Web 絵草紙
「灯火に影移りて死にたる女の語」 2/4

 
戻ってきた小中将に「こんなことがあったのですよ」
などと話すと、
「どんなにか、みすぼらしい情けない姿であったこと
でしょう。すぐに消してしまわずに、長いこと眺めて
いられたとは恥ずかしいことです」と言ったのでした。
その後、先輩の女房たちがこれを聞いて、
「それは不吉なことなのに、私たちに知らせずに灯を
細めてしまったとは…」などと言いましたが、過ぎた
ことで、そのままに終わったのでした。
二十日ほど過ぎた頃、この小中将は何となく体の具合
が悪くなって、二三日は居室に寝ていましたが、気分
が悪いというので自分の屋敷に戻りました。
そんな頃、高経はちょっとした用事で女御殿に出向い
たついでに小中将を訪ねると、詰め所の童女が「実家
に帰っています」というので、すぐに屋敷に行ってみ
ました。
七八日ばかりの月が西の空に掛かっていましたが、そ
の西向きの引戸のところに小中将が出て来たので、高
経は引戸を開けてはいりました。