天からの贈り物じゃないけど、黙って受け取って?

Gift番外編』

yukio

このページの画像は、すべてyen様の作品です♪

第12話プロローグ編『小さなプレゼントを届ける』

めっちゃ短い前回までの話。

「11月13日は由紀夫の25歳の誕生日で、正広が発起人となって楽しいパーティが企画されていた。少々、由紀夫本人に漏れてはいたものの、楽しいパーティは夜通し続いた、その翌朝」

yukio

今日の由紀夫ちゃんのお仕事

その1.届け物「小さなプレゼント」届け先「???」

腰越人材派遣センターの面々は、一度遊ぶとなると際限がない。よって、パーティなどしようものなら、酔いつぶれるまで騒ぎ、屍累々な状態で朝を迎える事など、日常茶飯事である。由紀夫の誕生日パーティももちろんそうで、由紀夫のベッドに、由紀夫、正広、千明、典子。ソファに、奈緒美、菊江、ジュリエット星川、床に田村、野長瀬、窓辺にしーちゃん、と言う割り振りで寝ていたが、由紀夫は下半身を落としかけだし、野長瀬と田村は十字に重なり合っているし、ソファは定位置よりかなりずれているし、そこら中に食べ物、飲みものは散乱してるし、とにかくもう。
これを片付けるのは誰なんだ!?と言いたくなるような惨状なのだった。

最初に目を覚ましたのは、白文鳥のしーちゃんで、いつもは静かな早坂家の惨状に、驚いたように首を傾げる。大好きなひろちゃんはどこ?と首を巡らし、どうやらベッドの真ん中に三人ならんでまっすぐになってる、その一番左端がそうらしいと当りをつけて、近くに飛んで行く。うん、いつもと変わらない綺麗なひろちゃんの寝顔だ、って事を確認して、周囲の惨状に目を向ける。小鳥のしーちゃんでさえめまいを覚える状態が、後10分ほど続いた。

「あったま、いって…」
最初に目を覚ましたのは由紀夫で、うつ伏せになっていた由紀夫は、シーツに顔を押し付ける。そのうち、光の方向が違う事に気付き、うっすらと目を開けると、ベッドには、3人並んで、綺麗に川の字になっている正広と千明と典子がいた。
「なんだぁ…?」
由紀夫はその川の字の左っかわに横棒がある状態で寝ていたため、ベッドから下半身落ちかけになっている由紀夫は、よっこらせと、おっさんくさい掛け声を心の中でかけながらベッドに座り直した由紀夫は、大きくため息をついた。
「これ…、片付けんのかよ…」
由紀夫たちの部屋は大して広い訳ではないのだが、それでも、ここまで万遍なく散らかされると…。
そんな事を考えていても、寝起きの由紀夫はかなりしーちゃんのお気に入り。お兄ちゃんったら、綺麗―、と由紀夫の膝に、ちょんと乗ってみる。
「おはよー…」
指の先で頭を撫で、そろそろ起こすか、と心を決めた。時間は8時半。腰越人材派遣センターの業務開始時刻は、9時だった。

まずは正広の肩に手をかけて軽く揺すぶる。その手の動きのままに簡単に揺らされた。
「正広…?ひろ…」
「ん…」
しーちゃんに行け!と指示を出せば、しーちゃんはうつ伏せになっている正広の首筋にひょいと止まる。そのくすぐったさにギュっと首をすくめて、正広はしーちゃんのいる辺りに手を伸ばした。
「な…に?」
「ひろ?起きろって」
あくまでも静かな声で由紀夫は言い続ける。
「兄ちゃん…?」
その声に反応して、ようやく正広が目を開けた。
「おはよ」
「おはよ…」
寝起きの悪い正広は、ちゃんと目が開けられないまま、どうにかベットに座りこむ。
「ちょっと耳塞いでな」
寝癖のついた頭をクシャクシャっと撫でて、由紀夫はベッドを下りた。
現在、頭の回転が非常にスローリーな正広ながら、直前に言われた事は解る。両手で耳を押さえて、ついでにギュっと目もつぶった正広は、遠くに大音量が響いているのを聞いた。

「なっ!何っ!?」
奈緒美が飛び起き、その勢いでようやくバランスを保っていたソファの上の3人が転がり落ちる。
「朝だぜー、起きろぉー」
田村が特設したスピーカーから破壊的な大音量で流れているのは、スティービー・ワンダーの「Happy Birthday」
「キャっ!」
千明に抱き着かれた典子が慌てて飛び起きる。我関せずなのは、床の上の男二人だけ。
「こいつら、神経ねぇんじゃねぇか?」
すぐ側に突っ立って床を見下ろしたが、野長瀬の下敷きになってる田村は、苦しそうに蠢いていた。
「ぐ・ぐるじぃー…」
「こいつ、ガタイだけはいいからな」
由紀夫は田村の腕をつかんで引っ張り出してやる。その反動で野長瀬はひっくり返って後頭部を強打してるにも関わらず、まだ寝てる。
「ちょっとこいつどーするよ」
「おもしろそー!!」
千明がピョン!とベッドを下り、野長瀬の顔の側にしゃがんだ。
「ね、なんか、食べさせてみる??」
野長瀬は大きく口を開いて、ガーガー寝ている。
「そーだなぁー、あ、これどうだ?」
昨晩、「どっちがうまいかコンテスト、リンゴの皮むき部門」でむかれたリンゴの皮を取り上げる。
「あー、あたしのヤツー」
「バーカ、おまえ、ぜんっぜん、できなかったじゃねーか。これは、正広がむいたヤツ」
多少厚みはあるものの、見事に一つ丸まるむかれたリンゴの皮。
由紀夫はそう言いながら、まっすぐに野長瀬の口の中にリンゴの皮を下ろしていく。正広もすっかり目を覚まして、わくわくしながら側に座り込んでいた。
「…どこまで入るのよ、こいつ…」
呆れた声で奈緒美が言った通り、リンゴ半分の皮が口に入って言っても野長瀬は意に介す様子がない。
「万国びっくりショーみたぁい…」
おまえいくつやねん!というセリフを菊江が呟き、ようやく野長瀬が目を開けた。
「…白雪姫の夢を見ていました…!」
そのセリフに、ほぼ全員からの蹴りが入った事は言うまでもない。

