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バハラタ 〜 ダーマ大神殿 〜 ガルナの塔 〜 ムオルの村

相変わらず先走ったSSがありますけど、気にしないでね(^^;。


打ちひしがれるような想いでデュランダール号に戻る。 指示を求める船長に、私は東上してバハラタに行ってもらうよう頼んだ。 そろそろ水と食料を補給する必要があると思ったからである。 バハラタの町に久方ぶりに到着する。 胡椒を商う例の富商はどうやら隠居し、娘夫婦が後を継いだらしい。 歓迎してくれる富商らの宴の誘いは、任務の途中なのでと申し上げて丁重に遠慮させていただく。 正直言ってそんな気分にはなれなかったのだ。 各種補給を船長らに任せる中、私達は町の酒場に向かった。 そこにはアリアハンからの連絡員が来ていた。 どうやら私達が解いた封印により、広く世界に諜報部員が行き来出来るようになったようだ。 ここにやって来た彼女の名はエミーナ。 日に焼けた肌に長い赤毛が眩しい、アリアハンの諜報部員で優秀な武闘家である。 私は酒を彼女に奢りながら現状までの情報を報告した。 魔軍の本拠地のおおよその位置。そしてオーブの謎。 エミーナは国王に確実に伝えることを約束すると、私に幾つかの情報を与えてくれた。 エミーナ殿   「まず、ここから東北にあるダーマ神殿の存在です。          もしバラモスの魔力に脅威を感じられるのなら、          そこの最高司祭が何かしらの助言を与えてくれるかも知れません。」 なるほど、これはありがたい事かも知れない。 そう言えば以前ここの宿でもダーマの噂はちらと耳にしていた。 これは立ち寄ってみる価値があるかも知れない。 エミーナ殿   「もう一つ……オルテガ殿と思われる人物の足跡が見つかりました。」 私の周りで一瞬だけ時が硬直した。 私はエールのジョッキを握り直してエミーナ殿を見つめ返す。 エミーナ殿はそんな私の反応を見て先を続けた。 エミーナ殿   「ここより東上してかなりの北方にあるのですが、ムオルという村があります。          そこでポカパマズ、現地語で"南から来た勇者"という人物が          一時期滞在していたという話を得ました。          色々な情報を集めてみると、恐らくオルテガ殿だと思われるのです。          オルテガ殿の足跡を追うことは魔軍探索の何かしらのお役に立てるのでは無いかと思いまして。」 エミーナ殿の言いたいことはそれだけでは無かっただろうが、体面上はそういうことにしてくれた。 私は僅かにその言に頷くと、気を静めるためにエールを一気に呷った。 それから……とエミーナ殿は続ける。 エミーナ殿   「そのオーブに関してですが、今後も調査のほうお願いできますか?          その事は国王陛下も多分にご興味を持たれるでしょうし、          魔軍に関連のあることでしたら、少しでも探っておく必要があるでしょう。」 私はそれも承知する。直にネクロゴンドに侵入することが出来ない以上、搦手から攻めるしかあるまい。 エミーナ殿   「武運をお祈りしております。」 私達はエミーナ殿の情報に感謝し、翌日バハラタを後にした。
アイリーナさん 「まずはどこから回ってみましょうか。ランシール・ダーマ神殿・ムオルの村と          情報は集まっていますけど。」 ……私はまずダーマに向かう旨を告げた。 ここからなら一番距離も近く、ムオルに真っ先に行くことは私事と思われたくなかった事もある。 ダーマの大神殿の近くまでは、船で行くことが容易かったので助かった。 私達はここで大司祭に面会し、今後の方策を相談した。 大司祭は、バラモスの魔力に対抗できるだけの修行をアイリーナさんが積むことにより、 今後の魔軍との戦いに重要な役割を果たすであろう事を助言してくれた。 しかしその修行の為には、ここより北のガルナという地にある古代の塔に収められている、 古代の奥義を記した書物が必要だという。 ここ数百年、バラモスほどの魔力を持つ相手に対抗するだけの修行を必要とする人は皆無だったのだそうだ。 私達は大司祭に礼を申し上げると、その朽ち果てたガルナの塔へと向かうことにした。 アイリーナさんの力が強化されることは、私達にとって大変重要な事である。 ガルナの塔に侵入する。 古の塔ではあるが、数人の修験者達が修行に相応しい霊場として滞在しているようであった。 修験者達に塔に住み着いている敵対的な生物の話も聞き、塔の中の探索を始める。 凶暴な生物、ロープを渡さねければ通れない難所……私達は苦労しながら奥義の記された書物を探し求めた。 何度目かのロープを渡っていたところだったろうか、疲労のせいもあるだろうが アイリーナさんがロープから足を滑らせたのだ! アイリーナさん 「……キャ!!」 戦慄する私達。そこで間一髪ミーシャちゃんの重力制御魔法の発動が間に合った。 アイリーナさんの身体がゆっくりと怪我をしない程度の速度で落下していくのを確認すると、 私達もミーシャちゃんの魔法でアイリーナさんの後を追うことにした。 ……怪我の功名とはこのことである。 私達が着地したフロアには、ロープも渡せない断崖で以前には探索できなかった場所があったのだ。 何の皮肉か、その場所にこそ目的の奥義の書は安置されていたのだ。 これもファリスとマーファの御加護かと私達は感謝し、ガルナの塔を後にしたのだった。
