小ネタの部屋別館

「100日チャレンジ・午後7時に家族揃っていただきます言えたら100万円」 

このチャレンジは、4人以上の家族で挑戦。毎日、午後7時に全員揃っていただきますを言ってもらいます。全員揃っていれば、外食もあり。無事に100日、いただきますを言い続けることができるでしょうか!

チャレンジしていただくのは、こちらのご一家。

☆お父さん:中居正広(26)
SMAPのリーダーとして、一家の大黒柱として、毎日忙しいお父さん。お酒も大好きなので、仕事の後の飲み会を振りきって来れるのでしょうか。
☆お母さん:木村拓哉(26)
週に3日のパート以外は専業主婦のお母さん。夕食の準備はばっちりのはずですが、趣味のサーフィンに出かけることもしばしば。
☆お姉さん:稲垣吾郎(25)
意外にアクティブなお姉さん。広い交友関係からのお誘いが気になります。
☆お兄さん:森且行(25)オートレーサーのお兄さん。仕事場が時々変わるのが心配です。
☆つよぽん:草なぎ剛(24)
素直で元気なつよぽん。お仕事はお父さんに負けないくらい多いので、ちゃんと帰ってこれるでしょうか。
☆慎吾:香取慎吾(22)
明るい一家のムードメーカー。この100日で、さらなるダイエットに励みます。


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91日目

その日、中居がスマスマの前室に入っていくと、メンバーはメールの話で盛り上がっていた。メールをやっていない中居は話の輪からはずれて、そっとソファの隅に落ち着く。ちょっとため息なんかついてみたが、誰も気づいてくれない。ちょっとむっとしたリーダーだった。
が、そんなことには関係なく話は盛り上がっている。
「おっまえ昨日の写真は反則だろーーー!!」
「ええー?木村君、笑わなかった?」
「笑ったって!だから反則だっつってんだろ」
「・・・・慎吾のメール楽しいのはいいんだけど、読み込むのがね」
「圧縮かけてくれればいいのに」
「なんでつよぽんそんな言葉知ってんのぉ?」
「雑誌に書いてあった」
「やっぱりね」
「・・・吾郎ちゃん、やっぱりって・・・・」
「圧縮かけてもいいけど、それって解凍しないといけないんだよ?みんなできるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・オレさぁ・・・・・圧縮しらねぇんだけど」
「ええ、知らないの?!」
「お前に言われたくねーんだよ!」
と、手にした雑誌で剛の頭をはたいた木村は、ふっと中居に気づいた。
話に夢中で中居が部屋に入ってきたことでさえ気づかなかった・・・

しまったぁーーーと、心の中で叫び、いそいそと中居の隣にいく。
その様子を目で見て、下3人は苦笑した。
「ご主人見つけた、犬みたい・・・・・・・」

「中居、中居おはよ」
「・・・・・・・・・・おお・・・・・」
ちょっと後ろめたい木村はにこにことちょっとかわいらしく挨拶したが、中居はどんよりとした空気を背中にしょって、ため息をついた。
「・・・・・中居、どうかした?」
「・・・俺もパソコン始めよっかなぁ・・・・・・・」
「え?!!じゃぁ、僕のCMしてるやつ、買ってよ!!」
きっ、と横目で木村に睨まれたが慎吾はお構いなしに続けた。
「中居君になら、まけとくよ?プリンタもつけちゃうから」
「それいうなら、F〇V!安くは出来ねぇけど、俺のポスターつけるから!中居はA,B,Cどれが好き?」
「あ、オレそれねぇ〜Aが好き!」
「お前に聞いてねぇだろ!なぁ、中居」
「あのね、Apti〇aも、ポスターつけるよ、ついでに立て看板も」
中居を囲んで、二人は勢い、まくし立て始め、ついには、お互いCMしているパソコンの自慢をマニアに話し始めた。
二人は、興奮していてわかってないらしいが、吾郎と剛にはすでに「いうんじゃなかった」と後悔し始めている中居の様子が手にとるようにみてとれた。ぼんやりと、眠気に誘われ始めた中居だったが、二人に唐突に振り向かれて、目を見開く。
「中居君、今日のメニューはどっち?!」
「中居、オーダーは?!!!」
異口異音に言われて、中居は視線を不安に漂わせた。
見つめてくる二人の肩越しに苦笑している剛と吾郎がいる。
「えっと・・・・・・」
「連れて歩くなら、オレでしょ!」
「秋葉原なら僕の方が絶対!詳しい!!」
「「どっち?!!!」」
「・・・・・・・・・・・・・・吾郎!!!」

「・・・それで、あの二人あんなに落ち込んでるの?」
と、コタツ布団をしまったコタツ机をはさみ、体育座りして両膝の間に顔を埋めるという全く同じ格好をしている木村と慎吾を森は振り返った。
あの辺りには間違っても近寄りたくない暗い空気が漂っている。
「そうだよ、おかげで食事当番じゃないのにオレが作る羽目になるしさぁ〜」
剛が森の隣でスプーンで肉団子の形を整えながら、愚痴った。
器用にスプーンを操って、油の中に肉隗を落とす。
じゅっ、とおいしそうな音がたった。
「中居ちゃんと吾郎ちゃんは?」
「だから、二人で仲良く秋葉原。人選は間違ってないよね」
「間違ってないかなぁ・・・・・・・・・」
吾郎ちゃんの薀蓄に中居君が苛々しそうだけど。
と、ちょっと苦笑したところで「ただいまーー」と元気な声が、耳に届いた。

「中居ちゃん、お帰り」
「たっだいま。おーー肉団子、うまそぉ〜〜〜」
と、さっそくつまみ食いに手をのばした中居の後ろで吾郎がへたっている。
「・・・・・・・・つっかれたぁ〜」
「中居ちゃん、手、洗ったら?あ、エビ団子は待って、数ないから」
「え〜〜〜けちぃ〜〜〜」
「中居君、で、何買ったの?」
剛の質問にいまだ体育座りの二人が耳を傍立てる。
それに気づいているのかいないのか、中居は
「両方」
「え?」
「吾郎の話聞いてても全然わっかんねーから、二つ買ってきた」
「二つっていうと・・・・・・」
「だから、木村のと慎吾のと一台ずつ・・・・・・・・・・・・・」
「中居君、人の話聞かないんだもん」
「聞いてただろ〜お前の要領得ない話し方がわっりぃんだよ」
ぶつぶつと口論し始めた中居と吾郎の後ろで復活する影が二つ。
「中居、今度特典でポスターもらってきてやるからな」
「僕、ベットの脇に立て看板立ててあげる」
「いらねぇーーーよ!!」

一気に騒がしくなった狭い台所で森が穏やかに言った。
「もうすく、7時だよ」

7:00p.m
「「「「「「いただきます!!!!!!」」」」」」

今日のメインはお団子である。肉団子、エビ団子、ホタテのすり身を丸めたものに春雨をつけてあげたもの・・・・・etc.
中華風のスープにサラダ。おいしい料理のスパイスには楽しいおしゃべり。
「でもさぁ、メールっつったってこうやって毎日一緒に飯くってて、よく書く事があるよなぁ・・・・・」
中居がぼやいた。すでに買ってしまったから始めるしかないとはいうものの、手取り足取り!と言ってくる指導員希望二人にうんざしとし始めての言葉だった。
それに、「そうかもね」と吾郎が相槌を打つ。
それは尤もな言葉であった。が。
「でも一緒にご飯たべれるのもあと10日きっちゃったね」
森がしんみりと言った。今でもSMAPの6人目は森だとはいえ、必然的に番組の収録で週2日はいっしょに行動する他のメンバーと比べて、芸能界から引退した彼はなかなかもうメンバーと会えることはない。
「・・・・・・・ばっか、だからメール始めるんじゃねぇか」
さっきと言っている事が違う!と剛は思ったが黙っていた。同感だからだ。
木村が中居の言葉を継いだ。
「100日終わったって、また一緒に飯くえばいいじゃん。誰か呼べば、全員集まるさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだね」
うっすら目尻に涙を溜めて、森が微笑んだ。
中居が「ばっかだなーお前」と言いながら背中をたたく。
ちょっと唇をとがらせ「痛いよ」と森が笑い返す。
木村が新しくビールを出してくれば、すかさず吾郎がコップを用意した。

慎吾は、その日メールで剛にこう書いた。
『僕、あの人たちと一緒にいれてすごく嬉しいよ』

    一緒にいれるのはあと、少し・・・・・・・・プラス永遠。

(by植木屋様。どうもありがとうございましたー!!もう後ちょっとだねぇ・・・)


92日目

宇多田ヒカルが一年ぶりに歌番組に出演するという情報が流れ始めた頃、一応(?)歌番組に分類はされるが何故かトークの方が視聴率が良く、おまけに歌番組でありながら、超多忙な司会者2人のスケジュールの都合からか4半期に1度トーク特集なる番組まで組まれる、あの「うたばん」にもいよいよもって彼女が出る事が決定した。そしていよいよその収録日当日。

T○Sスタジオのロビーでタバコをふかす石橋貴明と中居。そこへ、ドタドタと例の5人組みがやってくる。
木・吾・森・慎・剛「おはようございます」
貴「あれ?今日なんかあるの、スマップ?」
中「違いますよ、ほら、あの全員揃ってご飯食べるやつ」
貴「なに、あんなことまだやってるの!?」
つい先日も日○レのドラマ収録現場で中居と競演する南波先生ならぬ、松ちゃんにも「おまえら、そんなことやってるのか?」と呆れられたばかりなので余り驚かない。
メンバーが5人になってからすでに何年もたつのに、森を含む5人がいても何の違和感もなく、逆にスタッフも誰も口に出しては聞かないところが凄い。
中「それにしても、まだ(時間)はやいべ。おれ、1本収録あるよ。」
木「分かってるって。今日、来るんだろ?」
中「へ?」
貴「あ〜、そういうことね。」
木「だってさ、めったに見れないじゃん。やっぱ、こういうのはコネを利用しないとね。」
木村は“コネ”のところを、にやっとしながら貴さんを見る。
貴「なるほどね〜」
中「なんだよ、おれにも教えてくれよ〜。わかんねぇだろ〜。なんだよ、木村。コネっていうのはおれのセリフだろ。
勝手に使うなよ〜」
そんな中居を見て、貴さんと木村が2人でニヤニヤしている。
吾「この人達、おれたちがいること分かってるのかな?」
と、一歩離れたところから吾郎が考えれば
森「さすが、貴さん。あの中居くんと長いこと2人で番組やってるだけのことあるよ」
と森が感心し、他局のドラマの撮影現場から無理やり連れてこられた剛は
剛「ところで、何しに早く来たのか僕、きいてないんだけど…」
そして、慎吾は一人「拗ねる中居と、あやす木村。そうか、こういうのもありかな」とうれしそうに見つめていた。

「タラ、タラ〜、タララララ♪」
鼻歌ならぬ、歌声を響かせ、歌姫、宇多田ヒカルがやってきた。ロビーに群がる野獣…ならぬスマップ&貴さんを見つけうれしそうに挨拶する。
宇「おはようございま〜す。」
木「うぃ〜っす」
中「よっ!」
貴「本物だよ」
宇「ち―っす、今日は宜しくお願いします。」
先に歌の収録があるのか、彼女はスタジオに行ってしまう。他の人が貴さんと中居を呼びに来てロビーには5人が残される。
吾「で、僕たちは見れるのかな?だいたい、いくら同じメンバーとはいえ、スタジオに5人も揃って来てたらつまみ出されると思うよ。」
木「そんな、冷静に分析すんなよ。」
森「え〜、ここまできて駄目なんて言うなよ。俺、今日は練習サボってきたのに」
木「何とかなるだろ。ちょっと良い考えあるんだよな」
吾・森「なになに?」
3人のひそひそ話に加わろうとする慎吾を剛がひぱっる
慎「なに、つよぽん」
剛「それで、今日は一体何があるの?」
「なんでわかんないんだよ!」と、木村、吾郎、森、慎吾からはたかれたことは言うまでもない。

