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それからは(位は自分が上なのですが)何かにつけて叔父の大納言を敬うようにしましたから、大納言は勿体なく有難いことと感謝しておりました。
下心があるとも知らずに──と、大臣は心の中ではおかしかったことでしょう。
正月が近づいた頃、これまでそんなことは無かったのに「三が日の内に、ご挨拶に伺いたい」と、大臣から大納言家に通知がありました。
大喜びで屋敷をみがきたて、饗応の準備など万端調えて待ち受けるうち、正月の三日、大臣は然るべき貴族達を伴って大納言家を訪れました。
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大納言が、身の置き所も無いほどに喜んで、饗応に走り回ったのももっともなことでした。
日暮れ方に訪れたので、宴会の杯を重ねるうちに夜となりました。
大納言の北の方は、大臣に近い簾の内から見ておりましたが、大臣の姿形、衣装の薫き物のかおり、歌う声やありさまなど当代並ぶ者のないすばらしさに、老人に連れ添う身の不運が情けなく思われるのでした。
大臣は、歌や会話の間に簾の内に流し目を送ったり微笑みかけたりするのですが、その様子が、北の方には恥ずかしくなるほど魅力的なのです。
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