アイリーナさんは、ダーマ神殿にて奥義を学ぶ修行期間に入ることになった。 その間も私達は休んでいるわけにはいかない。 武運を祈ってくれるアイリーナさんをダーマ神殿に残し、 私達はその間ムオルと呼ばれる村に行ってみることにした。 (当然、実際はクラスチェンジは一瞬で済みます(^^;。  しかしここでは少しでも現実感を持たせるために、便宜的にこの様な設定にしております。) 珍しい東洋の海原を東側へと北上しながら、デュランダールは進んでいく。 ムオルの村へ近づいていくと、徐々に気候が寒冷化してくるのが分かる。 やがてやっとの事でムオルの村近くに寄港したときには、毛皮の外套が手放せない程であった。 気候は冷たくはあったが、迎えてくれた人々の心は暖かであった。 ここにも魔軍の手が伸びてきている中、アリアハン軍の偵察隊としての私達の存在は、 ムオルの人々にとっては、小規模ながらにも希望となったのであろう。 しかしエミーナ殿から予め聞いてはいたが、村の人が私に対して、 ポカパマズ殿と立ち居振る舞い・訛・雰囲気などが似ている、と口を揃えて言うのには驚いた。 恐らく、そのポカパマズこそは間違いなく父オルテガなのだろう。 そして父の事を覚えている人物と巡り会った。 この村に住んでいる吟遊詩人は、ポカパマズより身の上を聞いていたのだという。 そして、国元には最愛の妻と娘を残してきているということも…… ある日村の前に、意識不明の重傷を負った戦士が倒れていたのだという。 彼は村人の必死の看病の甲斐有って、元気に回復することが出来たのだと。 その男は"南から来た勇者"と呼ばれていたが、本名はアリアハンのオルテガと名乗った。 そしてバラモス率いる魔軍の動勢を探るのが目的であると。 目頭を抑えて聞いていた私に、吟遊詩人は優しく続けた。 ポカパマズは大事な任務があるということで、傷の静養を待って再び任務の途に着いた。 彼はこの村に滞在している間、その人柄で村人達に慕われ、彼を引き留める声は多かったが、 彼の強い意志は誰にも止めることが出来なかったと。 そしてその強い意志は、あなたもそっくり受け継がれていると。 私はその言葉を裏切ることは出来ず、涙を拭って強く頷いた。 ポポタという少年が父の事を詳しく話してくれた。 倒れていた父を見つけたのは彼で、看病してくれたのも彼の家だということだった。 私はポポタに篤く感謝を述べる。 一通り村人全員に改めて感謝の言葉を述べ、ムオルを後にしようとすると、 ポポタが追ってきた。 父からもらった兜を大事に持っているのだが、私にくれるというのだ。 大事な兜だが、私が持っているのがやはり相応しいと。 私は胸が熱くなった。それほどまでに大事な父の想い出としての品を、 私がポカパマズの娘だというだけで私に譲ってくれると言うのだから。 その代わりこの次は絶対に父を連れてきて欲しい、と頼まれてしまった。 ……言えない、この子に父は既にこの世の人では無いなどということを。 ポポタの父の商人が私に父の形見の兜を手渡してくれた。 そっと被ってみる。 ……微かに暖かな父の香りがするような気がした。

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余談:一応綺麗に纏めていてなんなのですが、この村には大きな矛盾があります。
   OPデモでオルテガはムオルの村の人々に助けられているのですが、
   その時にポポタ(とおぼしき子供?)がオルテガを助けています。
   で、その後オルテガは行方不明になってしまい、アリアハン王宮にその知らせも入るのですが、
   そこにいる母親と一緒にいる勇者(主人公)はどう見てもまだ乳幼児。

   で、このムオルの村に来て勇者は既に少年〜青年期に入っているのに、
   ポポタは……お前何歳じゃ(^^;。


   脚本家は知っててやったのですかねぇ。気付かなければ致命的設定ミスですねぇ。
   まぁゲームをやる上ではバグでは無いのですが……

   でも、だからといって(子供向けだと思って気を抜いている?)、
   こういう設定をされると、気付いた消費者側は萎えるんですよね。
   その辺、しっかりして欲しいです。