宇多田ヒカルを迎えてのトークは多いに盛り上がって、1本目の収録時間が推しに推した。その収録の様子はオンエアーを見ていただくとして、問題の夕ご飯。

貴「しっかし、凄いよな、彼女」
中「ね、ね、言ったとおりっしょ。」
貴「あれで17歳だからね〜。おれの17の頃なんて…」
中「貴さんのはもういいよ。帝京の野球部で2軍だったんだろ〜。俺なんて、高校の編入試験で木村に試験見せてもらってさ〜」
貴「いいよ、中居くんのももう聞き飽きた。」
中「ひっでぇよな〜、人の話し聞けっての。さっきだって人が話してるのに…」
貴「それより。今日の収録、照明変じゃなかった?」
中「なんか頭の上でゴンゴン音してたよな」
貴「何、新人?サンライズ、新しいの入ったの?」
中「なんか俺が言うたびにさ、照明切られてた気するんだけど。何、あれ?嫌われてんのかな?」
貴「中居くん、しゃべってる途中に消されてたもんね。なんかやったんじゃないの〜?あれ?そう言えば、きむ様たちどうしたの?」
中「あ?」
貴「だって、彼女見るためにわざわざ早く来たんでしょ?」
中「いねぇな。」
スタジオを見まわし、時計を覗き込んだ
中「やっべ〜、もう時間ないじゃん。あいつら何やってるんだ?」
唐突に“ストン”と音がして、スタジオの照明が落とされた。
貴・中「ナンダヨ〜、おい、まだ時間じゃないだろ?」
真っ暗になったスタジオに、絶妙にはもった2人の声が響き渡る。

「ウ〜、ウウ〜…」
どこからともなく響き渡る歌声。楽屋に戻ったはずの宇多田ヒカルがろうそくをもってやってくる。
木「今日はスペシャルメニュー」
慎「超豪華特別メニュー」
宇「なんか良くわかんないけど、面白そうだから参加!」
彼女の後ろから5人がご馳走の並んだ容器をもって現れる。
「「「いだだきま〜す」」」
メンバー6人プラス、貴さん、宇多田ヒカルの超豪華メンバーの夕食会が始まる。
スタジオに残った「うたばん」の一部のスタッフが「なんかこれって99年度の長者番付けのお祝い会か!?」って考えたことは言うまでもない。勝手にカメラまわして「“とくばん”の時にでも放送してしまえ」と考えるプロデューサーに、長年彼らの面倒を見てこれくらいのことでは驚かない、ウルトラスーパーマネージャーが、「無理ですよ、照明落としてるんだから」と冷静に答えたかどうかは定かではない。そしてスタジオの隅には口にタオルを巻かれ、手足を縛られたサンライズ(>うたばんの照明ってこんな名前じゃなかった???)のメンバーが転がっていた・…。

(byとも様。どうもありがとうございましたー!hikki・・・!参加して欲しい・・・(笑))


93日目

「ただいまー」  
ガチャリと扉を開けると、いつもなら結構うるさいはずの部屋が妙にシーンとしていた。
「どしたの?ゴロちゃん……」  
こういうときは、一番こういう空気とは縁がなさそうで、でも一番こういう空気をよく読んでる人にこっそり聞くのが得策で、だから俺は足音を殺して雑誌に目を落としていた吾郎ちゃんのところへいった。吾郎ちゃんは俺のことをほんのちょっとだけ目を上げてみると、またすぐに雑誌に目を戻す。そして他の誰にも聞こえないような小さな声でこういった。
「放っといていいよ」  
は?吾郎ちゃん、お願いだから俺にもわかるような言葉で言って欲しいんですけど。  
そんなふうに思ってついつい吾郎ちゃんの横顔を見つめてしまった俺の心を読んだように、吾郎ちゃんは小さく顎で指し示した。その先には、窓の方を向いて膝を抱えた中居くんがいる。  
なるほどねー。  
すっかり身体を丸めてしまって、そんなことしてたら首痛くなるんじゃないかなあ、なんて角度に首を曲げて、窓の外を見ている。あーあ、こんなふうになるなんて久し振り。プロ意識が強いからなかなか人前では見せないけれど、中居くんは結構感情の起伏が激しくて、でも俺たちも大人になったからか中居くんを怒らせるようなこともあんまりしなくなって、こんな中居くんを見たのは一体どれくらい振りなんだろう。
「で、何があったの?」
「多分慎吾の考えてるとおりだと思うけど」  
あ、やっぱり。そうだよなあ、他にないよなあ。今中居くんをこんなふうにさせるなんてさ。じゃあさっきから台所からガチャガチャと不穏な音が聞こえてくるのは、あっちは中居くんのせいなんだ。  
本当にこの人たちってばいつまで経っても。  
俺が思いっきりため息をつくと、吾郎ちゃんは、お前もいい加減慣れたら、なんて慰めにも救いにもならない言葉をくれた。

「「「「「「いただきまーす」」」」」」  

そんなこんなでやっぱり今日の食卓はみんな口数が少なくて、中居くんなんて誰とも目を合わせずに、いつもとは違ってのろのろとご飯を食べてる。木村くんはなんにも言わずにすっと立ち上がると、台所から何か小鉢を持ってきた。そしてやっぱりなんにも言わないまま、机の上の中居くん寄りのほうにごとん、と小鉢を置いて自分はまたもくもくと食事を続ける。  俺はもう一度大きなため息を吐いて、吾郎ちゃんのほうを見た。吾郎ちゃんは、ほらね、なんて顔をして俺に笑って見せた。

小鉢の中身はきゅうりの浅漬け。中居くんの大好物のそれは、結局全部中居くんの胃の中におさまった。

はあ、やっぱりこの人たちって……。

(byひろひろ様。ありがとうございましたー!しかしなお!新たなネタを考えようとしてくれてるひろひろ様!!うれしー(笑)!!)


94日目

「おっかえりー」
バタンとドアの開いた音に、木村はから揚げを揚げながら声をかける。  
慎吾は剛と一緒に買出し。今日はメニューにないと言ったのにどうしても食べたいととんかつを買いに出かけた。吾郎はなんだかわからないけど遅い。森はシーズン中でぎりぎりの予定。となると、帰ってきたまま「ただいま」も言わないのはあいつということになる。
「どうした?」  
気になって、手をとめて顔を見に行く。もう火のないこたつの前で、荷物を横においたままぼんやりしている。
「なんかあったの?」
小さな顔をのぞき込む。
「いやあ、なんてことないんだけどさ」  
疲れているというのも違う。仕事でやなことがあったときとも違う。木村はエプロンをとって座り直した。
「お前さ、ずうとるびって覚えてる?」
「はあ? うーん。名前だけは。」
「今日さ、赤ちゃん預かったらさ、パパにどっかで会ったことあるような気がして。ずーっと気になって。そしたらずうとるびのメンバーだったのよ」
「よく覚えてんなあ。そう言えば人気あったよなあ。お笑いアイドルグループで」
「うん。あとで調べたら一番人気あった人なのよ。その人」  
なんか話の方向性がだんだん見えてきた。中居はパタンと身体を後ろに倒して、寝転がる。
「あーあ、俺もさあ、10年ぐらいして、子供とかできて、テレビの企画なんかで、後輩とかが来てさあ、「どっかで見たことありましたっけ?」とかいわれちゃったりして。それよっかさあ、俺のあずかった子供がデビューして、「俺、昔中居君にあずかってもらったことあんですよねえ」なんで、言われたりして……」  
はあ、全く気にしんぼなんだから。こいつ。
「その頃俺ら、何やってんだろうねえ……」
細い肩がため息で揺れる。
「ばっかだね。おまえ。SMAPじゃん」  
中居は大きな目を開いて木村を見る。
「SMAPに決まってんじゃん。おまえが言ったんだろ。おじいさんになってもって」  
木村は中居の顔を上からのぞき込むように言った。
「いまさら、なしはダメ。おめえが嫌って言っても俺が離さねえから」  
ばあか、って言おうとして、中居の声は掠れて出てこなかった。
「たっだいまあ、きむらくーん、とんかつ買ってきたよーん」  
慎吾と剛の二重唱。木村は笑って立ち上がった。
「おうっ、今飯たけたから」

「いっただっきまーす」  
その日は手巻き寿司ならぬ、中居が収録で作ったというのが、あまりにおいしそうだったので、その場でおにぎり。あつあつのご飯を触れない中居。ギブアップした中居のかわりに木村が握ってやる
「あっ、ずっるーい。俺も中居君に握ってやる」
「おめえのはでっかすぎんだよっ。あ、ばかっ、へんなもん入れんな」
「なんでえ? とんかつにマヨネーズ。ツナマヨあるんだからいいじゃん」  
でっかい慎吾のおにぎり。木村のきれいなおにぎり。吾郎のしゃれたしそご飯のおにぎり。森の野球ボール型のおにぎり。ちょっといびつな剛のおにぎり。五つのおにぎりが目の前に並んだところで、中居は極上の笑顔を見せた。

(byMAKO様。ずうとるび、見ていなかったんだなぁ・・・。座布団運びの山田くんもずうとるび??あり(笑)?)


95日目

木「はいはいはいはい!」
パンパンパン!と木村は手を叩き、全員集合を呼びかけた。
慎「何何ー?」
剛「どしたの木村くん」
これで叩いたのが中居だったら、全員取るものも取りあえず近寄っただろうが、木村だとそうはいかない。何か面白いことでもあるのかなぁ、と興味津々の下二人がまずは寄ってくる。
木「はい!そこ!そこの後ろ体重の人と、猫背の人!はいはい!急いで!」
吾「誰のこと?」
木「そこの女優キラー!」
吾「もぉ、なんだって言う訳ぇ〜?」
それでも来るんかい!と吾郎を睨み、そして最後の一人を待つ。
中「・・・」
最後の一人、猫背にしてSMAPのリーダー、中居正広は、一心不乱にスポーツ新聞を熟読していた。
木「はい!そこの巨人の優勝を信じてる人!」
中「てゆーか俺は知ってるよ!」
新聞を手に、がたっ!と立ちあがる中居。
中「信じてるんじゃない!俺は知ってるんだ!今年は巨人が優勝するって!」
木「もちろん、今年巨人は優勝だ」
中「木村・・・!おまえは解ってるヤツだって、俺は信じてたよ」
握手。
そしてようやく中居は木村の元にやってきた。

木「今日は、ワークショップをしようと思う」
今日の木村は唐突だった。
スタッフ待ちのスマスマの楽屋。リハーサル室で断言した。
中「わーくしょっぷー?」
吾「野田秀樹が自慢気にやってる?」
慎「うぉっ!すげえ!七色いんこだよ!」
吾郎の舞台、七色いんこで、演出家が唐突にワークショップをしようというシーンがあったのだ。
剛「何、ワークショップって」
吾「だから、野田秀樹が自慢気にやってるやつで・・・」
剛「ノダヒデキって誰だっけ・・・」
慎「つよぽん・・・・・・・・・」
可哀想に、と、そっと慎吾が目頭を押さえた時だった。

木「さ!みんなで輪になって!」
慎「おぉー!ほんとだぁー!みんなでいかだにのるんだよね!」
中「何?何ゆってんの?ボート?」
七色いんこでのワークショップは、全員でいかだに乗ったが、そのいかがだ大きく揺れ、揺れて、揺れて、どうにか体制を整えようとがんばって、がんばったが、結局その中から一人がおっこち、助けようと思ったけれとも、ワニがやってきて、いかだ、慌てて逃げる、というものだった。
その時の吾郎の素敵っぷりは、今も、舞台を見たメンバーたちの心のまぶたに焼き付いている。
でも。
木「いや、そっちじゃなくて」
吾「えぇ・・・?まさかトマトぉ・・・?」
吾郎は心底イヤな顔をした。
もう一つのワークショップはトマトの一生を演じる、というもの。しかもトマトは、その生を失った後、別の野菜に生まれ変わるのだが、そこまでを演じろ、というのだ。
舞台では、本当は刑事の宮沢りえ(ヒロイン)が演じるように言われて、それを吾郎が助けたあげく、爆笑をとるという、一周回ってかっこいい場面。
だと、木村たちは思っていたが、吾郎はそうは思っていないらしく、もうあれはいいや・・・と厭世的だ。
慎「ごろちゃん、すごくカッコよかったのに・・・」
吾「舞台からでも見えたよ、慎吾が大口開けて笑ってるのが」
慎「あそこは笑うシーンでしょう!!泣くシーンなの!?ねぇ!!」
剛「あれ、面白かったよねぇ〜!」

吾郎の演じたトマトの一生は、母なる大地に抱かれていたトマトが、芽を出し、成長し、近くに生えていた可愛いトマトに恋をして、肩を抱き寄せ、チューしたと思ったら、一気に引き倒し!
この一気に引き倒した辺りから、もう木村の腹筋をひくひくさせた大変な場面だったのだが、そのシーンを吾郎は嫌がっている。
本番ならともかく、練習中なんて、何やってんだ俺!という気持ちになったことは数知れない・・・!

