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関富士子未刊詩篇より
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今はその日までの



巨大な力が

わたしのまぶたを

めくる


物の

ひらたい影

あらわな胸骨

(義眼をなくして)


今はその日までの

survival dance*

どんな美しい街も


冬の大三角を見た

きれいだった

さむかった


(あのこの)

ひびわれた額に

記憶の灰が積もる


今はその日までの

survival dance

どんなよろこびも


*survival dance ロックグループTRFの歌のタイトル

(小柳玲子アトリエ夢人館発行誌「夢人館通信」3.1995.3.8)



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関富士子未刊詩篇より

風がドロヤナギの白い葉裏をひるがえして吹いた翌朝



イルマ・リバーサイド・サッカーグランドの第一面から第五面まで

波のようにわき上がる

歓声 歓声 歓声


空の大きな手がぱっとつぶてを投げた

堤防の向こうへはすかいに落ちてゆく小鳥たち

肩でぶつかり合う

キックキック

速回しで駆ける少年たち(の中のあのこ)


鉄橋を行くトージョー・ライン

競り合うカワゴエ・ライン

轟音 轟音 轟音


追い風

たかだかと蹴り上げる

ジャンプジャンプ

激突する頭


草むらで眠る赤ん坊に

メリー・ゴー・ラウンドの音楽のような

光の破片が散りかかる

蹴り込む

大きくクリア

葦原に入る

歯噛みとじだんだ

まむしに注意


葉は円いかとんがっているか幹はざらざらかすべすべか

裸子か被子か果肉は硬いか柔らかいか

向かい風

ボールが浮く逸れる転がる激しく飛ぶ

ゴールへ呼ばれてゆく


川原で蟹をつぶしている子供たちの声

キョーコチャンハテンサイダテンサイダテンサイダ

笛と制止の身ぶり

すべての動きが止まる

たたずむレフトバックの少年(のあのこ)


揺れやまぬ葦原に日ざしがかげっていく

堤防に立つ逆光の犬


(詩誌「gui」43. 1994.11)



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