天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第11話『主賓を届ける』

めっちゃ短い前回までの話。

「小うるさい上司と、能無しの同僚と、細かい小姑と、対人恐怖症の犯罪マニアと、頭の気の毒なバカ女と、いんちき占い師などに囲まれながら、今日も今日とて早坂由紀夫は届け屋稼業に精を出している。そんな由紀夫の明日はどっちだ(前回と一緒やー、ゆん)」

yukio

今日の由紀夫ちゃんのお仕事

その1.届け物「大手塾の試験問題」届け先「印刷所」

<招待状>
『拝啓 時下ますますご清栄の事とお慶び申し上げます。平素は、私ども兄弟に格別のご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、この度、兄早坂由紀夫が25歳の誕生日を迎える事となりました。今まで無事に生きてこられたもの、皆様のおかげだと、兄に成り代わり、深く感謝いたしております。つきましては、ご迷惑のおかけついでに、兄の誕生日パーティを開催いたしたいと思います。日頃お世話になっている皆様のご光来を賜れば恐悦に存じます。どうぞ、お体一つでおいで下さい 敬具 溝口正広
追伸 誠に勝手ながら、早坂由紀夫本人には内密に願います』

<腰越奈緒美>
「由紀夫の誕生日パーティー?あら、んーと…。あ、そっか。ホントは11月13日か。あらぁー?グッチのコートって、出来上がりいつだっけぇ」

<千明>
「やだぁ、やだぁー、どぉーしよぉー、えっとぉ、えっとぉ、プレゼントはぁ、あたしぃーっ!?やだぁ、由紀夫、エッチぃー!!」

<野長瀬>
「由紀夫ちゃんの誕生日かぁ。由紀夫ちゃん、もう、25歳なんだなぁー…。25歳といえば、僕は…。(何やら回想しているらしい)そうそう、あの時、彼女とね、いや?彼女とは…。え?あ、そう25歳の誕生日って言えば、もう、大変で…。その子と由香里が鉢合わせしてね。いやー、修羅場ったよなぁ。…って、そんな訳ないっつの…。バカだな、泣くなんて…(何があったんだ野長瀬)」

<典子>
「ふーん。ひろちゃん、何見てこれ書いたんだろ。意味解ってのかな」

<ジュリエット星川>
「1972年11月13日生のさそり座…。って事は、今年の運勢は…。うわ!金運最悪っ!いやぁー、もー、疫病神ってやつぅー!?でも、あたしとの相性は悪くはないわねぇ…」

<菊江>
「…(来ていく洋服を考えてるらしい)」

<田村>
「…(断る口実を考えてるらしい)」

<役割担当>
由紀夫スケジュール調整:正広
ベンツ運転:野長瀬
料理:正広、奈緒美
音響・照明:田村
田村捕獲:星川・菊江
当日買い物:野長瀬・千明
飾り付け:典子・菊江
総合プロデューサー:奈緒美

<由紀夫スケジュール調整>

11月13日。午後4時半。
「兄ちゃん」
「ん?」
「ごめん、急な仕事なんだけど…」
『早坂由紀夫担当課長』と言う役職付きになった弟にそう言われて、由紀夫は対して抵抗もなくうなずいた。
「何?いつ、どこ?」
「今日」
「今日?これから?」
「うん」
申し訳なさそうに正広が荷物と地図を差し出す。
「…遠くねぇ?」
「…遠い、んだよ、ねぇ…」
困ったような上目遣いでじーっと見上げられると、「小猫の様に」可愛かったりするので(笑)ま、別にいっかと由紀夫は仕事に出かける事になった。
「兄ちゃんいってらっしゃーい!」
「いってらっしゃぁーい」
腰越人材派遣センター一同のお見送りを背に、颯爽と由紀夫は自転車で仕事に向かった。

「…」
その後ろ姿を、2階の窓から、じっと正広は見ていた。
「ひろちゃん…、行った…っ?」
「いきまし…、たっ!」
「OKっ!典子!」
「はぁーい、事務所締めまぁーす!」
「野長瀬はただちに田村捕まえて!」
「ラジャ!」
「ひろちゃん、行くわよ!」
「はいっ!」
腰越人材派遣センターの面々は、日頃それくらいの勢いで仕事しろよって言うテキパキさで動き、2分半で事務所を閉める。
野長瀬はペンツで田村のプレハブへ向かい、他の3人は、由紀夫たちの部屋に向かった。