木「大丈夫だって、女優キラー。もうおまえにそんなことはさせやしないって」
吾「木村くん・・・!」
木「今日やってもらうのは!」
慎「やってもらうのは!?」
木「ナスの一生だ!」

中「俺、帰る」
木「待て待て待てェ!」
慎「木村くん、俺も・・・」
木「待てっての!誰がナスを食え!つったよ!ナスの一生を演じろっつってんじゃねぇかよ!」
中「大体、何でそんなことしなきゃいけねんだよ!俺は谷のムーミン社の人間じゃねぇっ!」
木・吾・剛・慎「おぉーーーーーー」
4人は拍手した。谷のムーミン社、というのは七色いんこで使われた劇団名だ。
中「おぉーー!!じゃねぇ!ともかく俺はそんなマヌケなことはぜってー!やんねーからなっ!」
木「まぁまぁまぁ。ちょっと中居さん」
さりげに肩を抱き寄せつつ、木村は、中居をテレビの前に座らせた。ちゃんと5つ椅子が用意され、全員で見られるようになっている。
木「赤ちゃんを預かるようになって、赤ちゃんってのは可愛いってことは解ってきたと思うけども、赤ちゃんってのは、動物も可愛いよな?」
中「・・・うん・・・?」
木「ところが、動物のみならず、植物であっても、赤ちゃんは可愛いんだ!」

びしぃ!!
木村がリモコンの再生ボタンを押し、ビデオが始まった。

それは、小さな、小さな種が、地面に植えられ、一生懸命に芽を出す、というドキュメントだった。
白い産毛に覆われた、小さな、柔らかそうな芽。まだ、種のカラをくっつけたままのところもご愛嬌。
そのからが落ち、小さな芽は、小さな双葉に変わっていく。
高速撮影で、小さな双葉から、本葉が生まれていく様子が、手に取るようにわかった。
あぁ、植物も生きているんだ・・・!
一生懸命に・・・!
ベジタリアンだって、命を食べているんだね!?

一同の心に深い感銘が、ナスの双葉以上のスピードで芽生えようとしていた。

場面は変わり、あのナスの芽は、畑に植えられていた。
青い空の下、すくすくと伸びるナス。ナスの成長には強い光が必要なのだ。
そして、紫色の美しい花。中央は黄色く、ヴィトンのタッシリイエローとは逆のコントラストが鮮やかだ。ヴィトンのデザイナーは、あの色調をナスの花からとったに違いないと、全員が信じた。いや、タッシリイエローを知らないものもいるだろうが、取りあえず。
そうして、ようやく姿をあらわす、紫色の宝石。
ナスは黒いのではない。
紫なのだ。
かつて、最も尊い色として、選ばれたものしか身に纏うことを許されなかった、紫色・・・!
そうであれば、最も尊い食材は、ナスなのではないか!

木「どうよ」
ビデオは終わり、木村は落ちついた声で言った。
木「あのナスを、演じてみたいとは思わねぇの?」
あぁ!あの、幼くいたいけな双葉!太陽を信じてすくすくと伸びていく茎!奇跡のように美しい花や、水を含み、みずみずしい葉!
そして、ずっしりと、映像からでも重さすら感じられた、あのナス・・・!
間違いなく、あのへたに触れると、指に穴があくだろう。

すでに、深夜12時を回っているというのに、何かにとりつかれたかのように、ナスを演じてしまったSMAP一同だった。

翌日。

18:30

中「ただいまぁ・・・」
森「おっかえり!そろそろだよ、急いでー」
明るくお帰りをいった森は、中居の様子がおかしいことに気がついた。
菜、じゃなくて、森「あれ?どしたの中居ちゃん。夏バテ?」

中「ううん?いや、・・・夏バテっておめ、早ぇだろ!」
森「あ。そっか。食欲は?」
中「ある、けど・・・」
慎「たっだいまー!まーにあったぁーーー!」
森「お帰り」
慎「あれ?今日、森くんお料理当番じゃなかったっけ」
森「そうだよーん。でも、木村くんも手伝ってくれてんだけどね」
キッチンでは、木村が何やらしていて、吾郎と剛はまだ帰っていない。
中居は、居間の定位置にバックと体を置いた。

吾郎と剛は、それぞれ、18:44、18:50に駆け込んできて、後は料理をテーブルに並べればそれで大丈夫。
森と木村の料理は皿数が多く、テーブルが一杯になったところで。

19:00

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

吾「ん、これ・・・」
慎「あ」
剛「大丈夫・・・?」
そのたくさんのお皿の中に、あげだし豆腐があったのだが、いっしょに、あげだしナスも入っている。
ましてその皿は、比較的中居の近くにあったのだ。
中「これ・・・」
木「ん?あ、うまいナス貰ったから作ってみたんだけど、中居はいいよ、食べなくても」
中「え?」
木「だって、中居ナス嫌いじゃん」
木村は笑って言って、そのお皿を中居から遠ざけた。
木「今日友達がくれたんだけどさ、家でとれて超美味いって言うのに、2本ってどゆことって思ってさぁ〜。だって5人で食うのに、2本ってひどくね?」
中居は、笑いながら言う木村の声に、カチンと来た。

5人て!5人って5人って、俺以外、5人ってこと!?
SMAPは6人じゃん!6人って決まりじゃん!!俺ら6人でSMAPじゃん!!

中「貸せ!」
中居は身を乗り出し、そのあげだしナスの入ったお皿を掴む。
慎「中居くんっ?」
中「こんなもん、俺が食いきってやるぅー!」
勢いだった。
昨日の、ビデオを見て。あぁ、ナスってこんなに可愛いんだ・・・って思ったところだった。ナスを演じるなんてバカバカしいって思ったけど、こんなに一生懸命生きようとしてたんだ、と解った。
そんなナスに対して、黒いものは食べ物じゃないなんてゆって、形が変だとかゆって、俺って、俺って!

俺ってサイテーだぁーーー!!!

ぱくっ!!!!

中「・・・・・・・あれ」
剛「・・・だ、大丈夫・・・?」
慎「出す・・・?」

ごっくん

中「・・・・・・・これ、ナス?」
木「ナスだよ」
中「あれぇ?」
ぱく、もぐもぐ、ごっくん。
中「んーー??」
眉間にシワを寄せ、首を傾げながら、結局中居はその器に入っていたあげだしナスを全部食べてしまった。
森「あああ!そんな全部食べちゃわなくても!食べたかったのに!」
木「うまい?」
ニヤリと笑った木村に、してやれれた、と思った中居は。

中「ナスはこんなにうまくない。だから、これはナスじゃない」

と、タール1mgのタバコのCMのようなことを言い、器を戻す。
しかし、もうすでに中居のおなかの中には、あの可愛い双葉から育ったナスが、しっかり入っているのだ。
木村拓哉、やるといったらやる男だった。

(原案 by T様。どうもありがとうございましたー!こんな感じになりましたが・・・。ど、どんなもんでしょうねぃ・・・)


96日目

ガッシャーン!!!

……まただわ。さっきから台所からものすごい音がしてるけど、今度は何をひっくり返したのかしら。
あ、こんにちは。お久し振り、わたし、稲垣家の猫です。名前……まだ出さない方が良いのかしらねえ。
今日は、やっとドラマの撮りが終ったらしい中居くんが夕飯を作ってます。他の人たちは中居くんと入れ替わりに忙しくなるんですって。うちのダーも、やっと舞台というのが終ったと思ったら、今度はドラマの撮影に入るっていうの。
はっ、それで思い出したわ。確か、うちのダーの舞台を見にわざわざ九州だかどこだかから東京に出てきたっていうのに、共演していた女優がかわいいとか言って帰っていった女がいたらしいわね。全く見る目がないんだから。
ま、いいわ、そんな人のことは放っておいて、とにかく中居くんよ。
最近、なんか中居くんが変なの。今日もため息をついてたかと思うと、突然、よーっし!なんて気合をいれて、台所へ向かったの。しばらく冷蔵庫をがさがさしていたかと思うと、取り出したのは、はんぺん。それから、そのはんぺんを見つめてまたぼーっとしてた。あんまりぼーっとしてるものだから、私が足元に擦り寄っていくと、すっごくびっくりして、時計を見てやばいって顔になって、慌ててシンクへと向かったの。
それからボールを取り出そうとして失敗し、卵を割ろうとして床にぶちまけ、包丁を取り出して人差し指を切ったところで私は台所を出て行った。だってね、とても見ちゃいられないわ。しかも中居くん、時折ため息をついたりなんかして、遠い目をするんだもの。
なんだか寂しそうで、とても見てられなかった。
ん?寂しい?寂しいのかしら。
もう一度台所を覗いてみる。テーブルの上で何か作ってる中居くんは、またぼーっとしてるみたい。魂がここにあらず、って感じなの。そーっと近寄って足元にじゃれ付いてみると、思い出したように私を見てくれた。
「ごめんなー、お前らにもなんか作ってやらなきゃな。ちょっと待ってろよ」
特におなかがすいてる訳じゃなかったけど、中居くんがとりあえず、て言って牛乳を出してくれたから、ありがたくもらうことにした。けれど。
「もうすぐ終わりなんだよな……。俺、大変だぜ。今までみんながいろいろ作ってくれたからさあ、舌肥えちゃったし。これからは一人で作んなきゃいけないんだよなあ……」
珍しく私の頭なんか撫でて、中居くんが小さな声でこんなこと言うから、私までとても寂しくなった。そう、中居くんは寂しいんだ。
以前うちのダーが言ってたっけ。『中居くんはSMAPが大好きだからね』って。そのときは良くわかんなかったけど、中居くんはみんなと今まで一緒にご飯を食べるって、ただそれだけがすごく嬉しかったんだ。
私がにゃーってなくと、中居くんは私を見て笑ってくれたけど、その目はやっぱり寂しそうで、私じゃなんにもしてあげられなくってちょっと悲しくなった。……ダーリン、浮気じゃないからね。

「「「「「「いただきまーす」」」」」」

7時前になるとバタバタと他の人たちも帰ってきて、今日もまたみんなでいただきますをした。
中居くんが作った料理を見てみんなは、これ食えるのか?とか、料理ってのは見た目も大事なんだよね、とか、でもだいぶうまくなったじゃん、とか、好きなことをいっていたけれど、中居くんは文句を言いながらも嬉しそうだった。
私はその光景を見ながら、中居くんのこんな笑顔がまたずーっと見られますように、なんて、心の中で普段は特に信じてもいない神様にお願いした。

(byひろひろ様。どうもありがとうございましたーーー!お嬢さんもお疲れ様(笑)!)


