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白蚤大詩集「蚤の心臓」(関富士子著)より
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タイラ
Eira barbara
HISTOIRE NATURELLE,
GENERALE ET PARTICULIERE,
PAR LECLERC DE BUFFON
(「ビュフォンの博物誌」工作舎) 

タイラ

蛇の道




 注意深くかがんで斜めに原っぱを見渡すと、丈の低
い草がひとところだけ押し分けられ、向こうの薮まで
続いている。幅は狭いが少し曲がりながらとぎれがな
いようだ。あれは何かと尋ねると、蛇の道だという。
蛇の通るところは決まっていて、どの蛇もそこを通る。
蛇には足はないが通れば道ができるのである。
 岩や太い木があれば必ずそのへりや根元を通るが、
原っぱなどは隠れるところがない。しかたなく、くさ
はらを横切ることになる。日中は葉がみんな乾いて、
進むにつれてざわざわと揺れ動く。それを鳶が見てい
て、さっそく飛んでくるので危なくてかなわない。
 夕方ごろには道ができかかる。大きい蛇も小さい蛇
もやまががしも青大将もみんなそこを通る。蛇のから
だは見えるようで見えない。静かな水の流れに似てい
る。早朝などは露に葉が重たく、ちょっとしたトンネ
ルになって非常に快適である、という。その道は蛇し
か通らないのかときくと、ときどきねずみなどに出く
わすことがあるが、それは蛇にとっても好都合である
と答えた。


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