読書ノート 目次

by よんひゃん

被差別部落の青春 心の砕ける音 人権を疑え! 「弱者」という呪縛

被差別部落の青春

角岡伸彦
購入日  不明
読了日  2001/11/04
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感想
在日韓朝鮮人の3世、4世、それも20代以下の人に「差別されたことある?」とたずねたら、「いやー、ほとんどないでしょ」という答えが返ってくることが多いと思う。被差別部落問題にも、同じ現象がおこっているようだ。というより、この現象は、部落問題に関して、より顕著だろう。

わたしたち在日には、本名を名乗ることによって自分の出自を明らかにする、という手段もあるし、外国人登録証という「徴(しるし)」も持っている。本国の言語、文化を学んで、アイデンティティ確立の一助とする、ということもできる。

彼らには、まったくそれがない。被差別部落特有の生活習慣や、「ムラ」の中での一体感も、生活の向上に伴って、徐々に消えつつある。(このあたりの事情は、在日にも共通する)まさに、「差別されていること」自体が、彼らの「徴」となっている。このような構造を前に、「寝た子を起こすな」論が幅を利かすのも、無理からぬ部分があるかもしれない。

目に見える差別の実態はどんどん薄くなっていっているし、それ自体はよいことなのだが、差別自体はなくなっていない。差別と闘う人たちにとっては、かえってやりにくいとも言える状況である。実際、「こんなに悲惨な生活をしているんですよ」というところから始まる同和教育は、実態とは完全にずれている。

著者にも、そのあたりの事情に対するとまどいが見え隠れする。だが、それをそのまま出してしまったからこそ、本書の存在意義があるのだと思う。

インタビューとルポルタージュで構成されていて、肩肘張らずに読める本です。ますます見えない存在になりつつある彼ら。そして、見えないからこそ、恋愛・結婚などを通じてだれもが「関係ない」とは言い切れない彼らの実態を知ることができる。問題の重さを感じつつも、読後感はさわやかである。


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