97日目

こんにちは。木村ボニータです。皆様いかがお過ごしですか?ボニは元気です。
ボニは元気なんですけど、最近は中居くんが変なんです。稲垣さんちのお姉さん方も言ってたんだけど、中居くんは最近毎日、カレンダーを見てため息をついてます。それも一人でいるときに。他の人がいるときには、いつものように笑っているのですけれど。
最近ドラマの撮影が終わって、前よりも家にいることが多いせいか、中居くんは一人でぼーっとしていることが多くなりました。他の人たちもなんだか急がしそうで、なかなか家に帰ってこないんです。うちのパパは映画のことで打ち合わせだとか言ってるし、森くんは今年は調子がよくっていろいろと忙しいとか言ってるし、吾郎くんも慎吾くんも剛くんももうドラマの撮影が始まっちゃったみたいで、もしかしたら誰も中居くんがこんな風に寂しそうにしていることに気づいていないかもしれません。
今日も中居くんは5時ごろに帰ってきて、まず最初にカレンダーの見えるところに壁にもたれて座って、煙草をふかしてぼーっとしていました。
……なんかやだなあ、こんな中居くん。中居くんにはいっつも笑っていてほしいです。中居くんはSMAPの太陽だからって、前に誰かがどこかで言ってませんでしたっけ。

「ただいまー」
あーっ!これはパパの声です!パパ、パパ、おかえりなさーい!
ボニが思いっきり尻尾を振って飛びつくと、パパはくすぐったそうに目をしかめて私の頭を撫でてくれました。ボニもお返しにパパの顔を舐めて挨拶のフルコースがすむと、パパの後についてリビングにいったんですけど。
「……中居?」
中居くんはすっかり短くなった煙草をくわえてさっきとおんなじ姿勢で、少し薄暗くなってきた部屋で座ってました。
「どうかしたの?」
パパは中居くんの横に座って、ボニはパパの後ろに座って、じっと中居くんを見つめました。
「……なんでもないよ」
「嘘つけ、なんでもないって顔かよ、それが」
そうなの、パパ。中居くん、最近ずっとそんな顔してるの。他の人の前では見せないけど。でもパパがそう言うと、中居くんはちょっと嫌そうに顔をしかめて、お前ちょっとは騙されろよ、って言いました。
どうして?どうして騙された方がいいのかしら。ボニにはわからないです。これがわかんないって、ボニはまだ子供ってことかしら?
それからパパは中居くんを連れて、一緒に台所に行って夕飯の準備をしました。最初は中居くんはずっとあの調子だったけど、うちのパパと話をしてるうちにだんだん元気になってきました。ボニはなんだか取り残された見たいな気がして面白くなかったけど、稲垣さんちのお姉さんが、止めるので邪魔はしませんでした。今日は元気がないから中居くんに譲るけど、やっぱりパパはボニのものなんだからね!

「「「「「「いただきまーす」」」」」」

みんなが帰ってきていただきますをする頃には、中居くんはすっかり元気になったみたい。でもパパがいつも言ってるけど、中居くんの笑顔には要注意なんですって。中居くんの笑顔に騙されて、とんでもない目に合った人がいっぱいいるらしいです。
「あっ、そうだ!」
中居くんがにっこり笑って、うちのパパを振り向きました。
「さっきさあ、木村言ったじゃん。100日チャレンジが終っても大丈夫だって。寂しがる必要なんかないって」
「え?中居くん寂しかったの?」
「ちがうよ、てめー。木村だよ、そんなバカなこと言ったの。今更俺が寂しがる訳ねえべ」
ああ、こういうことなのかしら。中居くん、にこにこ笑ってて、帰ってきたときみたいな寂しそうな感じは全然ないんです。ボニにわかるくらい、あんなに寂しそうだったのに。それから中居くんは、もう一度パパに笑いかけました。
「じゃさ、100日チャレンジ終った後のこと、ちゃんと考えてるんだろ?」
「は?」
パパ……その顔はちょっと……あんまりかっこよくないんですけど。
「だからさ、今やってるのは、午後7時に全員揃っていただきますをする100日チャレンジじゃん?これが終ったら、どうすんの?」
「そうだよ、どうすんの?」
「え?なになに?また何かするの?」
「ねえ木村くん、何するの?」
「木村くん、もったいぶってないで教えてよ」
パパがすっごく情けなさそうな顔をして中居くんを見ると、中居くんは駄目押しのように最高級の笑顔を向けて言いました。
「大丈夫って言ったよな」
「……言ったけど……」
「木村、頼りにしてるから。よろしくな」

パパ…………何となく、ボニにもわかったような気がします。中居くんの笑顔には要注意なんですね……。

(byひろひろ様。おぉっと!どうなるボニのパパ!メンバーの期待を一心に背負い、どうやってくれるんだ(笑)!!)


98日目

吾「もうそろそろだね」
木「そうだな・・・。もうそんな時期か」
中「うやむやにはできねぇよな・・・」
100日チャレンジも、98日目。この日も、6人はなんなく7時に集まり、7時に夕食を取り、食べ終えた時間、7時22分。
慎「そうだよね・・・」
今日はまだ酒も入っておらず、6人はまったくのシラフの状態だ。
森「え、何がぁ?」
中「何がじゃねぇだろ、何がじゃ!」
相変わらずノンキな森に、中居はすっくと立ちあがる。
中「100万をどうするか!だよ!」

慎「旅行旅行旅行ハワイハワイハワイハワイーーーーー」
剛「え!ジーンズ買おうよ!なんならみんなでさ!揃いでさ!」
中「森とおまえとで揃えられねぇだろ!いいから分けようぜー、分けようぜー」
吾「だって、分けたって、割り切れないんだよ、6人だから」
木「あれ、あるじゃん。罰金。あれ入れたら?」
中「そーだ!罰金!あれ入れたらいけるべ!」
森「いけるったって、一人20万にもならないじゃん」
中・木・吾・剛・慎「「「「「おぉーーーーーー・・・・!」」」」」
森「それくらいの割り算ができたくらいで驚かないでくれるかなぁ!」

吾「・・・決まんないね・・・」
そう。もう彼らは、なんどもこの話をしてきた。100万GETしたらどうするか。
中「だからさぁ、俺ら、どーせ仕事とかで都合合わないんだし、旅行とかは無理なんだって!」
慎「なんでよー!なんでよー!今だってやれてんじゃーん!」
剛「でも、海外は無理だってぇ」
森「そうだよ、俺そんな休めないし」
慎「だってつよぽん!ハワイだよ!?ビンテージジーンズの店とかあんだよ!ビンテージアロハだって!俺案内するよ!」
剛「うそ!それは行きたいかも・・・」
吾「丸めこまれないでよっ!」
木「吾郎ちゃんだって、あれだよー?ハワイ行っても、アンニュイできるよー?」
吾「別にアンニュイしてる訳じゃないの、俺は」
中「ハワイいいけどさー!だって行けねーじゃーん!常磐ハワイアンセンターとかは?」
木「意味ねーーーー!!」
中「ちげーよ!だから、一緒に旅行なんて、物理的に無理だっつってんだよ!だったら、それぞれ自分の好きに使えた方がいいじゃねぇかよ!」
慎「うわー!つめたー!俺らSMAPじゃーん!仲良くしよーよぉー!」
中「だってよー、吾郎とかと行きたくねぇよぉ〜」
吾「なんでっ?」
中「おまえら想像してみろよ!吾郎だぞ!?吾郎と一緒の部屋になったらどーすんだよ!」
木「いや、今も雑魚寝してる時あるし・・・」
中「みんないるんならいいじゃん!ツインの部屋で二人とかになったらどーすんだ!?」
吾「そん時は、占いしたげるよ・・・・・・ふふ・・・・・・・」
慎「やだーーーーーー!!!!」
中「な?だから、全員での旅行は却下だ、却下」
森「はいっ!」
中「はい・・・、森くん・・・」
森「俺の車券を買う!」
中「100万で一点買いできるかーーー!!」
木「ちょっと男のロマンかも・・・」
慎「はいっ!!はいはいっ!」
中「・・・なんか言うのかよ・・・・・・」
慎「車を買う!SMAPカー!」
中「100万でぇ!?」
吾「買えないでしょお!」
慎「君ら、バカ!?100万あったら車なんか買えるに決まってんじゃん!ねぇ、木村くんっ」
木「買える、買える。中古車なんかラクショー。いいね、車」
慎「オープンとかで!」
剛「それは吾郎ちゃんがヤなんじゃない?」
木「なんでよ、吾郎は、ボロであればあるほどいいんだよな?」
吾「クラシックカーとボロ車の間には、男と女の間以上に深くて暗い溝があんだよね」
中「うわっ!ムカつくいい方っ!」
森「中居くん、別々がいいって、中居くん、なんか欲しいもんあんの?」
中「え。えーと。・・・光熱費とか」
木「水道代とか」
慎「家賃とか」
木「なんで生活費よ!!」
慎「あーーー!!やだやだ!中居くんの貧乏ネタなんて、もうイヤミにしかなんねーのっ!」
中「バカやろおー!!じゃあ、あれかぁ!俺は1万円札に火ぃつけて煙草を吸うほどの金持ちかー!」
吾「それは金持ちじゃなくて、バカでしょ?」

むぅ・・・。
事態は硬直した。
この話になるたびに、常に硬直している。
どうしても、100万円の使い道が決まらない。

中「・・・今日こそは決めるぞ」
木「後二日だしな」
言いながら木村は立ちあがる。
中「どこ行くんだ?」
木「長い話し合いだと、喉が乾くだろ?」

全員の目が、キラリン☆と輝いた。木村の目もキラキラリン☆と輝く。
木「まぁ、たいしたもんじゃないんだけど・・・」
ドン!木村がリュックから手品のように取り出し、テーブルに置いたそれは!
中「あぁーーーー!!!ミニ樽ホームサーバーーーー!!!」
木「はっはっはっ!」
慎「すげー!!どしたの!?」
森「うそぉ!なんで!?中居くんがホップスやってんのに、スーパードライとか飲んだのっ?」
木「いや、飲んでねーけど」
中「貰ったんだろ!な!コネだろ!」
木「買った」
剛「買ったってぇ?」
木「ネットで売ってるヤツいたから、買っちゃったよ俺。面白いな、インターネットオークションって」
中「おまえ、また変なもんにはまんなよー?あー!でもー!ジョッキジョッキ!コレやりてー!」
木村が冷蔵庫から冷えたジョッキを出してきて、森がおつまみ!と手早く作る。中居は、ホームサーバーでご機嫌だ。
慎「俺もやるー、俺もー!」
剛「俺もやりたい!」
中「おまえらビストロでやってんだからいいじゃん!」
慎「ビストロにミニ樽ホームサーバーなんかないもーん!」
木「おまえら子供かー!違うだろー!話すんだろー!」
森「あー、ジンギスカンとかやりたいねぇ」
吾「ビールがあってね、ジンギスカン。いいねぇ。北海道行く?」
木「北海道日帰り食い倒れってのは?それくらいならいけるんじゃねぇ?あのー、逆日帰りとか」
中「何それ」
剛「零れてる零れてる!」
木「最終の飛行機で出て、食うだけ食って、朝一便で帰る」
森「あー、おもしろーい!」
慎「待って、待って、それだったらねぇ」
慎吾が携帯を操作して、飛行機の時間を調べる。
慎「そうだなー、一番遅い便が、ANAの9時発。そんで、帰りで早いのが、んー?3つあんのかな。7時50分で、東京9時20分着ってのがあんね。半日留守だけじゃん」
森「行けるねぇ、それなら」
中「北海道食い倒れかぁ・・・」
木「それなら、100万あったら釣りでるだろ」
慎「たのしそー・・・!ちょっとめちゃイケみたいー!」
剛「札幌って、夜遅くまで開いてそうだもんね。すすきのとか?」
吾「こないだ、ロケで行ったけど、いいとこだよね、北海道って。俺また行きたいなぁ。プライベートで」
森「何でも美味いしねーー」

ほのぼの、とした空気が流れる。
全員がビールを飲み、つまみを食べ、和やかな雰囲気で夜がふける。
犬も、猫たちも、そう思ったのだが。

中「で、100万どーする?」
木「分けたってたいした額にはなんねーだろ?」
中「うわ!!10万越えるのにたいしたことねーとかゆってる!」
剛「だけど、でも欲しいもんとかみんな違うんだし、分けたらいいんじゃない!?」
吾「そうだよねぇ・・・。森くんと揃いのジーンズったって、俺たちみんな裾切らなきゃいけないしねぇ」
森「俺、長さ足りなかったりして」
中「ヤなやつだなー!おまえー!やっぱおまえとも旅行なんか行かないっ!」
慎「ビールもーないのぉー!?」

もう残り二日。
しかし100万の行方が決まることはまだまだ無さそうだ。

(by元木。残り二日!ふふふ・・・!ふふふふ(笑)!!!!!!)


