HOME書庫タロットカードに学ぶ人生の苦難の解決法

            タロットカードに学ぶ人生の苦難の解決法(『塔』)

 第12番『塔』The Tower

 絵柄の解説
 落雷を受けて塔が崩壊し、人が落下している。このカードは、物質的な意識を打ち砕くことで偽りの自己を消滅させ、真実の霊的自己を目覚めさせるプロセスを示している。 天にそびえる塔とは、小賢しい知恵に満ちた偽りの自己の象徴だ。他人と比較し、優位に立つことで自尊心や優越感にひたり、やがて狡猾さと利己主義と傲慢さを膨張させていく。ついには「自分が世界でいちばん偉い」とまで思うようになる。
 こうなると、霊的な進展は望めなくなる。そこで神の意識の象徴である落下が訪れる。落下とは、偽りの自己を打ち砕き、霊的自己を目覚めさせるための新生の光なのである。 落雷を受けた塔は先端を打ち砕かれる。運命的には突然の不運に見舞われ、高慢さをつぶされて自分の愚かさとこの世の無常を悟ることになる。
 しかし、この苦しみを教訓として霊的に目覚めると、そこにもっとすばらしい人生が待っている。塔から落雷する人のうち、足が十字に交差(神との交流を示す)している人の顔が喜びに満ち、後光が輝いているのもそのためである(対極カードの「吊るされた人」)を参照せよ)。もはやその人は、他人と比較して優越感にひたることはない。すべての人がもつ高貴なる霊性を自覚したからである。

 もっとも激烈な不幸を暗示するカードだが…
 一般的な占いの解釈では、突然の不幸/地位の転落/事故や災難/驚愕する事件といった運命を暗示しています。たとえば、自分で事業を始めてそれがうまくいき、どんどんと出世して名声や財産を築き、「どうだ、俺は偉いんだ!」といった高慢な気持ちを抱くようになった人が、突然、予期せぬ事故が起きて事業が破綻し、高い地位から転落するといったケースです。ビジネスの世界では、こうしたことは珍しくありません。程度の差はあれ、ほとんどの人が似たような経験をしているようです。四枚のカードの中では、もっとも激烈でショッキングな不運を暗示しているといえます。
 また、映画『スーパーマン』で有名な俳優クリストファー・リーブは、馬から転落して首を骨折、下半身不随になってしまいました。まさに、昨日までとはまったく違う突然の不幸で人生が一変してしまったのです。
 こうした突然の不幸や挫折、転落を暗示するカードが『塔』です。
 転落したということですから、高い地位に登り詰めたということであり、親の遺産や何らかの偶然的幸運によって手にした場合は別として、もともと優秀な人であることがわかります。情熱的に努力もしたでしょう。したがって、四枚のカードの中において、『塔』は「火」のエレメントとなるのです。

 傲慢な人が進化を促進させる
 火のエレメントをもつ人は、有能で情熱的で自信家です。さもなければ大きな事業だとか、名声を獲得することはできません。
 しかし火のエレメントは、四つのエレメントの中で、もっとも二極分化を促進させる働きをします。つまり自他の差別化が激しくなるのです。端的にいうと「どうだ、俺はおまえより偉いんだ」という気持ちが強くなるのです。そして、物事を極端に白黒つけたり、極端な思想や行動に走るようになります。こうして「双葉」を出して、対極性をそれぞれの方向に伸ばしていくわけです。
 対極性が拡大していくと、どうしてもアンバランスになります。そして、一方が他方に対して否定的になります。宗教の世界でいえば、自分の教えだけが唯一正しいと強く主張し、対立している宗教を邪教と見なして攻撃します。要するに、排他的になるのです。政治の世界でいえば、右翼と左翼、保守と革新とが均衡を保っているうちはいいのですが、どちらかが優位になると、日本の国そのものが極端な政策に傾いてしまいます。 こうしたことは、どれもアンバランスです。そこで、この状態が飽和的なレベルにまで拡大すると、今度は反対の運動が生まれてきて、統合へ向かうのです。
 ただし、まったく以前の状態に戻るわけではなく、一見すると以前の状態と似ていますが、一段高次のレベルになっているのです。音楽でいえば、一オクターブ上昇したのです。同じドの音でも、ひとまわり高次のドなのです。ヘーゲルの弁証法的な歴史展開が、生命体の進化においても当てはまるわけです。
ところで、この『塔』のカードが出る人は、「俺は偉いんだ」という高慢な気持ちをもっていることが多いのですが、本人からすれば「私よりももっと高慢な人がいるのに、なぜ私が…」という気持ちになるかもしれません。
 しかし運命的な現象というものは、他者がどうかということには関係ないのです。確かに、その人よりもずっと高慢な人はたくさんいて、彼らこそ『塔』が暗示する転落の運命を受けるべきだと思うこともあります。しかし他者との比較ではなく、あくまでも自分自身の進化における都合なのです。他者と比較して、ほんのわずかしか高慢な心をもっていないのに、激烈な転落の不運を味わうかもしれません。しかしその人にとっては、ほんのわずかな高慢な心で十分だったのです。