<田村捕獲>

「いやぁ、だからぁ」
「いいの、あんたはここにいてくれれば」
その田村のアパートの玄関には、星川と菊江が陣取り、二人ババ抜きという空しいゲームを繰り返している。
二人に与えられた任務は、田村の捕獲である。
「あがりです」
「あんたなんでババひかないのよっ!」
「だって」
すぐ顔色が変わるから解ります、とは口にしない菊江だった。

「星川さーん、お迎えに来ましたー!」
「はいはーい。菊江、田村が妙な事しないように見てて」
「はぁい」
田村はこの居心地のいい部屋にいるのが好きだった。由紀夫や正広の事は気に入っているが、外でまで会おうという気はあまりない。なのに、引きずり出されていく自分…。
「あ、なんか、すごく不満そう」
「そうですね」
星川と菊江の視線が野長瀬に向く。
「ちょっと、田村。あいつ好きにしていいから、機嫌直してよ。色々できるわよー?個人情報盗むのなんて簡単でしょー?」
「よっ!余計な事言わないで下さいっ!!」
ニー、っと田村は嬉しそうに笑った。

<エステ担当…?>

「はぁー…、気ぃ持ちよかったぁー…」
某大手エステの無料体験で、フェイシャル・ボディーと磨き上げた千明は満足そうに店を出た。
「あ、と、は。えっと、あ、ネイルアートもぉー」
せっかくのプレゼントなんだから、ピッカピカにしなくっちゃ、と千明は思っている。強く強く思っている…。

<由紀夫スケジュール調整について>

「溝口課長?」
部屋に帰って、キッチンで並んで料理の準備をしている時、正広は奈緒美に尋ねられた。
「由紀夫の仕事って、どうしたの?」
「あれね、超ラッキーだったんです!本当の仕事なんですよ、あれ!」
「あら、よかったじゃない」
「はぁ。なんか、でっち上げなきゃいけないのかと…」
「どんな仕事?」
「えっと、試験問題」
「…試験問題?」
「はい。大手の塾で、試験の前日にテスト印刷するんですって。兄ちゃん、その試験問題を印刷会社に届けに行ってんです」
「へぇー」
「社長、野長瀬さんたち帰って来ました!」
「はぁーい。あらぁ?千明はっ?」
全員揃った、はずなのに、千明の姿だけがない。
「野長瀬、あんた買い物行って来て」
「えっ、一人でですかぁ?星川さん、ヒマでしょー?」
「バカ言うんじゃないわよ。あたしは、あんたみたいに肉体労働向きじゃないの。脳みそまで筋肉なんだから、使っときなさいよぉ」
こっちに来てからの役割がないのをいいことに、ソファにふんぞりかえっている星川の顔めがけて、奈緒美が雑巾を投げつける。
「ちょっ…!あんた、何すんのよっ!」
「その辺拭いときなさいっ」
「何でっ!」

<エステ担当…?>

そんな二人が言い争いをしている頃、千明はネイルサロンから美容院に移動していた。

<正広のプレゼント>

正広は腰越人材派遣センターで仕事をし始めて、しかも役つきにまでしてもらって、お給料も上がった。上がったんだが。正広が狙ってるプレゼントには足りそうもなく、前々からの計画通り、そっちはクリスマスに回すことにした。
てな訳で、今日の正広からのプレゼントは、『手作りバースディケーキ』これで決まりである。
ひっそりとスポンジを焼き続け(in腰越人材派遣センター)、ひっそりとデコレートし続け(in腰越人材派遣センター)、失敗したものはすべて野長瀬に食べさせ続けて来た正広は、今日こそはうまく行くような気がしていた。

<音響・照明>

「田村ぁ、どういう仕掛けにするのぉ?」
「ドアを開けたら、まずはガスを吹きかけて、それがヘリウムガスなんで変な声になる」
「…却下」
「ドアを開けたら、頭の上から照明が落っこちて来て、それが割れて、キラキラで綺麗」
「…死んでしまえ」
「じゃ、じゃあ、よ、呼ぶなよ、なぁー!?」

<当日買い物>

「あ!千明ちゃんっ!」
「あー、野長瀬さぁーん」
「野長瀬さんじゃないでしょ!千明ちゃん、君、今日買い物の担当で…」
「でもぉ、あたし、これからメイクしにいかなきゃいけないからぁ」
「いけないからぁ、じゃないでしょーが!ほら、行くよ!」
「いやぁー!助けて、さらわれるぅーっ!」
「なっ!何を人聞きの悪いっ!!」
しかし折悪しく、そこは交番の前。野長瀬は泣く泣く千明を手放し、ペットボトルが都合10数本などという恐ろしい買い物を一人でこなす事になった。