99日目

明日がずっと来なければいいのに!!!
そんなことを思っちゃうのは、俺だけなんだろうか?
100日チャレンジの終了を明日に控えて、俺は思いっきり感傷的な気分でいた。

そう言えば色んなことがあったよねぇ。
お花見しながら食べたこともあったし、ドラマのロケ現場にみんなで押しかけたこともあった。コンサートのツアー中なんて、森くん無理してコンサート会場に紛れ込んだこともあったし、中居くんの預かってた赤ちゃんと一緒に食べたこともあったっけ。
だけど、どんなときも、本当に楽しかったんだぁ。
何だかとっても淋しい気分になってしまう。あーぁ、例えば、俺が明日バックれちゃって、チャレンジに失敗して、そしたら、みんな「もう一度やろう!!」って言わないかなぁ?もう一度100日間。きっとまた、沢山の思い出ができる。その思い出も絶対に楽しいと思うんだけどなぁ。
不穏な考えにいきつこうとしていた俺を引き戻したのは、中居くんの怒鳴り声だった。
「何?ロケの時間が延びてるって?待てよ!吾郎も時間が延びて都合がつきにくいって言ってたぞ。今おまえどこなの?え?スタジオ?」
携帯を切ると、中居くんは側にいる木村くんと額を付き合わすようにして相談をはじめた。そして、
「慎吾、森に連絡!!剛のスタジオの方にいくようにって!」
と俺に声をかけ、ほぼ出来上がっていた夕飯のおかずを器に詰め始めた。
木村くんはと言うと、キーを取り出すと、
「じゃあ、とにかく吾郎を連れてスタジオの方に向かうから!!」
と言うが早いか部屋を飛び出していた。
「何してんだよ、慎吾!ぼっとしてねぇで、連絡ついたら手伝えっ!!」
中居くんに急かされて、俺も慌てておかずを器に詰めていった。全部を詰めるとそれを抱えて、中居くんの車に。
「とばすぞ」
中居くんの運転は・・・・、さすがはヤンキーあがり・・・・とだけしか、俺には言えません。

スタジオの控え室にはすでに森くんが待っていて、中居くんは俺たちに
「準備しとけ」
と言い置いて、つよぽんを連れ出しに向かった。
しばらくして吾郎ちゃんが、木村くんに連れられて駆け込んできた。・・・・髪を振り乱して走る吾郎ちゃんというのを俺は久しぶりに見たような気がする(すぐに手櫛で整えていたけれどね)そして、どう現場を説得したものか、つよぽんを連れて中居くんが滑り込む

ジャスト7時!!

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

・・・・やっぱり明日バックれるなんて無理かなぁ、と俺は不穏な考えを引っ込めることにした。だって、やっぱりみんなで一つのことに向かってるのって、目的が馬鹿馬鹿しければ馬鹿馬鹿しいほど楽しいし・・・・。
明日は、どんなことが起こるんだろう?

(byJun.様。ありがとうございましたー!えー、100日チャレンジも残すところ、後1日!後1日!何が起こるかおたのしみーー!!)


99.5日目

D「・・・まずいな・・・」
SMAP100日チャレンジ、
午後7時に全員揃っていただきます言えたら100万円などというおっそろしい企画のディレクターDはとカメラマンC、AD、Aに向かいつぶやいた。
3人は、薄暗い部屋の片隅で、小さなモニターを覗きこんでいる。
C「まずいですね・・・」
A「このままじゃあ、100日、達成しちゃいますね」
ADは無邪気だったが、ディレクターは憂鬱な顔になる。
D「100万かぁー・・・!」
A「え?100万なんて、別に・・・」
きょとん?とADは首を傾げた。
A「番組予算から考えたら、100万なんてなんでもないでしょう?」
C「バカか!おまえは!」
A「えぇ〜っっ!?」
C「すいません!ディレクター!俺が・・・!俺の教育がなってなかったんです!俺、俺・・・!」
D「いいよ」
C「いえ!俺・・・!俺、頭丸めてきますっ!」
A「えーーー!!!Cさぁーーーん!!」
ばびゅーん!!
D「し、C・・・」
A「ほ、ほんとにいっちゃったんですかね・・・」

もちろん、自衛隊上がりのカメラマンは、そんな失礼を許せない。
12分後に現れたCの頭は、見事な2分刈に姿を変えていた。

D「C・・・」
A「C、Cさん・・・」
C「謝れ」
A「えっ?す、すいま・・・」
C「俺にじゃない!ディレクターにだ!」
D「C、いいから・・・」
A「すっ!すいませんでしたっ!」
訳も解らず謝り、訳も解らず謝られるAとD。Cは、なおも辛い表情で、深く最敬礼した後、カメラを操作した。モニターの映像が消える。
C「どうします・・・」
D「うん・・・」
謝らされた理由が今も解らないAは、持ち前の無邪気さでしつこく尋ねる。
A「あの。だから・・・。100日チャレンジは、やっぱ成功しなきゃ・・・」
C「なんでだ」
A「な、何でって・・・。だって、番組的に・・・」
D「バカだな、おまえは・・・」
深いため息とともに、Dは言った。
A「な、何でですか!そりゃ俺は、親のコネでどうにかこうにか2流製作会社にもぐり込んだ新米ADですけど!でも、番組的に美味しいかどうかくらい解りますよ!」
C「だからおまえはバカだって言うんだ!」
2流製作会社の2年先輩にあたるカメラマンCは、言い放った。
は・・・っ!
Aは、はっ!とした。
美味しいといか、美味しくないとかじゃあないのか・・・!
午後7時に揃って晩御飯食べられたら100万円。
これって、ドキュメンタリーなんだ!
成功する、しない、じゃなく、あるものを、あるがままに捕え、映し、放送する。
つまり、失敗したとしても、それが真実であるなら・・・!
それが!それこそがテレビマン魂なんですね!
A「俺、俺間違ってました!!番組は、そんな作為で作るものじゃなくって、つまり、あるものを、あるがままの形で・・・!」

ばっしーーーーん!!!

後頭部を力いっぱい引っぱたかれたAは、そのままの勢いで前方にふっとび、モニターにつっこんでいく。
A「何すんですかーーー!!!」
C「なんだ番組って!」
A「何って!何いってんすか!!俺は、大学二浪したあげく、アート系専門学校中退のバカやろ様ですけど、番組名くらい知ってますよ!!ウンナンのこれができたら百万円、炎のチャレンジャー!!!!
はっ!!!」

D「そうだ」
C「ようやく解ったか、A」
A「炎チャレは・・・・・・・・、もう・・・・・・・・・・、ない・・・・・・・!」

がっくりと、Aは肩を落とした。
膝もついた。

D「今、あの時間に流れているのは、炎チャレじゃなく、ココリコA級伝説だ」
A「じゃ、じゃあ!!Cさんが毎日撮影してるのはなんなんです!?これ・・・!この映像は!!この映像はどうなってしまうんです!」
C「どうもならないさ・・・!」
二分刈りCの、遠くを見ながらの小さなつぶやきだった。
A「そんな!Dさん!嘘でしょう!?これが・・・!こんな貴重な映像が流れないなんて!そんな、そんなバカなこと!」
D「本当だ」
A「じゃあ、なんで!?なんでSMAPは・・・!?」
D「・・・3日取れるか」
A「は?」
D「この事情を説明するには、最低でもそれくらいの時間がないと・・・。

それは、およそ100日前、テレビ朝日の廊下で中居とDがすれ違った時から始まった。
中「あ。こんちは」
D「あぁ、中居くん」
中「ねぇねぇ、Dさんって、炎チャレのディレクターもやってるんでしょー?」
D「そうそう。何、たまには見てくれてんの?」
中「見てますよー。俺、あれ好きだな。7時に家族揃っていただきます言えたら100万円ってやつ」
D「SMAPでやったらすごいだろうねー。SMAPが全員夜7時に揃っていただきます言えたらさ」
中「え!それ、俺らがやったら、100万くれるんです?」
D「あげるあげる。当たり前じゃないか(笑)」

A「で?」
C「そして、SMAPの挑戦が始まったんだ」
A「おかしいじゃないですかぁ!!」
D「まさか、森くんまでひっぱりだしてくるとはな・・・」
A「だから!口約束なんでしょう!?なんで、そんなことで100万の心配してんですか!」
D・C「「バカヤローーーーーー!!!!!」」
D&C、ドルチェ&ガッバーナスペシャル!!!
Aの体は宙に華麗に舞い、そして、失速、墜落した。

A「・・・・・・イダダダ・・・・・」
C「おまえは!!おまえは何年業界にいるんだ!!」
A「え。あの、7ヶ月・・・」
D「C、無理だ・・・」
C「7ヶ月!7ヶ月もいれば解るはずですよ!」
二分刈りのCは涙目でDを振り仰いだ。
C「SMAPが、SMAPがどれだけ本気で生きているか!」
A「はっ!!」

Aは、はっ!とした。
そう。SMAPは・・・!
SMAPは・・・!!!!

A「常に本気なんですね!!!」
D「そうだ!!!」
C「SMAPは!!!!」
D&C&A「常に本気!!!!」

A「じゃ、じゃあ・・・!」
C「そうさ!」
D「100日達成されたら、100万は払わないといけないんだ!!」
C「しかも!!」
A「番組じゃない以上!!!」
D「自腹だぁーーーー!!!!!!」
A「きゃーーーーーー!!!!!!!」
Aは涙目になった。
A「どうするんですか!どうするんですか!Dさんっ!!」
D「ふ・・・」
A「遊びじゃないですか!SMAPさんだって、SMAPさんだって言えば解ってくれるんじゃないですか!」
C「バカやろぉーーー!!!」
ギャラクティカ・1カメファントム!
A「ううぅっ!」
D「言っただろう?SMAPは常に本気だ」
A「で、でも、こういっちゃあなんですが、SMAPさんにとったら100万なんて・・・!」
C「違う!金額の問題じゃない!」
D「そう。SMAPにとって、賞品のついている挑戦というのは、絶対にクリアすべきものなんだ・・・」
C「たとえその賞品が、アメちゃんつかみ取りであったとしても・・・」
A「あ。Cさん、関西だったんですね」
C「SMAPさんにとっては、当然受け取るべき、正当な報酬なのだ!」
Cは、Aの言葉には耳も貸さず、Cは高らかに言った。
D「その通り。やるといったからには、絶対にやる。それが!それこそが!!」
D&C「SMAP魂だ!!」
A「SMAP魂!!」
D「SMAP魂!!」
C&A「SMAP魂!!」
D「SMAP魂!!」
C&A「SMAP魂!!」

狭い空間は、SMAP魂、という言葉で埋め尽くされた。

A「で・・・、ど、どうしたらいいんですか・・・」
ぜいぜい言いながら、Aは尋ねた。
A「あ、後、1日じゃないですか・・・!」
D「・・・妨害する」
C「Dさん!」
D「これが、明日のSMAPの予定だ!」
A「えーー!!そんな機密書類をどこからぁーーーー!!!!」

ディレクターD、カメラマンC、AD、Aは書類を覗き込んだ。

どうなる!SMAP100日チャレンジ100日目!!