 幸運のエネルギーはどこからくるか
 高慢な気持ちは、道徳的には否定されるべきよくない性格的な欠点ですが、生命体の進化の視点からみれば、一時的に高慢になって大きく対極性を拡大していくことが必要だったともいえるのです。一オクターブ上の音階にまで昇るためには、対極性を拡大させて、強いエネルギーを生じさせる必要があったのです。
 電気にしても、プラスとマイナスの電圧の差が大きいほど強いエネルギーを生むわけです。プラスはよりプラスの電荷に、マイナスはよりマイナスの電荷にするのです。そうして両者をひとつに結び付けたときに、非常に大きな電力が生まれます。
 ですから、大きく進化するには、大きなエネルギーが必要であり、そのためには、両極性を拡大させて二極化をなるべく大きくしていかなければならないのです。
 そうして、二極化が十分に拡大して飽和的なレベルに達した頃に、今度は両者を統合する運動へと変わります。進化のエネルギーを得るためです。これは「幸運のエネルギー」といってもいいでしょう。そんなエネルギーを得る時期が訪れたことを暗示しているのが『塔』なのです。
 したがって、『塔』が出たときには、相談者は大きな進化の段階へ踏み出すための充電をしてきたのだという認識をまず考慮しなければなりません。そして、二極分化が崩壊し、混沌としている状態に対して秩序を与え、二つの対極性をひとつに統合できるように手助けしてあげる必要があるのです。
相談者に対する占術師の愛は必ず伝わる
 その際のポイントになるのは、占術師の「愛」なのです。
 ただし、繰り返しますが、ここでいう愛とはロマンチックな感傷的気分のことではありません。(宇宙がそうであるように)排他的で異質な事物のすべてを矛盾なく受容できる直感的な意識のことです。占術師がこの意識を振動させながら相談に乗るとき、何げない言葉、あるいは何げないしぐさといった非言語的なコミュニケーションを通して、相手の「愛」を共鳴させることができるのです。そうすると、相談者は自然に解決方法が閃くようになってきます。たとえ相談中に閃かなくても、時間差をおいて、後で解決方法が閃くこともあります。あるいは解決方法を自覚しなくても、無意識的にわかって自然に問題が解決されるという場合もあります。
 相談者に対する占術師の愛とは、同じ生命体としての共感と結び付きの意識なのです。「人間というものは、自分も相手も同じように苦しみながら、失敗しながら、学んで成長していくものだ。だから相手の欠点も至らない点も許してあげよう。そうして自分も許してもらおう。お互いに許しあって、一緒に幸せになっていこう」という気持ちであり、また先程から述べているように、この人が苦労してくれているおかげで、その教訓の情報を自分のものとすることができ、賢くなっているのだという感謝の気持ちでもあるわけです。
 こうした気持ちがあれば、必ず相談者に伝わります。
 私たちが対面している相手から得ている情報量は、無意識的なものも含めて膨大な量に昇るといいます。嘘をついていたりすれば、どんなに隠そうとしても何となくわかってしまうのです。占術師に、相談者への愛があれば、それが必ず相手に伝わるのです。
 そして、その愛が、相手の愛を共鳴させるのです。愛とは、二極化を統合させる唯一の意識ですから、愛を目覚めさせた相手は、自分でその回答を見いだすでしょう。
 要するに、占術師をはじめ、あらゆる指導的な役割を担っている人の使命は、最終的には相談者自身の愛を覚醒させることにあるのです。

