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蛇の道
注意深くかがんで斜めに原っぱを見渡すと、丈の低 い草がひとところだけ押し分けられ、向こうの薮まで 続いている。幅は狭いが少し曲がりながらとぎれがな いようだ。あれは何かと尋ねると、蛇の道だという。 蛇の通るところは決まっていて、どの蛇もそこを通る。 蛇には足はないが通れば道ができるのである。 岩や太い木があれば必ずそのへりや根元を通るが、 原っぱなどは隠れるところがない。しかたなく、くさ はらを横切ることになる。日中は葉がみんな乾いて、 進むにつれてざわざわと揺れ動く。それを鳶が見てい て、さっそく飛んでくるので危なくてかなわない。 夕方ごろには道ができかかる。大きい蛇も小さい蛇 もやまががしも青大将もみんなそこを通る。蛇のから だは見えるようで見えない。静かな水の流れに似てい る。早朝などは露に葉が重たく、ちょっとしたトンネ ルになって非常に快適である、という。その道は蛇し か通らないのかときくと、ときどきねずみなどに出く わすことがあるが、それは蛇にとっても好都合である と答えた。
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