100日目その1

その日の朝は、晴れ晴れといい天気だった。
最初に目を覚ましたのは吾郎で、起きあがってカーテンをあけ、そこらに転がっているメンバーたちを眺める。

・・・醜い・・・。

これが日本のトップアイドルの寝姿だろうか。
今はもう、どっきりカメラの寝起きコーナーがなくてよかったなー、と心から思う吾郎だ。
そんなに狭い和室でもないのに、SMAP残り5人に、犬と猫がまざり、ハムスターのように一塊になって、苦しそうに眠っている。
その中でも、山の一番上で、箱座りの格好で寝ている自分の可愛い猫たちを抱き上げ、その場から離した。
猫たちが乗っていたのは、森の腹の上。腹の上に重みがあるため、うーんうーんと半目で苦しんでいた森は、猫がいなくなったことに気づかず、なおも苦しむ。
その森の長い足は、慎吾のわき腹にまちがいなくヒットし、めり込んでいた。
『慎吾・・・。わき腹がぷよぷよしているばっかりに・・・・』
そっと目頭を押さえる吾郎。
慎吾は部屋の角に追い込まれている。わき腹を押され、くの字型で壁にくっつきそうになりながら寝ている慎吾は当然ながら苦しそうだ。
しかし、その慎吾に抱きかかえられているボニータほどではないかもしれない。
慎吾に抱きかかえられている黒い犬、ボニータは、どうにか逃れたいように体を動かしているのだが、その動いている尻尾が、剛の顔面をずーっとくすぐっている。
剛は、よほど深く眠っているのか、ずーーーとくすぐられていることに気づかず、ほとんど動かずに寝ているが、時折、鼻をかいていたりするのが、ノンキすぎて笑える。
くく、と猫を抱いたまま笑う。
その剛のすねを枕にしているのが木村で、仰向けのまま、がっくりと首を後ろにおり、ぱっかり口が開いている。
昔、中居や、慎吾が、その口に粒ガムを入れたと言っていたけれど、その誘惑は、確かに吾郎をも誘っていた。
なんか入れたい・・・。
何かないかな。
猫の手なんかいれたら、猫が可哀想かな。
と、キョロキョロしながらかなり失礼なことを考えていたら。

「いでっ」

木村の声がした。
え、まだ何もいれてないけど!
と驚いて木村の方を見ると、木村の顔面を、中居の手が直撃していた。しかも裏拳。つまり、「何ゆーてんねん!」と顔面に思いっきり突込みをいれられた状態。
その中居は、剛の足を枕に眠っている。
剛は痛くないんだろうか・・・。すねに木村の頭、足に中居の頭がのっかってるんだけど・・・。
ついでに、中居の足は、森の腕にも乗っかっていて、ぐるっと一周。全員の体が訳の解らない循環をなし、一つの生き物のようになっている。
そして、それぞれが少し醜い。
自分だけはすかさずその場から離れている吾郎は、淡々とそれを観察した。
本当は吾郎も、大切な髪がえらいことになっているのだが、気づいていない今は、それでも幸せだ。

今日が100日目。
昨日の夜も、だから、100万をどうするんだ!ということで、全員がエキサイトした。
全員がエキサイトして、アルコールが飛びまわり、そしてそのままその場に倒れて寝た。それでもまだ結論は出ていない。
その100万が手に入るのかどうか。
そして、手に入った100万を、どうするのか。
今日の7時には、何らかの結果が出るんだ。

「そう考えると、大変な朝なのかもしれないな・・・」
夏の日は長いから、時間は、やっと6時。
そろそろ起きなくてはいけないメンバーもいる。
カレンダーには、全員の殴り書きのメモがあって、今朝早いのは、慎吾と、剛。そして吾郎自身。
「ん・・・?」
名前を時間を読み取った吾郎は、カレンダーに顔を近づける。
「俺と、剛と、慎吾はドラマで・・・、森くんはレースで、中居くんが取材で、木村くんがラジオ・・・」
最終日なのに、全員に予定がある。木村にもある、というのが妙にひっかかった。
しかもスタート時間がまちまち・・・。
何かイヤな予感がした。
せっかくの晴天が、曇っていくような気分。

「くるしいぃっ!」

ずっと中居の裏拳で、鼻と口を塞がれていたらしい木村がようやく起きあがった。
「なんだこりゃ!?」
「なんだこりゃって、SMAP!実は一人だった!って感じじゃない?」
「ほんとだよー・・・ってことは、おまえはやっぱSMAPじゃないんだなぁー」
こった首をバキバキ言わせながら、木村は起きあがる。
「うわー・・・慎吾、苦しくねぇのかな」
木村は、なおも、森の足で押しやられている慎吾から、どうにか愛犬を助け出そうとする。
あ。パパ!助けてぇ!と、ボニも暴れるが、慎吾の腕の力も半端じゃない。
「ど、どーしてぇんだ、こいつ!」
たすけてぇ〜!
どうにかこうにか、ボニータを助け出し、よしよししつつ、朝の準備でもするかって感じになった木村は、ん?と吾郎の方に振り帰った。
「何。おまえどした?」
「・・・木村くん、今日ラジオ」
「ん?あぁ、そうだけど」
「中居くんも取材があって、俺たちは、ドラマ。森くん、レース」
「うん。んなこと、今までだって普通にあったじゃん」
木村の言葉を聞きながら、吾郎はじっと見つめ返す。
「でも、なんか・・・」
「なーに心配してんだよ」
ニっと木村が笑う。
「俺ら誰だと思ってんの」
軽い口調が続く。
SMAPだぜ、SMAP〜♪
適当なメロディーを口ずさみながら、洗面台に消えていく後ろ姿。
最近、やたらと鍛えられた腕や、背中の筋肉を見ていると、あぁ、そりゃ、SMAPだもんね、君は。なんて吾郎は思った。
いや、自分もSMAPだけど。
ルールをワザと難しくするのが好きで、言われてもないのに、勝手にハードルを上げたりして、何度も失敗したりする。
ということは、こうやって最終日に全員にバラバラの仕事がある、というのは、むしろ望むところなんだろうか。

そう思うと、やっぱり空は青く、気持ちよく、これはもう100日日和としかいいようなない気がしてくるのだ。

「吾郎!ぼけっとしてねーで、その物体起こせ!」
「ぼけっとなんかしてないよ!」
「物体ってなんだーーー・・・それーーー・・・」
物体その1、中居正広が、なんだ、なんだ、と剛のすねに、後頭部をぶつけ、飛び起こさせる。
「いったー!何考えてんだよ!中居くんっ!」
「いってー!なんで、こんなとこで寝てんだよ!俺!」
すねはもちろん激痛だろうが、後頭部にもそれなりの痛みがあるようで、中居も起き、腕を圧迫された森が起き、ようやく解放された慎吾はまだ寝ている。
「ドラマ班!時間ねーんだろ!」
「そーだよ、ドラマはーん、って、俺いつになったらドラマ班に入れんだよっ!」
バタバタと朝の準備が進む。吾郎と剛は、朝ご飯まで食べられたけど、慎吾は、ギリギリまで寝ていてとっとと出てけ!と蹴り出された。森もレース場に急ぎ、中居はもう一眠りし、木村は朝食の片づけをする。
後2時間ほどで中居がこの部屋を出て、最後に出るのが木村だ。

中居を送りだし、最後に部屋を出た木村は。
絶対に、今晩7時。
この部屋でいただきますを言ってやる。
鍵を回しながら、強く誓った。


100日目その2

その日、各ドラマは幸いにも都内でのロケ、およびスタジオでの撮影だった。
「よかった・・・静岡じゃなくって・・・」
ようやく目覚めた慎吾は、スタジオの片隅でつぶやく。
「何がっ?」
「あ。山ちゃんだ。おっはー」
「おはー」
それぞれのスタイルで挨拶をし、慎吾は口を開く。
「なんか、毛野さんいると、なんでもOKって感じだよね」
「は?」
「困った時には助けてくださいね、毛野さんっ」
なんだなんだ??と不思議そう山ちゃんに、にっこり!と笑いかけ、これで安心!と思う慎吾だった。
・・・根拠はない。

「いたっ」
「大丈夫〜?」
ランチ休憩で、共演者(もちろん女優)にお茶を持ってきてあげようと立ちあがっていた吾郎は、何もない道路でけっつまずいて、何歩か前にいってしまった。
「なぁにやってんの〜?」
ちょっと低音できゃらきゃら笑う瀬戸朝香に、はは、と笑いかえし、そして、足元を見て表情を引き締めた。
・・・靴ひもが切れている。
これで自分がプリマなら、ジェラシーからの嫌がらせをされているの!?と思うところだが、彼はプリマではない。
そのまま、じぃーーっと靴を眺めている目の端を、黒猫まで通っていった。
・・・・・・縁起でもないがダブルでやってきた・・・!
何分、撮影しているドラマがドラマだ。
朝に引き続きどんよりしそうになった吾郎だったが、はっ!と目が覚めた。
悪い方に自分で入っていってどうする!ひらひらと壁に止まった蝶でさえ、ピンを押しのけ、再び飛びたつことは自由なんだから・・・!
よし!と心を建てなおした吾郎は、そうそう、お茶を、と進行方向を変えようとする。そこへ。
「やだぁ、吾郎ちゃんのお箸、なんで折れてるのぉ!?」
ナチュラルGショーーック!
今日、何かあるとしたら、俺か・・・!?吾郎は、困り果てた綾瀬ゴロウの顔で、天を仰いだ。

そして困っているのは、草g剛も同じだった。
「なぁにやってんだよぉぉぉぉーーー!!!」
「花村大介ですっ!」
「花村大介じゃねぇよぉぉぉぉぉーーー!!!」
「いやね。満くん。何をいってるんだい、応援に来たんじゃないか」
「いらねぇよ!なんだよ!ぷっすまだろぉ!?」
「花村大介ですっ!」
フードファイトの現場に、突如テレビ局をまたいで、花村大介ことユースケ・サンタマリアが登場した。
「あのねぇ、剛ねぇ。俺、前々から思ってたんだけどねぇ」
「何っ?」
「筧さんと、俺って、かぶってるよな」
「・・・そうだね」
あの異常なテンションはどうしたことだろうかと剛は常々思っている。人と距離を置きたいタイプの自分に対して、あの、馴れ馴れしさは一体??と。
「だったらさぁ、1シーンくらい俺が出たって、わかんねぇと思わねぇ?」
「バッカじゃないのぉ!?」
おそるべし!ぷっすまスタッフ!
「解るにきまってんじゃん!全然違うじゃん!」
「でも、ほら、白衣まで」
「なぁにやってんだよぉー!仕事もどれよぉぉーー!」
筧医師をユースケ医師と取り替えようとするとは!

こんなことで時間をとられてたまるか!
剛は、どうにかしてユースケたちを帰らせようと必死になった。

その頃、中居はのんびりと取材を受けていた。
今日は、固めて取材をいれてあって、次から次へと雑誌の記者がやってくるが、こっちが動かなくていいのなら楽なもんだ。
そのたびごとに、違う衣装を着て、違う写真を取られるのは面倒だけど、それにしたって、このスタジオから出なくてもいいなら楽なもん。
時にはにっこり、時にはマジメに、時にはおどけて、中居はさくさくと取材をこなしていく。
このままなら、問題なく時間通りに終わるはずだ。
今日が100日目。
もう目の前にぶら下げられている100万円を取らずして、何のSMAPか!

今日の中居くん、ってすっごく素敵・・・!
記者、カメラマンをくらくらさせるほどのいい空気、いい笑顔を振り撒く中居だった。

森の、今日のレースは最終レースではなかった。
時間的には問題なく、都内に戻れる。
戻れるのだけど、なんで今日に限って取材が?
きょとん?と急に入った取材に首を傾げる。
「しかも、レース終わった後ですかぁ?」
「終わった直後の画が欲しいっていってるんだけど」
「終わった直後って・・・勝ってりゃいいけど・・・」
でも、ま、いっかー、とあまり深く考えないのが森。それこそが森且行!だった。
それより、整備、整備・・と愛車の点検に余念はない。

「木村くん?」
「え?あ、なに」
「今日、どの曲かけようか」
「んー?そーだなー」
ラジオ局のスタジオで、FAXやら、ハガキやらを見るともなく眺めながら、木村の頭の中には、今晩のメニューが渦巻いていた。
時間的に、一番余裕があるのは自分なので、まぁ、任せろといったからには、さすが100日目、というメニューを出したい。
和食、かなぁ。
ご飯は炊けるようにセットしてきてるし、下ごしらえ済みの食材も冷蔵庫でうなりをあげている。
30分前にでも帰れれば、かなりの料理を作る自信はあった。後は組み合わせだな。
「あの、曲・・・」
「えーとねー、ドリカムのあなたにサラダかー、森高のオムレツなんとか」
「なんでそんな!」
「今、あいつら何やってんのかな」
手元には、メンバーのスケジュール表。現状をチェックするか、と、何気なく携帯を手にする。

と、携帯が先になった。
「はい?」
『きっ、木村くーん!?』
「慎吾?」
『どーしよぉー!』
「何が!」
『天気がいいから、ロケ出るってーーー!』
「マジかよ!」
『都内なんだけどー!都内なんだけどぉーー!』
都内、というだけの場所だった。
「昼間のシーンか!?」
『そぉーー!!』
「てめぇ、死ぬ気でやれよ!」
『がっ、がんばるぅー!』