 自分が変われば運命も変わる
 いずれにしろ、不運を幸運に変える基本となるポイントは、二極に分化した対極性をひとつに統合することなのです。
 もともと、高い次元に進化する目的で二極化したわけですから、この二極化を統合すれば、具体的な現実の問題も解決の方向へ向かってくるのです。
 ただし、占いの相談と宗教の相談の異なる点は、単なる精神論では片付けられない、ということです。たとえば「明日までに資金が得られなければ不渡り手形を出して会社が倒産してしまう」という人に対して精神論を説くのは、占い師の仕事ではありません。こういう相談の場合に、占い師の立場としては「どうしたら資金を得られるのか、どうしても得られない場合は、少しでも状況がよくなるために何をすればいいのか」を具体的に指示しなければなりません。
 そこで、どうすればいいかを、あらゆる手段を通して考えていくわけです。たとえば、どの方角にお金を貸してくれる人がいるとか、やむを得ずどこかの会社の傘下に入って資金を調達するとか、とにかく具体的なアドバイスをしなければなりません。
 しかしながら、それでも本人が変わらないと、運命的な状況も変わらない場合が多く、何回占っても悪い結果が出るばかりで、何もよい解決策を見つけてあげられない、ということが少なくないのです。
 そうなると、精神論ということも大切になってくるわけで、根本的にはその人自身を変えていかなければ、やはり先行きはよくないということになってしまうのです。
 これはもちろん、事業だけでなく、恋愛でも仕事でも健康問題でも同じことです。いつまでも不幸な恋愛ばかりだとか、長い間に渡って健康がすぐれないといった場合は特に、本人が自分を変えようとしない限り、幸運は訪れてこないでしょう。しかし本人が変われば、運命的にも幸運になってきて、問題も自然に解決していくものです。

 運気の流れを変えて幸運を呼び込む五つのポイント
 本人自身が変わるということでは、たくさんの要素があるでしょうが、次のような点がポイントになります。とりわけ『塔』の場合は、なおさらこの点に注目する必要があるのです。これらを変えることにより、運気の流れが変わって、問題解決の道が見えてくるようになるのです。

1。恨みを捨てる
 相談者を転落させた人がいて、相談者がその人のことを恨んでいる場合は、その恨みの念を捨てるようにアドバイスします。もちろん、これは本人だけにしかわからない心の痛みがありますから、慎重でなければなりませんが、恨みの念がある限り、対極性の統合は実現不能となり、運命がいつまでも開かれないのです。この場合、相手を許すということが幸運を開くきっかけとなるのです。

2。自分を責めるのをやめる
 同じように、転落したのは自分が悪いのだと考え、自分を責めている場合も、自責の念を捨てるようにアドバイスします。本質的にひとつに結ばれている生命体にとって、他者を責めることと自分を責めることは同じだからです。

3。すべては一時的なものだと考える
 事業の転落であろうと、その他の挫折や失敗であろうと、一時的なプロセスにすぎません。今の不運は「事業の失敗」かもしれませんが「人生の失敗」ではないのです。あらゆる成功は多くの失敗や挫折を土台に築き上げられるのであり、今回の失敗も成功に向かうステップなのだと理解してもらうようにします。

4。自分は生まれ変わったのだと思う
 心理的には、相談者の苦悩は「エゴ」の苦悩であり、これまでの偽りの自分(エゴ)が死のうとしている痛みなので、そのまま「死」に移行させるようにします。へたに過去の虚栄心を呼び戻すようなことは避けた方がいいでしょう。むしろ、謙虚な真の人間性、本来のその人の魅力が目を覚まして、エゴと入れ替わるのを見守るようにするべきです。大切なことは、過去の自分を引きずるのではなく、自分は生まれ変わったのだ、新しい人間になったのだという思いをもつことであり、過去の自分と決別することなのです。「自分はダメ人間なんだ。敗残者なんだ」という思いがどこかにある限り、それが自己暗示となってしまいますから、何をやるにしても、うまくいくはずがありません。不運を幸運に変えるためには、断固として過去の自分と決別しなければならないのです。

5。逆転の発想をする
 エゴは「自分にとって相手はどんな意味をもつのか」「相手は自分に何をしてくれるのか」という発想しかできません。そのような発想では、顧客からも恋人からも、その他、あらゆる人間からしだいに敬遠されてしまいます。恨みを買うこともあるでしょう。そうなると、誰も助けてはくれませんし、陰で足を引っ張る人も出てきます。人生の幸運の大部分は、人間関係の良し悪しで決まるといっても過言ではありません。
 ですから、「相手にとって自分はどんな意味をもつのか」「自分は相手に何をしてあげられるのか」という逆転の発想をするのです。これは分極化に向かう発想ではなく、統合に向かう愛の発想です。これは、次の『吊るされた人』とも関連があります。

このページのトップへ