「ちょっと、もうこんな時間!?」
何だかんだで、8時50分が来ている。
「ちょっと、野長瀬!車、車っ!」
「え?あ?ああ??」
「会社、会社っ!」
「たって、社長がここにいるんだし、焦ることないんじゃねぇ?」
のほほーんと由紀夫はいい、奈緒美から睨まれる。
「あんたも準備してっ!典子もっ!」
「え?俺は?」
「ひろちゃんはいいわぁー」
手の平を返したように奈緒美は笑顔になった。
「昨日まで大変だったし、有給休暇あげる。ここの片付けはー…、千明、あんたやんなさい」
「えぇー?あたしぃー?」
「暇なのはあんただけでしょ」
ジュリエット星川はそう言いながら大きく伸びをして、ソファに寝そべろうとして奈緒美に首根っこをつかまれる。
「あんたも帰んのっ」
「あらっ、あたしはいいじゃなぁーい、あたしは、11時から仕事なんだからぁー」
「ひろちゃんの邪魔になんでしょー?なんもしないんだったら帰るのっ」

わたわたと準備をしてる中、正広は片付けは自分でできるから、と千明に断りを入れ、ぼんやりと周囲のすばやい動きを眺めている。
同じく朝になったら死体と化してしまう田村は野長瀬と由紀夫に足と頭をもたれて搬出されていく。
あっと言う間に早坂家から人の姿は消えて行った。
「はー…」
なんで、朝からあんなスピードで動けるんだろ…。感心したようにため息をつくと、兄由紀夫が戻って来た。
「あ」
「俺は自転車で行くから。片付けなんかどーでもいいから、もうちょっと寝たら?」
「ううん。もう大丈夫。ちゃんと起きまーす」
ほらほら、大丈夫、と言わんばかりに、家の外まで見送りに出た正広は、小さな箱がうちの前に置いてあるのを見つけた。

「兄ちゃん、これ」
正広の手の平にすっぽりと乗ってしまう、小さな箱には可愛らしいクマのラッピングペーパーと、綺麗なグリーンのリボンがかかっている。
「兄ちゃんにじゃない?誰か置いてったんじゃないかなぁ」
「へ?なんで」
「だって…。違うかなぁ…」
「プレゼントだったら、昨日渡すだろ。それに、千明以外からは貰ったぞ」
「じゃあ、千明ちゃんだ!」
「…いらねぇ」
「そぉーんな事言わないのぉー。とにかく!玄関の正面に置いてあるなんて、絶対うちにでしょ?そんで、俺じゃないんだから、兄ちゃんだよ」
「おまえかもしんねーじゃん」
二人して小さな箱をあっちこっちから眺める。
「…名前も、カードもなし、か」
「開けてみる?」
じっと顔を合わせた二人は、こくん、とうなずき合いリボンをほどいた。

「あー、可愛いー…」
入っていたのは、ピカチュウのマスコット。
「ピカチュー、ピカチュー」
「…何?」
「えっ?ピカチュウだよぉ。ポケモンの、しんない?」
「しんねー。…って事は、やっぱおまえじゃん?」
「えー…でもぉー…」
キーホルダーになっているピカチュウを持ち上げて、正広はあれ?と箱の底からカードを取り出した。
「ほら!カード入ってる!どぉっちかなぁー」
やっぱりピカチュウの小さなカードで、へへっと笑いながら開けた正広は、そのまま固まった。
「ん?やっぱ、おまえだろ」
「ううん…」
「えぇ?俺ぇー?」
「違う…」
「…違う?」

ほら、と渡されたカードには、由紀夫の名前も、正広の名前も、ましてや武弘の名前もなかった。
『まこちゃん げんきでね』
クレヨンのたどたどしい字で書いてあるのはそれだけ。
「まこちゃん…。正広っぽくね?」
「無理矢理っぽーい?」
「誰が置いてったのかな…」
「これって、お別れのプレゼントなのかな…」
「え?」
「引越しとかさ、そういうプレゼントなんじゃないの?それで、小さい子だから、家を間違えたとか」
「…やばいじゃん」
「やばいよ」

11月14日朝。
訳の解らないプレゼントを見つけてしまい、呆然とする早坂兄弟であった。

<つづく>

すごいやろ。なんちゃ考えてないん、丸解りやろ(笑)あ、まこちゃんと計算マコちゃんはなんの関係もない、はずです(笑)先を考えてないの、丸解りやろ(笑)

次回、来週の水曜日!の予定は未定にして決定にあらずっ!

What's newへ

Gift番外編1話前編に

Gift番外編1話後編に

Gift番外編2話に

Gift番外編3話前編に

Gift番外編3話後編に

Gift番外編4話前編に

Gift番外編4話後編に

Gift番外編5話に

Gift番外編6話に

Gift番外編・番外編前編に

Gift番外編・番外編後編に

Gift番外編7話に

Gift番外編8話に

Gift番外編9話に

Giftスペシャル番外未来編に

Gift番外編もしかしたら前編に

Gift番外編もしかしたら後編に

Gift番外編10話に

Gift番外編11話プロローグ編に

SMAPレポートへ

SMAPメニューへ

トップへ