第5回リアクションD1『不揃いな旋律〜立ち上がる脅威〜』より抜粋

川合 勇次郎マスター執筆

Scene.2 「見捨てられた人々」より抜粋

 ――中庭で子供たちが働き始めた頃。
 畑の手入れをするミーシャたちの側を、魔導学院の生徒たちであるウァルハーリパル・エスタエイシス・ノースランドたちがその中庭を通り過ぎていった。
「……なんだか、あっちの二人が喧嘩しているにゃ」
 ウァルハーリパルとエイシスが何やら口論しているように見えたため、ミーシャが二人を心配してその側へと寄っていく。
「喧嘩しているわけじゃないわ。ちょっと、僕とリパルちゃんの意見が食い違ってただけなの」
 心配そうに声をかけてきたミーシャに対して、エイシスが言った。
「僕は、エルメスが魔導学院を襲ってこない限りはエルメスに協力してもいいんじゃないかって思うのよ。これからアルケニアに攻め込むっていうわけじゃなくて、ダークレイスと戦うっていうんでしょ?なら……」
「だーくれいすだけではありません。えるめすさんは、しんりゅうさまともたたかうつもりなんです」
 エイシスの意見に続いて、相変わらず腰がくだけそうな口調でウァルハーリパルが言った。
「神竜様と戦うって言ったって、いくらエルメスでもかなうわけがないじゃない」
「そういうもんだいではありません……。たしかにえるめすさんとてをくめば、みんなはたすかるかもしれませんが、えるめすさんとてをくむということは、しんりゅうさまにそむくことにもなります。ここは、みんなでがくえんをだっしゅつして、さいきをはかることがいちばんです」
「まあ、脱出してエスターシャ先生たちと合流するのも一つの手段よね。でも、ルリュヴィアさんも捕まっちゃっているし、難しいよ……」
「二人とも、ミーシャと同じくらいの若さなのに、すごく難しい話をしているにゃ……」
 そんな二人を頼もしく思い、ミーシャがそんな事を呟いていたが、仲の良い二人でも、やはり意見が食い違っているのである。確かに、どちらの道にもそれぞれの考えがあるのである。

 ……ウァルハーリパルとエイシスが向かったのは、校舎裏にあるハトの小屋である。
 現在、ウァルハーリパルはフォルナスティア大砂漠に向かっているヴァルキリーのシエナヒルト隊と伝書鳩で交流を行っている。
 その事は、まだエルメスに悟られていない事なのだが、アルケニアにいるエスターシャたちだけでなく、このシエナヒルト隊にも援護してもらうことができれば、エルメスに捕らわれてしまった現状を打破する事もできるかもしれない。
「でも、きょう、はとさんをしえなひるとさんのところにとばしたとしても……とてもむいかのあいだにえんごがくるわけがありませんよね」
「そうだね……」
 落ち込み気味のウァルハーリパルとエイシス。
 だが、魔界とこの世を結ぶ門を閉じるために活動しているというシエナヒルト隊の吉報を期待して鳩小屋までやってきた二人は、小屋の中に鳩が戻ってきているのに気づいて、途端に元気を取り戻した。
「リパルちゃん、ハトが戻ってきてるよ!!」
「……はい!」
 大きな期待を胸に、ハトの足についた手紙に目を通す二人。
 ……だが、ハトが届けた情報には、希望などは存在していなかった。それどころか、竜神族の八相公「竜王の鎌」の異名を持つシュヴァリエによって呼び出された神竜・金竜との交戦状態なのだという。
「し、しんりゅうさまとたたかっている……?」
「何それ……どういうことよ!?シエナヒルトって人は、ヴァルキリーの中でも偉い人だったんじゃないの!?」
 短い文面から、全てを察することができずに悩むウァルハーリパルとエイシス。エイシスが文章を見る限りでは、そのシエナヒルトも神竜と戦う意志を示しているらしい。
「竜神族が人間の敵に回って、ヴァルキリーのシエナヒルトって人が人間の味方になってくれてるって事?」
「しんりゅうさまが……」
 あまりに突然なことに、エイシスは実感を掴めず、キツネにつままれたような表情をしていたが、その横にいたウァルハーリパルは色白な顔を蒼白にして震えていた。
「しんりゅうさまが……」
「ち、ちょっとリパルちゃん、大丈夫?とりあえずみんなに報告してきましょ!」

(中略)

Scene.3 より抜粋

 その日の夕方。
 予定通り、食堂にて今後の話し合いを行うことになったのだが、ここで衝撃的な事件が起きた。
 先ほど伝書鳩を受け取ったウァルハーリパルが自殺してしまったのだ。
「自殺?あのひらがな娘が!?なんでぇ!???」
「わかんないっ……!でも、リパルちゃん、すっごく神竜様を信仰していたから、もしかしたらそれと関係あるのかも……!学校の授業以外でも、神竜様のこととかたくさん調べてたし……!!」
 保険の先生であるケルトゥカリナに報告に来たエイシスは、そこまで話すと激しく泣き出してしまった。
「自殺……しまったわ〜。思春期の女の子になら、充分考えられる事態じゃない……!こんな事じゃ、保険の先生失格だわ〜っ!!」
 実をいえば、ケルトゥカリナもウァルハーリパルに負けないくらい神竜好きな女性であるため、ウァルハーリパルが受けた衝撃がわからないでもないのだ。
「……服毒自殺?遺書には『おはかにはくうきあなをあけておいてください』って書いてあったって?……よくわからないけど、その通りにしてあげたほうがよさそうね」
 ケルトゥカリナは泣きじゃくるエイシスを慰めながら、ひとまずエイシスを保健室で休ませておいて、自分は予定通り食堂に向かうことにした。
(やっぱり、内部混乱が生じているわね……意見を統一できるとは思わないけど、それでもやれるだけの事はやらないと……!)

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●プレイヤー注釈

 明らかに書き損じだと思われる箇所(改行ミスなど)は修正しておきました。
 いきなりウァルハーリパルが死んでしまっていますが、「偽死」のエクストラアーツによる偽装自殺です。でも、この直後のシーンのケルトゥカリナさんの台詞中で、一度だけウァルハーリパルのことが言及されているのですが、その後の出番はありません。アクションには「棺桶の中から神聖魔法《幽体離脱》でみんなをバックアップ」みたいな事を書いていて、今ターン中に復活する予定だったのですが、その後エルメスさんが倒されて学園が平和になってしまい、ウァルハーリパルは出るに出られなくなってしまったのでした(爆)。
 その次のアクションでは、苦肉の策として「霊魂となってイグドラシルに向かい、竜王に真相を聞きにいく」という内容にして、自殺(?)の理由付けとしました。
 ……大霊界?


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