100日目、最終日。
これくらいのアクシデントはあって当然だ。
ふふ。
木村の口元に、かすかな笑みが浮かんできた。


100日目その3

「あの、中居さん・・・?」
「・・・あっ、・・・すいません、なんか今、すごく長い時間が経ったような気がして・・・」
中居は、はっ!と夢から覚めたような顔になった。(すんません、その2から3ヶ月経ってるんですわ、じつわ(笑))

「あ、すみません、なんでしたっけ」
「あの、じゃあ、夢は、ごらんになりますか?」
「夢・・・、んー、あんまり見ないけどぉ〜・・・。あ、こないだ見ました。慎吾がシンデレラなんですよ」
「えっ?」
「シンデレラで、俺が、意地悪な継母で、吾郎と剛が意地悪なねえちゃんで、木村が魔法使いで王子が森だったかな。なんか、竹の塚みたいで、すっげー!笑えた。シンゴリラ(笑)」
「それは確かに!」

日頃、夢を見る方ではない自分が、こんなのんびりした夢を見てしまうのは、今の環境のせいだろうと思う。いいんだか、悪いんだか・・・。
そう思いながら、中居は、多少デフォルメも入れながら、その夢の話をおもしろおかしく展開していった。

「・・・だから、ムリだって・・・っ!」
「いや、筧さんは、解ってくれると思う」
「筧さんは解ってくれるからダメなんでしょーーーっ!!」
どうしてもユースケ医師になりたい!と、花村大介がぐいぐい押してくる。ここでふんばらないと、撮影が混乱して時間がかかると、常にない力を出した剛だったが。
「おー、どしたぁー?」
「あっ!筧さん!」
自ら出て来られちゃあどうすることもできなかった。
「あのね、筧さんね」
「ふん、ふん、おー!そりゃいいなぁ〜!」
「まだ、何もゆってないでしょお!!」
筧利夫と、ユースケ・サンタマリアのテンションは、似て非なるものだ。ユースケはムリにでもテンションを揚げるが、筧利夫は、ほっといてもテンション上がっている。
ムリにも、テンションを上げられない剛は、これはもっと偉い人に止めてもらわねば!と佐野史郎を迎えに行ったところ。

「一瞬?」
「一瞬で!一瞬でいいんすよ!あの、遠〜くからちょっとパンする時に、あそこが映るくらいのところで!筧利夫マニアしか解らないような!」
「あぁ、いいねぇ〜」
いいのか!?
それでいいのか、佐野史郎!?
なぜか、スタッフのテンションも上がってきた。やばい・・・!だって衣装が2種類ある訳じゃないのに!てことは、1度着替えてからだろ!?白衣を着るだけでいいのか!?でも・・・えぇ〜???ほんとにぃ〜〜???

じゃあ、どのシーンが都合がいいとか、なんだかんだ始まってしまい、剛は呆然と経ち尽くした。
やばい・・・!撮影がずれ込む・・・!

それについて、一番心配していたのは吾郎だった。
なにせ、靴ヒモは切れる、美人とは言え黒猫は通る、箸は折れる。
何があっても不思議じゃない・・・!
そう思っていたのに、共演者のNGなし。スタッフのミスなし。セット転換快調。
あ、あれ・・・?と思う間もなく、あれよあれよと予定が消化されていく。
吾郎自身も、なんのミスもなく、それどころか、ちょっと会心?という感じで、お、この緊張感がよかったのかな?なんて思う。
しかし油断は禁物。
予定より早く進んでいるから、じゃあ次のシーンもなんてことになったら・・・!
吾郎は、思慮深い目で、じっとスタッフの様子をうかがう。
「あの、稲垣さん・・・」
いかにも申し訳なさそうに、ADから呼ばれた時も、すでに嘘の仕事を3つは頭の中に構築していた。
「あのー・・・急なんですけどぉ・・・」
「はい?」
「朝10時入りで、お願いできますか・・・?明日」

「・・・。あ、はい。解りました」
「あ!いいですか!?すみません!お疲れ様でしたぁ!」
予定では、12時入りだったのが、2時間早まっただけで、今日はもう終了!?今日はもう終了!?5時なのに!?
いやっほーーい!
小さくスキップしながらスタジオを出ようとした吾郎は、まんまとケーブルにケッつまずいて、顔面から倒れた。
その前を再び黒猫が横切っていったのは言うまでもない。

「神様ぁ〜・・・!」
慎吾は強く手を握り合わせ祈っていた。
都内で、昼間のロケ。
都内だが、そこは都下だ。
緑が多く、慎吾が生まれ育った場所と、環境も近い。
そこで、慎吾は祈っているのだ。
何度か経験したことがある。自然は、時々慎吾の味方になってくれた。遠足の前日に雨が降っていた時、明日にはやんでください!と、何度もお祈りしたらやんでくれたりもした。
ということは逆に・・・!
『雨よ降れぇ〜、雨よ降れぇぇ〜〜〜・・・!!!』

そしたら。

「うわ!!」
「何、急にぃ〜!」
「うそぉ」
一天にわかにかきくもり、大粒の雨が、役者、スタッフ、カメラたちを包んでいく。
「・・・俺ってすごくない・・・?」
「何してんの!慎吾くん!濡れるじゃな!」
鈴木京香から言われても、衣装のまま、にへにへと雨に打たれつつ、嘘タップを踏んでみた慎吾だった。
その時間が、4時半!らっくしょーー!!帰れるぅー!ばんざーーーい!!

「ただいまー・・・」
とゆっては見たものの、自分が一番なのは、鍵を開けた時点で解っていた。
きゃわゆいまぁるいお鼻をすりすりと撫でながら、吾郎は居間に入り、猫たちの歓待を受ける。
5時40分。
残り1時間20分か・・・。
猫を肩に乗せたままキッチンの様子をうかがうと、炊飯器にはタイマーがセットされている。炊きあがりの時間は、6時50分。木村は、炊きたてのごはんで7時を迎えたかったらしい。留守電のランプは点滅しておらず、今のところ、緊急事態は発生していないようだ。
「・・・でも、緊急事態を緊急事態だと認識できない人間が・・・」

その緊急事態を緊急事態と認識できない男。
脇の甘さ日本一の森且行は、試合後のインタビューをご機嫌に受けていた。何せ勝ち試合の後のインタビューだ。
スタッフや、インタビュアーも非常に感じよく、あんまり見ない顔だなーと思いながらも森は喋った。喋り続けていた。レースへの熱い思いを、水を向けられたまま、喋り続けた。

そして・・・。
これこそが、ディレクター
D、カメラマンC、AD、Aの仕掛けた罠、第1弾だった。
もちろんカメラマンはCだし、スタッフはA。綺麗な女性インタビューアーは、森の好みをリサーチしつくした3人が用意したナイスバディ。

7時までとは言わない。後1時間ここに足止めできれば・・・!CとAは、祈る気持ちで、インタビュアーへ念を送りつづけた。

が。

「あ、すみません、もういいですか?」
それは、森がレース前にしてしまった、とんでもない失敗の話で、インタビュアーはもちろん、喋っている森もCもAもが大笑いしてしまっていた時だった。
ふっと、真顔になった森が言ったのだ。
「俺、そろそろ帰らないとまずいんで」
なぜ・・・!
Cは動揺した。
インタビュー用に用意し部屋からは、すべての時計を撤去していた。試合直後に森にインタビューを申し込んだもの、腕時計などで時間を調べられるのを恐れたからだ。今の時間が、森に解るはずはなかった。
「あ、でも、あの・・・」
一瞬、困った顔をしたインタビュアーだったが、森を引きとめなくては!と声のトーンをちょっと落とす。
「・・・でも、この後、一緒にお食事でもしたかったんですのに・・・」
匂い立つ色気。ADのAなどは、くらくらっ、とめまいを起こしそうになる声と目線だったが、ぱきっ!とその目線を受けとめた森は言った。
「あ!そう?じゃあ、一緒に来ます?みんなで食べるんだけど」

行けるかぁーーーー!!!!
こうして、
カメラマンC、AD、Aの罠は失敗した。
「Dさん・・・!頼む・・・っ!!」

その頃、ディレクターDは、最後の罠を仕掛けるべく、東京FMに向かっていた。


100日目その4

ディレクター歴15年、混迷のテレビ界に足を踏み入れてから、実に28年。
かつての部下たちも、立派に育ち、ディレクターDには、数々の人脈があった。
それは、この東京FMも例外ではない。Dさん、Dさんと、彼を慕ってくれる可愛い後輩たち。Dくん、Dくんと引きたててくれた、立派な先輩たち。あの人たちがいるから、今の俺がある・・・!
Dはそう信じている。
しかし・・・。
Dは、そんな彼らを、裏切らなくてはいけない局面に追いこまれていた。
「すまない・・・」
口の中で小さくつぶやくDの表情は、岩のように固かった。

「あれ、Dさん!」
かつての部下が嬉しそうな顔をした。
東京FMをキーステーションに、全国36局ネットでお送りしているWhat’s up SMAPの収録スタジオだ。
「どうしたんですか?急に」
ブースの中で、木村拓哉が調子よく喋っていて、音楽をかけるくらいしか、スタッフの仕事は今のところない。
「たまたま寄ったんだけど、君がいるって聞いてね」
「わぁ、久しぶりですねぇ!ありがとうございます!」
キラキラ輝く瞳は、彼が充実した仕事をしていることを現わしていた。
それはそうだろう。天下の木村拓哉のラジオ番組だ。
集められたスタッフだって、一流どころの・・・・・・・・

「・・・木村くんの番組は、いつもこんな感じなのかなぁ・・・」
「え。あのー・・・、今日は、ちょっとはマシで・・・」

そして木村自身は、いかにも調子よく喋っていた。今日これを終えたら、自由の身。後はうちに帰って料理を作るだけ〜♪
「What’s UP〜!木村拓哉でした!ピース!」
実際に出されるピースもびしり!と決まり、番組は終了。スタッフが、ブースに入っていった瞬間だった。

ディレクターDの指がすばやく動き、録音されたメディアを、空のメディアと取り替えたのだ!
許してくれ!
しかし、このメディアは返す!必ず返すから!今だけ・・・!今だけ木村拓哉を引きとめておきたいんだ・・・!

「えっと、それじゃ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
録音状態を確認しようとしたスタッフが、凍りつく。
「どした?」
帰る気マンマンの木村がすべての荷物を持ってブースから出てきた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「もしもーし、死んだ?」
「・・・・・・・・・し、死にました・・・・」
「何がよ」
「録音・・・・・できて・・・・ない・・・・・・?」
「えっ?」
「なんだって!?」
驚きの芝居がくさかっただろうか・・・!Dは気にしながら側により、あぁでもない、こうでもないと確かめているスタッフを痛ましい気持ちで眺める。
すまない・・・!ほんとにすまない・・・!
ちらりと横目に見た木村は、本当に録音できていないのかを確かめるように、じっとメディアを見つめている。
強い瞳だった。
ディレクターDは、木村とはほとんど面識がない。もちろん、一方的には知っているが、知らないでよかったと思う。
自分が100日チャレンジのディレクターだということが知られ、あの目でじっと睨まれたら、このポケットに大事にいれてあるメディアをそそくさと差し出してしまうに違いない!

「あの、木村さん・・・」
スタッフは覚悟を決めたようだ。
とにかく、今日収録をしないと放送には間に合わない。
なんと言われようと、もう1度、ブースに入ってもらうしかなかった。
もちろんDは、今まで培ってきた口八丁手八丁でスタッフの後押しをするつもりだった。が。

「あぁ、もっかいね。ったく、ネタにするよぉ〜?」

にっこり笑って、チラリとも、時計を気にするそぶりも見せず、木村はブースに戻っていったのだ。

・・・き、木村拓哉・・・!
完敗が・・・!そして乾杯だ!木村拓哉に乾杯!!

