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![]() ![]() by Fujiko Seki |
植物の名前 関富士子 (「COLOUR」6掲載 2000.6.19)
一年ほど前からデジタルカメラで花を撮っている。もう千枚ぐらいになるだろうか。初めのころに撮った写真を見ると、あまりにピンぼけで恥ずかしい。花のおしべやめしべ、小さい柔らかい刺や繊毛がくっきり撮れるとうれしくなる。
画像をトリミングして名前と撮影した日を付けて、インターネットに開設しているHPにアップする。花の好きな人が訪ねてくれて、いっしょに楽しんでくれればいいな。名前を間違えてはたいへん。植物図鑑はもちろん、インターネットでも検索して調べていると、楽しくて時のたつのを忘れる。
こんなことを始めてようやく、今まであまりに花の種類も名前もろくに知らないですごしてきたのに気づいた。
春の田んぼを歩くと、小さく可憐な花が咲き乱れている。その日畔のあちこちに目立ったのは、輝くような黄色の五弁花である。緑がかったしべが内側に反っている。花びらが落ちたあとの金平糖のような緑の実。太い茎に、三つの裂け目が大きく入った葉。調べてみるとキンポウゲ科の「キツネノボタン」だった。とたんに宮沢賢治の童話を思い出す。「どんぐりと山猫」、あるいは「土神と狐」に登場する狐は、チョッキを着込んで胸を張っている。そのチョッキに縦一列光り輝く金色のボタンはこんなふうであるか。よく図鑑を読むと、「キツネノボタン」は「狐の牡丹」と書くらしい。切れこみの深い葉が牡丹の葉に似ているからという。
「キツネノボタン」によく似た花に、同じキンポウゲ科の「ウマノアシガタ」がある。葉が馬の脚の形に似ているからというが、やはり三つに切れこんでいて馬の脚形とも思えない。これは「鳥の脚形」と間違えて名付けられたといわれる。間違えていてもわざわざ訂正しないから、ちょっと変な名前は他にもたくさんある。植物の名前は、こんないいかげんなところもなんとなく面白いのである。
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