1.スイムの部(1.5km)
最初にそびえる大難関。
3種目中一番の苦手種目だというのに、私はまかり間違ってスタートする時に先頭なぞにおりました。
「最初クロールで飛ばして、ちょっとばらけてから得意の平泳ぎに切り替えよう」 こう思って ばしゃばしゃばしゃっ!! っとクロールぶちかましたものの、そこはさすがに皆さん伊達や酔狂でトライアスロンに参加しようという訳ではない。「離せる」わけがありません。結局100mも行かない内に平泳ぎに切り替え。と、その途端・・・
と後ろから次々に抜いてくる人に頭・肩・身体をぶったたかれ
がぶがぶっっ
げぼぉ
思いっきり海水を飲み込んで、頭の中がパニック。ちょっと落ち着こう、と顔を上げて平泳ぎを続けても横を通り過ぎる人が立てる波をまともに受けて、また
(情けない・・・)
海を泳ぐなんざ高校2年以来12年振りの私は完全にパニックに陥っていた。
この時、私の混乱した思考回路は、 【泳げない = おぼれる = 死ぬ】 という三段論法だけが占拠しており、もはやレースという状況にはなかった。
もはや前に進む気力を失って、救急隊のボートに向かって力無く手を振ってしまった。
「もういい。やっぱり水泳をちゃんと練習しておけば良かった・・・」
波崎港を2周するコース(750m×2)で、最初のブイを過ぎた所。スタートしてから300mにも満たない地点だった。
我ながら、情けない。
☆ ☆ ☆ ☆
トライアスロン初参加にあたって、会社かつ大学の先輩である吉田 敬さんに非常にお世話になった。
レース前のアドバイスを色々頂いたばかりか、当日は車まで運転して頂き、どれだけ感謝しても足りない位面倒を見てもらった。
吉田さんは、ボート部出身といういわばトライアスロンに関しては門外漢でありながら既に幾度か参戦している強者。一人きりの参加ではなく、経験者の応援があるというのはとても心強いものだ。
☆ ☆ ☆ ☆
さて、ボートに向かって「help me」と手を振ったものの、ライフガードの皆さんは一向にこちらに気付く気配がない。
内心絶望しながら、ぷかぷかと立ち泳ぎしつつ 「もーいや」 と思っている内にだんだん(やっと?)冷静になってきた。
「吉田さんも応援に来てくれているのに、こんな所で止められへんわ」
冷静になるや、突然思い直し、
「相当時間を浪費したろうからもしかすると時間制限にひっかかって失格かもしれないけれど、途中棄権よりはマシ」
と思って再び泳ぎ始めた。
もう周りに人は誰もいなくて、たった一人の平泳ぎクンは自分のペースをようやく取り戻していた。
後発の別グループ(今大会は、参加者が多い割に小さな漁港で開催したためか、4回に分けて3分おきにスタートした)にもガンガン抜かれたが、自分のペースを取り戻した私は淡々と泳ぎ続け、ようやく周回をひとつ終えた。
「今で何分たったかな?」
気になる経過タイムを確認しようとして、腕時計を見ようと、ちょっと無理な体勢をとった瞬間!
びちっ!
あっちゃー・・・ 左足ふくらはぎがつってしまいました。(バルセロナ五輪のマラソンで「こけちゃいました」谷口選手を思い出しながら読んで下さい)
丁度周回の目印になるブイがあったので、ブイに必死の形相でしがみつき、つった部分をマッサージする。
悲しんでみても事実は残酷である。そしてこんな時に限ってボートに乗ったねぇちゃんはすぐに駆け寄ってくる。
ねぇちゃん)
「大丈夫ですか???」
<笑顔>
Wacky)
「はい。つっただけですから、暫くこうやって浮いてます。(さっき死にそうになってたときに来んかい、ワレ!)」
<必死>
足の痛みが和らいで、再び泳ぎ始めたとき、時間が丁度25分経っていた。
スイムの制限時間は50分。急がなければ、危ない。
☆ ☆ ☆ ☆
トライアスロン参加に当たって、幾つかの道具を新調したけれど、その中で一番値がはったのがウェットスーツだ。
スポーツ店にウェットスーツを買いに行った時、女性店員に声を掛けたら
「じゃ、採寸しますから脱いじゃって下さい。」(^o^)/
と無邪気に言われてたじろいだものである。
陸上用のタイツ一枚を残して全裸の私の前にうら若き女性が跪いているこの光景・・・
あ、いかん。ヘンなコト考えてしまった。
☆ ☆ ☆ ☆
大会に向けて、それなりには水泳の練習をやってきたが、練習の絶対量が少なかったことは事実だし、ずっとプールで泳いでいたので海の中での競技は余りにも勝手が違った。
ウェットスーツも、浮力と体温保持に役だったかも知れないが、下半身が浮きすぎてキックが上手く推進力につながらない。度々海面から、すかっ、と抜けてしまうので無理してキックしていた。足をつってしまった原因はこの辺にあったのだろう。
最初に余りにも色々ありすぎたので、2周目は淡々と過ぎた。バテたおじさん、ねーさん風の選手を何人か黄金の平泳ぎで抜き去り、最後はスパートをかけてゴール。でも、ゴール板から陸上に上がった時に、ちょっとよろよろしてしまった。
情けない。
しかし、トランジッションエリアに着くと、もっと情けない光景が待っていた。
時に、43分が経過。
<<ホームに戻る>>
<<3種目め−ランの部を読む>>