と、思いながらも、ともかくこのメディアは今は出せない・・・!頑ななDだった。

「あれ?」
気づいたのは、中居だった。
「木村、遅くね?」
「あれ、ホントだねぇ」
時計を見上げて森が言う。森は、野生の勘で時間を感じ取り、まんまと6時には戻ってきていた。突然の雨でロケを中止に追い込んだ慎吾も帰ってきていて、剛からも、そろそろ帰れるから、と連絡があった、6時15分。
「木村から、なんか連絡あったかー?」
「いや、俺は受けてないなぁ」
キッチンにいた吾郎が顔を出す。
森も、慎吾も、知らないと首を振った。一応全員携帯を出して留守電チェックもしたが、木村からのメッセージは入っていないし、部屋の電話の留守電ランプも点滅していない。
「・・・どうしよ、連絡してみる・・・?」
「でも、収録中かも」
「まだ収録してたらまずいだろー!」
いくらなんでも、間に合わない。
とりあえず中居が木村に電話をいれたのだが。

「・・・」
「どしたの」
「・・・電波が届かない場所にいるか、電源が入っていません」
「えっ」
まさか電源を入れてないことはないはずだった。それじゃあ電波の届かない場所なのか・・・。着信を見れば、自分からだと解るはずなので、メッセージは残さないまま、中居は電話を切る。
「どうしよう」
慎吾がオロオロし始めていた。
「東京FMとか、行った方がいいのかなぁ。つよぽん帰ってきたら」
「いや」
しかし、中居はきっぱりと遮った。
「木村は帰ってくるはずだ」
「中居ちゃん」
「だってあれだろ?ご飯のスイッチ入ってたんだろ?」
「うん、タイマーセットされてたし、冷蔵庫の中、鬼のように下ごしらえすんだもの入ってたよ。木村くんだったら、10分もあれば相当なもの作れるんじゃない?」
確認済みの吾郎に、中居は頷く。
「絶対ここで飯食うつもりだろ」
そりゃそーだねぇー、と3人も頷いた。
「飯の準備まではいくらなんでもムリだろうから、それは俺らで用意するとして、後は帰ってくるのを待つばかりだろ」

飯の準備は君にはムリ。

3人3様にそう思いながら、でも、3人はしっかり頷いた。

「ただいまぁ!」
「あっ!!・・・んだよ、つよぽんかよ」
「なんだよそれぇーーーっ!!」
剛が帰ってきたのが、6時半。残り30分。果たして、木村拓哉の、そしてSMAP運命は!?


100日目その5

100日チャレンジ、7時に全員そろっていただきますいえたら100万円、100日目。
残り時間後30分。SMAP5人は、家に揃っていた。足りていないのは、ただ一人、SMAPのある意味良心木村拓哉だった。
木村以外のメンバーは、なんとしてもこの部屋で7時を迎えよう!と料理の準備をしている。・・・しているのは、吾郎、森、剛、慎吾で、中居は、なぜか部屋の飾り付けをしていた。
慎「・・・何やってんのよあの人は・・・」
森「・・・昨日、遅くまでごそごそやってると思ったら・・・」
色紙をわっかにしたカラフルな飾りを鼻歌まじりに壁にはりつけていく。
中「ひゃっくまんえ〜ん♪ひゃっくまんえ〜ん(百万円のテーマ 作詞作曲中居正広)」
もちろん、ティッシュで作ったお花だって忘れていない。
剛「いいの?あんなにノンキで」
吾「・・・まぁ、木村くんだからねぇ・・・」
剛「・・・帰ってくる、よ、ねぇ・・・?」

その頃の木村は渋滞にはまり込んでいた。
木「・・・なんで・・・?」
トンネルの中での大渋滞。
ラジオの撮りなおしは、25分で終えて、ギリギリ間に合うくらいの時間でスタジオを飛び出したところでの大渋滞。
携帯のおかげで、いつでもどこでも連絡つくわと思って油断しがちだけれど、実際には、まだ携帯が繋がらない場所は多い。

木「やっべー・・・」
時間は、6時10分。のろのろとようやく動き出したけど、この先どういう渋滞があるか解らない。
木村は、SMAPのある意味常識なので、非常に常識的な判断をした。
車を捨てて、公共交通機関を使うことにしたのだ。

中「ひゃっくまっんえぇ〜んっ♪ひゃぁぁっくまぁぁぁ〜ん、えぇぇ〜〜んっ♪(百万円のテーマハウスリミックス 作詞作曲中居正広)」
森「わー、中居ちゃん、すごーーい!」
料理も一段落して、食器をこたつに置きにきた森が声を上げる。
中「ふふふふ」
慎「すげー。よくこれだけ幼稚園チックに飾り付けできるよね」
中「何おぅ!?」
まだ飾られていない花が慎吾の顔面にぶつけられた。
吾「何時?」
料理は完成。洗い物もすませた吾郎が居間に入ってくる。
剛「後10分」
剛は心配そうに、時計を見上げていた。懐かしい四角い家具調な時計は、今までも、この6人を見守ってきてくれた。
後はもう、食事をするだけだ。
吾「・・・ご飯炊けたし。よそっとく?」
中「そーだなっ」
心配そうな4人に対して、中居だけは平気な顔をしていた。
中「今日、飯何?」
いつも通りの口調。
吾「今日はねぇ、ご飯と豚汁と、ブリの照り焼き。後、ほうれん草のゴマ和えに、漬物があれこれに」
森「納豆あるよ」
中「んまそぉーー!」
次々にテーブルに運ばれる、美しい日本の夕食に中居の目がキラキラと輝く。
慎「サトイモのにっころがし〜」
中「きゃー!」
残り時間7分。
こたつの上には、6人分のセッティングがされる。
慎「何飲むー?」
中「酒酒酒ー!俺、焼酎ー!」
吾「ワインもあるけど」
剛「吾郎ちゃん、このメニューでワイン〜?」
慎「俺ビールぅー、森くんはー?」
森「俺もビールぅ〜」
残り時間4分。
焼酎のお湯わりすら準備された。木村の席には、缶ビールが置いてある。

すでに居間に言葉はなかった。
5人、じっと黙って時計を見上げている。
あの時計が7時を告げた時、ここに木村がいなければ、100万円はGETできない。
帰ってくるはずだ、という思い。
帰ってきてくれ、という願い。
そしてわずかに。
もし帰ってこなければ。
ここで100万GETできなければ。
もう1度1からスタートできるかもしれないという、小さな期待。
中「後2分」
中居が静かに言い、コタツを動かすように指示した。
吾「え?」
中「そこの入り口んとこに、木村の席を持っていく」
SMAPは、年功序列がはっきりしているので、上座につくのは中居と木村だから、二人の席は、部屋の一番奥にある。中居は天板を動かして、木村がこの部屋に入ったと同時に席につくことにしようとしていた。
慎「ん、えーと、じゃ、みんなもったっ?」
慎吾が辺りを見まわす。
慎「吾郎ちゃん、持ってないっ」
吾「5人もで持つもんなのこれー!」
慎「力合わせなきゃー!力ー!」
せーのっ!で天板を持ち上げ、うりゃ!と位置をいれ帰る。
座っていた位置も全員移動させ、時計と、ドアを交互に見た。
中「後、1分・・・!」

シン、と静まりかえった5人の耳に、慌しい足音が聞こえてきた。
木「ただいまっ!!」
乱暴に開けられたドアは閉められることもなく、靴を脱ぎ捨てた木村が部屋に飛び込んできた。飛び込んだと同時に正座の姿勢でいつもと違う席に正確に着地。

夜、7時。

「「「「「「いたーーーだーーーきぃーーーまぁぁぁーーーーーーーすっっっ!!!!!!」」」」」」

慎「やったぁぁーーーー!!!!」
森「やったっ!!!」
中「100万えぇーーーん!!」
6人は、誰かれ構わず抱き合ってお互いの健闘を称えあった。
中「乾杯乾杯!!」

中居の声に、全員がそれぞれのグラスなり、缶なりを手に立ちあがって高らかに乾杯する。
「「「「「「おめでとぉーー!!」」」」」」

「「「おめでとうございます!」」」

その部屋に入ってきたのは、ディレクターD、カメラマンC、ADのA。
木「あれ!?」
木村が、ディレクターDを指差す。
D「皆まで言うな!」
Dは木村の言葉を遮る。
D「確かに!確かに!!私はひどいことをした!しかし・・・!」
木「ひどいこと?」
D「さっきの収録をジャマしたのは、私だ・・・」
木「はい?」
D「しかし!」

中「えっ?あんた、何ゆってんのっ?」
中居の声も、Dは遮る。
D「しかし、最初の収録、流してたんじゃないのか?」
Dは、びしぃ!と指摘した。
う。
何をする!と中居以上に突っ込もうとしていた木村は、言葉につまる。
確かに、そうだった。
その日の夕食のことばかりを考えていて、仕事に対して真摯だったとは、お世辞にも言えなかった。2度目の方が、比べ物にならないくらい集中していたのだ。
D「プロフェッショナルとは、そうでなくてはならない・・・」
ディレクターD、
ディレクター歴15年、混迷のテレビ界に足を踏み入れてから、実に28年。詭弁のオーソリイティ。
D「だから・・・!だからあえて!私は心を鬼にして!」
そうだったのか・・・!俺、何かを見失っていた・・・!
木村拓哉、SMAPの中の単純担当だった。

カメラマンC、ADのAも、森に何か言わなくては!と思ったのだが、森はニコニコと、誰、この人たち、という顔をしていた。
・・・お、覚えていないのか・・・!
恐るべし、森且行!SMAPのおとぼけ担当!!!

中「ま、なんか解んねぇけど、いいや!いいから、金!100万!」
1度の出演料でも、ヘタしたら100万くらいいくんじゃあないのか、という芸能人長者番付第10位、中居正広が金、金と手のひらを出す。
C「・・・Dさん・・・!」
A「Dさん!」
D「約束は、約束だ。おめでとう、SMAP・・・!これが・・・」
ううう、と涙を飲み込み、自腹での賞金100万円を差し出した。

と同時にひったくられ、わーいわーい!!とはしゃぐSMAPたちの間を行ったり来たりする。
分厚い金封が、わーいわーいと手から手へ渡されていく。中居から、吾郎へ、吾郎から、慎吾へ、慎吾から剛へ、剛から森へ、森から木村へ。
中「何するー!どーするぅー!」
剛「旅行だ!旅行ー!」
森「美味しいもん食べよー!」
慎「車ー!移動車ー!」
また手から手と移動していった金封を持ち、それぞれに欲しいものをあげていく。

そして、木村に渡った時。
木「はい、じゃ、これいただきます」
中「なんでよ!!」
中居が睨む。
剛「なんで!?なんでよ、木村くんっ!!」
木「家賃だよ」
中「家賃ーーっ!?」
うん、と木村はうなずいた。
木「このうち借りるのに、礼金とか敷金とかもかかってるし。家賃も4ヶ月分かかってるし」
中「うそぉ・・・」
慎「ウソでしょー・・・?」
木「ほんと」
えーと、と、中にちゃんと100万入ってるかどうか確かめた木村は、5人を見やった。
すっかりどんよりとしている5人を。
中居はあぐらをかいて、焼酎の瓶から、直接飲んでるし、慎吾は床に大の字になって暴れている。森はサトイモのにっころがしで口一杯にしているし、吾郎は、ごはんにワインをぶっかけてかきこんでいて、剛は、色を失っていた。向こうが透けて見えている。

木村は、小さく笑った。
木「後、これからはローンもかかるし」
中「・・・ローンだぁ?」
木「なんか、場所もいいし、居心地もいいから、ここ、買おうかと思って。てゆーか、契約もしてきたんだけど」
吾「・・・ここ、買ったってこと?」
木「そう」
こっくり木村はうなずき、15年ローン、と返事をする。
木「なんで、これからも、賞金番組にはどんどん出てもらわないとな。ミリオネアとか、タイムショックとか」
中「ミリオネアは任せとけ!コネがある!」
慎「俺、あれ出る!大食いで全国縦断する男伝説!」
吾「あれやっても、伝説達成ってだけでお金にならないんじゃない?」
慎「大食いの賞金で!」
森「じゃあ、俺筋肉番付?」

なんの許可もなく15年ローンを背負わされてしまったSMAPたちは、これから、賞金でローンを払い続けることになったという。

<ながながと・・・お疲れ様でした!!協力いただいた皆様!ありがとうございました!SMAPの15年にご期待ください(笑)!>


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