Web 絵草紙
「修行者、人の家に行き女主を祓へして死にたる語」 3/4

それで、女の手を捕らえて
「教えに背く事ではあるが、あなたを見ていると、仏の道などどうでもよくなった。この思いを遂げさせてください」と迫ります。
女が断って逃げようとすると、僧は刀を抜き、
「いやだと言うなら突き殺しますぞ」
人気のない山中で、どうすることもできずにいる女を僧は藪の中に引きずり込んで抱こうとしますから、女も拒みがたく、僧の思うままになったのでした。
 
その頃、女の夫は狗山(いぬやま)を終えて家に帰る途中でしたが、そうなる定めであったのでしょうか、ちょうどその時、そこを通りかかったのでした。
藪が揺れてガサガサと鳴るのを見て立ち止まった夫は藪の中に鹿がいるのだと思って弓を引き絞り、動く所をねらって矢を射ると、「あっ!」と人の叫び声がしました。
驚いた夫はかけ寄って草をかけわけて見ると、女の上にかぶさった僧の背中に矢が立っています。