<飾り付け>

「やっぱり、ティッシュの花って、必要、ですよね…」
「え?じゃあ、色紙もいる?あのー、輪っかのやつ」
「要ります」
…菊江ちゃんってセンスいいんだか悪いんだか、解らない。丁寧に色紙を切っている菊江を見ながら、典子は心でため息をついた。

<料理>

今日のメニュー
1.シーザーサラダ(正広)
2.チーズフォンデュ(正広)
3.パスタ(ボロネーズ、バジリコ)(奈緒美)
4.ピザ(マルゲリータ)(奈緒美)
5.シャーベット(レモン)奈緒美
6.バースディケーキ(正広)

<エステ担当…?登場>

「おっまたせぇー!」
「帰って」
「いやぁーん、奈緒美さぁーん!!」
「帰れっての!」
「やだぁ!由紀夫に、この、ピッカピカのあたしを上げるまで、帰らなぁぁーい!」
じゃあ永遠に帰れないじゃんと、その場にいた全員が思った。

<準備完了>

最後の一人(結局正広のバースディケーキだった)から、できたぁ!の声が上がったのは、11時30分。後は主賓を待つのみである。

<主賓の影が>

明かりを消し、息を潜める。暗視スコープを何人かがしていて(田村、どこから手に入れてきた)、暗闇の中も自由に動けた。
「そろそろ、かしら…」
「はい。そうだと…」
「来た…!」
田村の声に、全員がひそかに光を放つ、小さな液晶モニターに群がった。
「あの角にビデオ仕掛けて、見えるようにしてある」
自転車に乗ってスピーディーに去っていく後ろ姿が映っている。
「13日まで後何分!?」
「5分です!」
12時に間に合うのか、間に合わないのか…!
一同に緊張に走る!

<主賓登場>

もう12時を回りそうになっていた由紀夫は、帰りついた部屋の2階に明かりがついてないのを見て、珍しく正広が早寝したのかと思いながらドアを開けた。

クラッカーの音に、ギョっと立ち止まった由紀夫の耳に、『誕生日おめでとう!』の大合唱が聞こえて来る。
「兄ちゃん、おかえりー!お誕生日おめでとー!」
「正広!?」
明かりがつき、部屋の様子がすっかり違っているのに気付いた。
「な、に、これ…」
「誕生日パーティしようと思ってさ!兄ちゃん、おなかすいたでしょ?」
テーブルの上に、溢れんばかりの料理があって、真ん中にちょっといびつだけど、力一杯可愛く飾られてるバースディケーキが。

「遅くまでお疲れ様ですー、おなかすいたでしょ?」
じっとそのケーキを見つめ、ニコニコ笑顔で近寄って来た正広に、由紀夫は答えた。
「いや、別に」
「え?」
「帰ってくる途中で食っちゃったんだよな」

ガーン!!

書き文字が目に見えるようなショックが正広と奈緒美の頭上に浮かんだ。

蒼白になっている二人を見て、無表情だった由紀夫がプっと吹き出す。
「ウッソだよ」
「えっ?」
「なぁーんかさぁ、見え見えの事してっから…」
「見え見え、だった…?」
「わぁかりますぅー。おまえら全員挙動不審なんだもん」
そこに、結構なボリュームで、「ハッピーバースディ」のイントロが流れ出す。
正広の頭にポンと手を置いた由紀夫は、サンキュ、と笑った。
パーティは始まった。

<つづく>

どんなパーティなんですかねぇ(笑)参加してみたいっすわ!予告通り我が家には黒ラブ様が来ておられるじょ!赤い怪獣も、いわしくんも、よしばっちも来るんだ!

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

What's newへ

Gift番外編1話前編に

Gift番外編1話後編に

Gift番外編2話に

Gift番外編3話前編に

Gift番外編3話後編に

Gift番外編4話前編に

Gift番外編4話後編に

Gift番外編5話に

Gift番外編6話に

Gift番外編・番外編前編に

Gift番外編・番外編後編に

Gift番外編7話に

Gift番外編8話に

Gift番外編9話に

Giftスペシャル番外未来編に

Gift番外編もしかしたら前編に

Gift番外編もしかしたら後編に

Gift番外編10話に

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