各種の紹介-3

注意! 以前(2006年3月まで)“ミゾレヌマエビ”として紹介していたエビは,実はヌマエビ南部群(or小卵型)だったため,こちらのページに移動させました。内容自体は2006年中に修正済みですが,今回ウェブページの構成自体を整理しなおし,文章も一部修正いたしました。混乱させてすみません。

ヌマエビ(南部群or小卵型)

その1:通称“ミゾレヌマエビ”(産地不明購入個体)

 都内の観賞魚店で,数年前に“ミゾレヌマエビ”の名前で売っていたヌマエビです。私がよく採集しにいっていた川にはミゾレヌマエビ(本物のほう)が大量に採れ,こちらのタイプはごくたまに見かける程度だったと記憶しています(いても両者を区別できていなかった可能性もありますが...)。弱冠の疑い付きでミゾレヌマエビとしていましたが,「蝦三昧」さんにてヌマエビ南部群とご教示いただきました。

“南部群”という語は僕も知りませんでしたし,ネット上でもほとんど言及がないようです。ただし,ヌマエビ地域集団の遺伝的類縁関係を調べた池田(1999年,海洋と生物123,p299-307)によると,ヌマエビは大きく北部ー中部グループ大卵型,亜種とされているヌカエビを含む)と南部グループ小卵型)に分けられるとあるので,この“南部グループ”のことのようです。今後どのような呼び方が定着するかわかりませんが,とりあえずは暫定的に“ヌマエビ南部群”の呼称を使用したいと思います。

 保存してあった標本を調べてみたところ,確かにヌマエビ属(ヌマエビ・ヌカエビ)です。外肢や眼上棘の有無を見ればすぐ判別できたのですが,すっかり調べるのを怠っていました(こちらを参照してください)。うわー!一時期は○○にいた人間(苦笑)として,お恥ずかしい限りです。前ページの本物のミゾレヌマエビに比べると,足もがっしりしているようです。網ですくった時などもヤマトヌマエビのようにずるずると這い上がって来ます。上のミゾレヌマエビの項でも書きましたが,観賞魚店や雑誌などでも両種の区別がちゃんとついていないようで,その後何回か“ミゾレヌマエビ”を観賞魚店で入手してみましたが,ほとんどはこの南部群でした。

 下の写真は,本物ミゾレとの比較のため,2006年5月に都内の観賞魚店で購入した個体です。上の写真の個体と模様がよく似ているのですが,全体の印象は多少異なるような気がします(目の大きさ,褐色斑の濃さ)。地域変異か(購入個体のため採集地は不明です)あるいは飼育条件の違いによるものかもしれません。小型の個体は腹部の黄白色の点線模様が特によく目立ちます。

 ミゾレヌマエビに比べるとより活発に動き回ります。餌を砕いて与えた時にはすぐ集まってきて,トゲナシヌマエビとよく餌の取り合いをしています。足の力が強いためか,他のエビにとられないように餌を少し離れた場所に運んで食べたりもします(トゲナシヌマエビほど持ち逃げがうまくはないですが)。また下の写真のように水中に浮かんだまま餌を食べている小型個体も見かけます。ミゾレヌマエビがこういうことをしたのは見たことがありません。しかもミゾレの場合は餌の取り合いがとても苦手で,ちょくちょく他のエビに餌をとられてしまいます。

 形質によるミゾレヌマエビとヌマエビの見分け方は「分類」のページを参照のこと。色斑上の違いについては「蝦三昧」さんが詳しいです。

その2:高知県物部川産(採集個体)

 写真は高知県産のヌマエビです(2000年9月採集)。分布からいって,これも南部群(小卵型)になるはずです。川の止水部のアシの中で採集しました。腹部の下側がふくらんでいないので,たぶん雄でしょう。先に出てきた産地不明ヌマエビと比較した場合,後で購入したもののほうに,体型はどちらかというとよく似てます。黄白色の小班はあまりありませんが。

 水槽では底よりも水草の上にいることが多かったです。それなりに丈夫でしたが,それでも夏の暑さには弱かったようで,8月を越すことはできませんでした。夏場をどうやってやりすごすかというのが,長く飼育するポイントかと思います。

その3:奄美大島産(購入個体)

 2007年7月に購入。高知産などに比べると派手な印象があります。
 こちらを参照下さい→ ヌマエビ(南部群)奄美産

その4:伊豆半島産(採集個体)

 作成中。暫定的にこちらをどうぞ→ ヌマエビ(南部群)伊豆半島産

以上 2008年1月16日追加・修正

ヌマエビ 北部-中部群(ヌマエビ大卵型・ヌカエビ)

 本州の中部以北に分布するヌマエビ(大卵型,ヌカエビも含む)は,上のヌマエビ南部群(小卵型)よりさらに地味なヌマエビです。諸喜田(1981)や林(1989)によると,上の南方群に比べると卵が大きく(長径が0.7mm前後),湖沼・ため池や河川の止水部などで繁殖できるとされています。大卵型と言ってもヌマエビ科全体の中では中卵型に相当するようです。

 相模川の中流で採集したヌマエビは,何かとよく泳ぎ回っているのが特徴でした。もしかしたらダム湖から流下してきた個体だからかもしれません。採集したのは10年前のことなので,ヌマエビ大卵型とヌカエビのどちらに当たるのかはわかりません。ただし,池田(1999,海洋と生物123)によれば,両者の遺伝的差異はさほど明確なものではなく,南部群との差異(別種レベル)に比べればだいぶ小さいとのことです。

 私の飼育条件では長生きしてくれません。「蝦三昧」さんによると,夏の暑さにかなり弱いとのことです。下の写真は2006年に購入した個体です。水槽冷却用の扇風機も購入してみたのですが,水槽では夏を越せませんでした。うちのアパートではちょっと無理ですかね(エアコンを一日中ガンガンに効かせておくぐらいしか方法は...)。ただしベランダの似非ビオトープに入れておいた2匹は,無事に一夏&一冬を越すことができました。


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