ステラマリス・サガ 約束の地の探索者
第8回リアクションHA1

「それでも僕は歩いてゆく」より抜粋

榊大悟マスター執筆

Scene.3 「信じる道を行くと言うこと」より一部抜粋

 サテラ・ハルパニアは病院の一室で紅茶を入れながら窓の外を見つめていた。ベッドに寝かせられているのはユリア・フォルケン、に見えるが前の戦いで傷を負ったアヴニールのダミーである。サテラはこうしてユリアを狙うものの目を欺こうと考えていたのだ。
 ふと、ペットのハムスターが何かから逃れるようにサテラのカバンへと潜り込む。いくらのんびり者のサテラとは言えそれが何を意味するかは分かっているつもりだ。いたずらに戦場で過ごしてきたわけではない。ベッドの下からスプライトを取り出すと扉の脇へ回った。
 ドアが蹴破られる。一瞬躊躇しながらもサテラは廊下に向けてスプライトを放った。互いに様子を伺いあう。
 すでに見張りに止っていた仲間は倒されていた。
「この手口、アイゼンヴォルフの方ではありませんね。社内の、博士を狙う一党の方ですか」
「答える奴がいるか」
 外を覗こうとしたサテラのスプライトが銃弾に弾かれ落ちる。あっとサテラが声を上たその時、窓ガラスを破って一体のスレイヴ・ドールが姿を現した。
 炸裂音がしてその肋骨に位置する部位からパイルが突き出し敵の一人を串刺しにする。
「あなたは、確かアイゼンヴォルフの……」
 セリスタ・モデルノイツェン
 セリスタは扉の向こうのベッドにセンサーを集中させると関心を敵に戻す。
「あれはダミー。せっかくユリア博士とお話したいと思っていたけど、無駄足だったみたいね」
 もう一人の男が銃を向けるも相手がスレイヴ・ドールと知り引き金を引くのを躊躇っている。致命傷を与えられぬ上に無駄弾を使うことこそ、このケースで致命的なことはない。それを知る男はプロであった。しかし.セリスタも今や歴戦の士である。二人はじりじりと間合いを伺った。
「フライハイト・プランを悪用しようとする連中ね」
「悪用、ふん、悪用だと」
 男は悪びれる様子もなくいった。
「これは信念だよ。プランをちょっといじって全人類に俺達への服従をプログラムさせれば,メモリウムの計画的運用だってやってみせるさ。
 そもそも、何が正しいのか分からないこの世界だ。ならぱ自分が信じる道こそが唯一絶対。俺達の思う通りにやって何が悪い」
「!」
 セリスタはその言葉に胸を射貫かれた思いであった。セリスタはずっと、自分の信じる道を進んできた。今こうしてユリア博士に伝えようとしていたものも、自分の考えに誇りを持て、そういうことであったのだ。
 しかし、それでいいのか?
 信じる道を行って、いいのか。
 このような男を前にして、セリスタは自分の考えに疑問を持たずにはいられなかった。
 そんな隙を男は見逃さなかった。不利を悟るとすぐさま窓を破って外へと逃げ出した。セリスタは追わなかった。
 それは、いたずらに追跡すれば自分を窮地に曝すと言うういつもの計算より、むしろ感傷的な部分が大きいように感じられた。
「甘えなの?私の……」
 セリスタは小さく呟いた。

【NPC一覧】

【PC一覧】

●プレイヤー注釈

 ハズしてます。いつでも自信なさそうで、何か迷いを抱えていて、信念という言葉から縁遠い方が、いつものセリスタらしい気もしますね。
 この回ではグランド・マギことフライハイト・フォルケンの自殺、という事件がありました。密かに毎月、個別シートのNPCメッセージ欄を使ってラブコールを送っていたフライハイト氏(相手にされてなかったんですけど)の死にショック。なんとなく行動が自暴自棄で精神不安定なのはそのせいなのか?
 珍しく戦闘系アクションで、隠し設定の「肋骨パイルバンカー」を披露できたのは狙い通りだったのですけれど、どうせなら薬莢排出も描写してほしかったかも……。

 HA1ではマザー・ドライブ攻防戦と、行方不明のユリア・フォルケンがPCたちに諭され、迷いを捨てず、悩みながら成すべき事をする道を選び、フライハイト・プランを遂行する立場に戻ってゆく顛末が描かれています。HA2は、ノンポリを信念とするジャーナリストと、「アイゼンヴォルフ」たちとの交流を描いた話。
 フライハイト・プランの真相は市民に公表され、暴動などが発生する事態となりました。エグゼクターたちは放送塔「アンゲルマ・タワー」に篭城し、全世界の人類を洗脳して『超越種』へと作り変えるための毒電波(?)を流すための時間稼ぎをすることになります。

 影武者ユリアは、前回のHA1、HA2にも登場していたキャラ。サンクシオンの投げつけたスリングの弾を受け止め、投げ返すなど、印象的な活躍をしていたNPCです。名前ないんですけど……。


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