲しいのです」
「なぜ、そんなことを」
「定めなきことが世の常ですから」
男は、ただ何となくそう言うのだろうと、さして気にもとめず、
「ちょっと行きたい所があるのですが」と言えば、いつも通りに仕立てて送り出しました。
|